きみの靴の中の砂

アドーニスになった夏

 

 

 グラナダ製とかいうビタミンカラーの陶製の小鉢に手を伸ばして、ひとつかみしたジャイアントコーン —— 馬の歯のようだと言ってイチ子さんと笑ったのは、あの年、あの十六歳の夏休み(ぼくは八月下旬生まれだから、実際はまだ十五だったかも知れない) —— ぼく達がポケットの中に隠し持った未来の夢の種子が発芽しかけていた八月...。

 夏休みに入って直ぐに買ったディランの2枚組LPの中の一曲 "Sooner or Later" を『遅かれ早かれ』と訳して、ひとり悦に入り、上手く訳せたのに何で知恵熱が出ないのかと不思議に思った夏でもあった。

 

 

【Bob Dylan - Sooner or Later】
 
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