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ネオナチ:エマニュエル・トッド『第三次世界大戦はもう始まっている』より

2024-06-11 07:12:19 | 歴史
  05/14の記事でまとめたように、エマニュエル・トッドは、マイダン革命はネオナチによるクーデターであり、EUはネオナチと手を結んだのだと主張しています。

 ネオナッチーて何者? ネオ・ジオンみたいなの?
 これこれ、妙な促音を入れるんじゃないっ。いやまあ、ネオ・ジオンの方がネオナチを意識した造語だろうけど。

 思うにヒトラーの提唱したナチズムの後継者だと自称している者と、自称はしてないが思想や行動がナチズムとほぼ同じだと他者から判定された者との2種類あることは想像できます。ということでwikipediaの記事を見ると、やはり2種類います。ただ境界は灰色ゾーンでもありますね。言葉では明確に自称しなくても、ナチス関連の意匠をトレードマークにしている団体もあります。で、アメリカ合衆国国務省連邦捜査局(FBI)国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)公安調査庁等が判定を下しているようです。

 定義としては「ネオナチは、極右政治と右翼過激主義の特定の形態」とありますが、ネオナチではない極右政治や右翼過激主義と比較してもらわないとはっきりしませんね。「外国人排斥、民族的純血主義」というのは一つの特徴になりますが、極右(=極端な右翼=過激な右翼)というのは大抵はこういう行き過ぎた民族主義を唱えるのではないかと思います。そもそも左翼・右翼というのが概ねは、右翼は保守的、民族の伝統的価値を重んじる、という方向になるので、国により右翼の方向性(そして左翼の方向性)は異なってきます。ソ連・ロシアだと共産主義とかスターリン時代復興とかなどが右翼になって、大統領権限を弱めてアメリカ並みの三権分立に近づけろ、なんてのは左翼になったりするでしょうね。いやもしかすると、もひとつ昔でツァーリの栄光を取り戻せとか、ロシア正教原理主義みたいな極右もあり得ます。
 イスラエルにさえイスラエル我が家というファシズム政党とみなされている団体があるのです。さすがに自称もしてないでしょうし、ナチズムを連想させる意匠も使ってはいないと思いますが、自民族優先と他民族排斥という思想行動がネオナチ的だということでしょう。でもこの2つの特徴だけだと、どの国であれほとんどの極右と呼ばれる団体はネオナチの範疇に入ってしまいそうな気もします。

 例えば移民排斥を唱えるドナルド君はどうなのよ?

 そしてウクライナのネオナチというのは結構過激である模様です。かの悲劇のヒーローとなったアゾフ大隊は各機関もネオナチ認定していたのに、今では情報隠蔽されてるようで、これはいけませんねえ。いくら侵略軍に対する盾として戦ったとはいえ過去の罪は罪、なかったことにしてヒーローに仕立てるなんてもってのほかですよねえ、トッドさん。だって・・ネオナチだよ。極悪非道のナチズムの後継者だよ・・。人類の歴史に対する害悪が、ちょっと国のために勇敢に戦ったからって許せるはずありませんよねえ・・。

 そうはいっても右翼というのは民族主義で保守的で、つまりは行き過ぎることもある愛国者でもあるわけで、戦争となれば真っ先に戦うよね。例えば日本が他国から侵略を受けたという想定をしてみると、自衛隊が撤退してしまった地域で、なぜか武器を隠し持っていた組織暴力団が頑張って敵を食い止めた、みたいな状況でしょうか。日本の法律下では完全に銃刀法違反です。そんな犯罪者集団の命のために国が頑張って敵との困難な交渉をしたり、国際世論に訴える努力をしたりすることは倫理的に良いのか悪いのか?

 日本の法律的に言えば、犯罪者にも人権はあり国家の保護を受ける権利はありますし、「あいつらネオナチだから助けなくていい」なんて政府が公言したら国際的イメージも落ちるでしょうね。銃刀法違反の方は後できっちり説教しとかないと示しが付きませんが。

 まあ、トッドが非難しているのは、そのネオナチが堂々と武装できていたという状況なんでしょうけど。そしてそういう行き過ぎた民族主義のために東部のロシア系の人達が差別され苦しんでいたから助けたかったんだ、というのもロシア側の言い分のひとつらしい。

 まあねえ、モンゴル自治区の同胞が苦しんでいるから助けたいと言ってモンゴル共和国が中国に侵攻したら・・・、世界はどう対処するのが正解なのでしょうか? 3分の理くらいはありそうに思えてきました。

 まあそこは遠く離れた我々には、東部のロシア系の人達の思いがどんなものかというのは真相がなかなかわかりくいという問題があります。にしても、やはりロシア側の免罪符にはならないでしょうね。仮に東部のロシア系の人達が何らかの不利益を被っていたとしても、ロシア軍の侵攻(クリミア紛争なども含む)は遥かにそれ以上の被害をもたらしたことは確実でしょうから。

 さてネオナチという言葉は隠したくなるくらいにはヨーロッパでのイメージは悪すぎるくらいに悪いのでしょう。なにせ言論の自由を原則とするはずの国でナチズム関連の言論に限っては例外的に罰則付きで規制している国があるくらいです。それにしては最近はいわゆる極右政党が票を伸ばしてますし、逆に隠れた人気があるからこそ、恐れられて言論弾圧までされてるのでしょうか?

 ネオナチや極右が国を牛耳った場合の危険性は主に2つでしょう。
   1)対外侵略
   2)国内のマイノリティへの極端な迫害

 諸外国にとっては1は深刻な問題ですが、2は内政問題に過ぎないとも言えます。しかし、「他国の内政問題だからと言って少数者の人権が侵害されていることを見過ごすのは正義に反する」というのが国連の人権宣言などでも主張されている現在の国際社会の正義ではあります。そしてこれは一方では、「欧米流の人権や自由の押し付けだ」と非難されているものでもあります。
 ここでもし権威主義的国家の「欧米流の人権や自由の押し付けだ」との非難を認めるならば、ネオナチ国家のマイノリティ迫害も認めざるを得ないでしょう。つまり他国がその国民の選択によりネオナチ化するのならば、その結果に内政干渉する理由はなくなります。

 対外侵略を始めるならもちろん自衛しないといけませんが、現在のネオナチが対外侵略指向かと言えば、どうもそうは思えません。むしろ自民族ファーストで国内に閉じこもるという指向性のように思えます。例えば現時点でヨーロッパ諸国がみなネオナチ化したとして、逆に戦争は起きない可能性が強いような?? なまじ民主政権が残ったら戦争が勃発とか、ロシアはネオナチ恐怖症があるから対立して戦争勃発とか。アメリカも対ネオナチ聖戦を始めそうで心配ですが、ドナルド君なら「もはや価値観も違う国の面倒などみなくてもいい」とか言って閉じこもりそうだからきっと大丈夫です。

 冷静に考えると?? ネオナチも案外危険なものではないのでは?・・なんて(^_^)

 トッド理論によれば、国民がネオナチ化を選択するような国というのは権威主義に親しんでいる家父長制家族システムの国家だと考えられます。だとすれば、現在の中ロ同様に国民は案外不幸でもないのでは?・・なんて(^_^)

 あー、でも、温暖化対策が遅れたり、下手すると停止したりする危険性がありそうですねえ。うーむ、それはちょっとアジアにも影響が大きそうな。

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