馴染みの居酒屋の大将から連絡があって、イチ子さんが『関さば』を一本もらってきた。
『関さば』の価値は入荷したその日いち日だけで、二日目からは『関さば』を名乗れない決まりになっているらしい。素人の口にも鮮度が落ちたのがわかるという —— どれほど食通の素人か!。
そうして価値が下落したあとの『関さば』は、味噌煮か塩焼きにされるのが末路らしく、食堂のランチメニューか高価な賄い、もしくは、それを納得済みの常連客へのサービス・メニューとして供されるという。
居酒屋の大将が、宵越しのその『関さば』を前にして、
「さて、どうしたものか...」と考えていたところへ運良く、顔見知りのイチ子さんが店の前を通りがかったらしい。
【Martin Tallstrom - Freight Train】