とりわけポール・ヴァレリーが言うまでもなく、『文学上の手段として死を用いるのは、作者の無能を示す』——— という命題は、作家は勿論のことながら、読書人の基本的な教養としても心に明記しておきたい。例外的な免罪符は、堀辰雄と矢野綾子のように実態のあった場合のみで、フィクションで死を扱うのは、作家の、言わば禁じ手と言っていい。
万が一、創作に詰まり、『不治の病』を主題にしたくなったら、まず、それは横に置いておいて、『操縦装置の壊れた宇宙船で宇宙の彼方を彷徨う』とか『計り知れない地底深くの町まで不老不死のキノコの缶詰を求めて一万里』などの設定の方がフェアだ。
しかし、作家は『今度は、いつ自分がその禁じ手を使うかもわからない』ので、他の作家をあからさまに糾弾することはしない。しかし、その作品がいかにベストセラーになっても、内心、良い感想などは持とうはずもない。
もし、悪い編集者に当たり、編集者がそれをどうしても書かせようとするなら、また、どうしてもお金が欲しいのなら、あっさりと文学者への道は諦め、看板を売文家に掛け直し、世界の中心で、カネが欲しいとさけぶのがいい。
【The Biscats - Sweet Jukebox】
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