大王椰子の並木が巨大な陰を舗道に延ばし、 カリフォルニアの陽が西に傾き始める頃のことだ。 ぼく達が座っていたのは、ロングビーチの、安いだけが取り柄のようなメキシコ料理の店の奥。 タコスと、上品さに欠ける香辛料の匂いの豆料理を前に、 この秋、きみが日本に帰るのをシブっていたわけを ------ いつになく悠長な語り口で ------ ぼくに長々と語って聞かせようとしていた。 【We Five - You Were On My Mind】