Uさん、こんにちは。
今日は、休務日ですので、午前中から投稿致します。
またもや、自動車の意匠・造形に関する内容です。
先日、日産のフェアレディZの新型が発表になりました。
正確には、日本仕様となるものでして、北米仕様は昨年の8月には公開になっています。
日本仕様にするにあたって、パワーユニットや足回り・装備の見直し・調整を図っていたのでしょう。
元々Zは、北米が主戦場ですから、この段取りは正しいものです。
日本における発売は6月で、特別仕様車のみの限定(240台)になるそうです。
さて、そのデザインです。
相変わらず、四角く口を開けています。
2002年型の意匠から抜け出していません。
これがつらいところです。
2002年型ですが、初めてその形を見た時、かなり違和感を持ちました。
フロントのオーバハングを短くするためか、前頂部をスパッと垂直に切り落とした後、壁になったようなフロントパネルをどう処理したら良いか分からないから、開口部を広く取って誤魔化したみたいな印象を受けたのです。
開口部の両サイドにある、縦の細いスリットがとって付けたような感じで、猶更手詰まりのデザインに感じさせました。
そして異形のヘッドライト。
グリル開口部の周囲の残余(特に上部)が多く、これによりフロントがボテッとしてしまい、シャープなZのイメージが完全に壊されてしまいました。
対人衝突事故に備えて、ボンネットのクラッシャブルマージンを取ったと良く解釈しても、もっと良い在りようはあったはずです。
2002年型は、あの中村史郎氏が監修しているそうです。
彼が日産に移籍したとき、奇怪なデザインで目立ったいすゞビークロスのことがありましたら、心配はしておりました。
案の定、2002年型はビークロスを同じように、フロントに厚みあり、口を開けていました。
2008年型で、フロントを絞り、お口も少しつぼめたようですけれど、基本的方向は同じです。
ただ、口を開けるなら、
美しさ云々という前に、デザイン手法として行き詰まっているような、デザイン能力の低さを感じてしまいます。
これを反省したのか、心残りとなっているのか、カスタマイズモデルも併せて発表されていますが、こちらは、初代のZのイメージに近いフロントの造形をしており、まだ落ち着きがあります。
標準車は、ただポカーンと口を開けている。
それも開口部の垂直ラインが真っすぐ下に伸びているから、間が抜けた印象を強くします。
更に問題は、前照灯の造形で、所謂異形ヘッドライトは、アーモンド形をしています。
このアーモンド形は前尖頭部から上下に緩くカーブを描いて、後尖頭部で結ばれます。
ここで下に緩く膨らむラインが丸すぎるのと、上部のカーブを抑え気味にしていることが問題です。
この形では、サイド、フロントから見た場合、この前照灯がどうしても垂れ目風に見えてしまいます。
これに、ポカーン口が組み合わされますと…。
ギザギザ歯の無い”どーもくん”(NHKのキャラクター)になってしまいます。
可愛い過ぎるのです。
スポーティーカーであるZが、ゆるキャラみたいなどーもくんに変じてしまったことに悲しさを覚えます。
折角、このエコ時代に新たなスポーティーカーを開発したというのに。
渾身の力を込めて開発したというのに。
歴代のZに似せて作るなら、もっと過去に遡っても良かった思います。
リアはZ32の流用とのこと。
良いではないですか。
Z32、素晴らしいデザインだと思います。
過去発売された全ての国産車の中でも、デザイン(造形だけでなく、ディメンションも極めて整合的)、パフォーマンスが最も優れている車の一つなのではないかと考えています。
ローアンドワイド。ロングノーズアンドショートデッキ。
スポーツカーのデザイン文法を忠実に守っています。
それでいて、全体の造形はその時代にあったテイストにアレンジされています。
強力なパワーユニットを積んでいる、つまり高パフォーマンスカーであることは、エクステリアインテリア双方の細部のディティールの力強さに反映されています。
ディメンションは完璧で、全体に凝縮感・塊感があり、それが力強さと速さを感じさせます。
実際、速い車だそうです。
本当に素晴らしい車です。
あっ、Z32の良さに触れるところではありませんでした。
2022年モデルに戻ります。
車体のシルエットに関しては、初代のフェアレディ(貴婦人)をイメージしているそうです。
全体の造形に関しては余り言及しないことにします。
今風に、上屋(ウィンドウ部)が小さく(狭く薄く)、ボディパネルの厚みがあり過ぎるのが気になりますけれど。
実物を見るまでは、本当の判断は出来ないのですけれど、生産台数や、潜在的な需要数から想像して、それは当分先のことになりそうです。
立て続けに、国産車の意匠に関して減らず口をたたきましたが、その他の車に関してはそれほどの意見も主張もありません。
大多数の車は、無難な、或いは良いデザイン・ディメンションで出てきているので、妖怪アンテナに引っかからないだけです。
特にZに対しては、今回の開発がデザイン面でルネサンスする機会でもあったので、その結果を残念に思った次第です。
ではこれで失礼します。