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会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

石油メジャーに見る「天国と地獄」

2006-01-09 | 会計・株式・財務
いつもご覧下さり誠に有難うございます。

さて今回は、
総合月刊誌「選択」1月号の記事の要約とコメント。
この雑誌はアナリスト本職の方は必読でしょう。

「今は原油高で良いけど、この先不安が一杯。」
中長期で物事を見る私にとっては参考になる見方です。



<『「最高益」石油メジャーに落日の影』の要約>
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■石油メジャーとは?

・1911年、ロックフェラーの築いた独占企業、スタンダード石油が
 反カルテル法で分割、現在のメジャーの基本構図ができる。

・1960年代まで、原油市況の暴落を防ぐための生産調整、価格支配が
 本質的な存在意義
 (→しかし、その後原油市場に価格決定権が委ねられることになる)

・第一次石油危機により油田は産油国政府によって次々国有化。
 このため、その後は入札で開発の権益を取得、生産物分与(PS)契約等を
 結んで、自社の油田資産をコツコツ増やすことが
 石油業界のビジネスモデルとなる。
 但し、サウジ、イラクなど埋蔵量の大きな産油国は外資への開放が小さく、
 メジャーが油田資産を増やすことは至難。

・1990年代まではメジャーは7社あり、「セブンシスターズ」と呼ばれていたが、
 90年代後半に始まった巨大合併により統合進み、現在は4大メジャー
 (エクソンモービル、シェブロンテキサコ、BP,シェル)に集約。
 [この他、仏トータルフィナエルフもメジャー級]


■天国

・最近2年間の原油価格の高騰で、利益は異常な増加。
(05年上期の純利益は概ね前期比3割増益)



■地獄

①メジャー保有油田の埋蔵量※は平均12年程度しかない。
エクソン14年、シェルは10年未満!
   ※RPレシオ(油田埋蔵量÷現在の生産量)
    年産以上の埋蔵量を獲得するか、発見しないとRPレシオは低下する。

②今後有望な油田地帯(ロシア、中央アジア、西アフリカ)での権益獲得が
ままならない。
 油田開発・油田資産の取得が活性化しない背景に原油市場と株式市場の存在アリ

 ・原油市場→石油のプロであればあるほど
  「価格高騰のしっぺ返しは必ず来る」と判断。
  油田開発コストも鋼材価格高もあって急騰。
  高値で油田資産を掴みたくないという思い。       
 
  cf.エクソンのレイモンド会長
   「原油価格が60ドルとしたら20ドルは投機資金の影響だ」
 
 
 ・株式市場→油田開発は成否が不透明なうえ長期に資金が固定化する。
       むしろ余剰資金は自社株買いやM&Aに使うほうが投資家ウケが
       よく、株価が上がりやすい。

③強力なコンペティター、中国・インド国営企業などの台頭
 
・油田開発の主役は今や、油田開発コストが高騰してもコストを国民に付け回す
 ことのできる中国やインドの国営石油会社へと移りつつある。
      -中国石油天然ガス集団(CNPC)
-中国石油化工集団(Sinopec)
-インド石油ガス公社(ONGC)
・さらに産油国の国営石油会社も、原油高騰で得た資金で世界の石油産業を
  買収する動き
   例:サウジアラムコ→フィリピン、韓国の石油会社買収。
             日本の昭和シェル株式の15%を取得

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(コメント)
・市場原理に振り回されている石油メジャーと、採算度外視の国営石油会社との
つばぜり合いの構図が読み取れて面白い。
個人的には、メジャーの姿勢は理解できる。
でも投資家が本当に近視眼的な株主還元を選好するとしたら、不幸ですよね。
RPレシオ平均12年って事実、理解できているのでしょうか。

・1985年以降の原油価格動向(上昇→暴落の繰り返し)から常識的に考えれば、
相場暴落を知らない中国・インドの国営会社が一度大ヤケドをする
可能性が高いような気がします。

・こういう産業展望ネタで油を売ってすいません。
 そのうち会計ネタ、いきたいと思います。

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