きみの靴の中の砂

やる気を起こさせる一冊

 

 

 沖仲仕は戦後日本では、あるメジャーな暴力団の出自となったせいで、呼称に差別的要素はないにも関わらず禁句で、港湾労働者と言い替えないとならなくなった。当時は、沖仲仕とヤクザのイメージが連結し、差別視されたのだろう。健康で体力さえあれば誰にでもできる仕事ゆえ、巷では足を踏み外したような気性の荒い人達も多く集まり、社会的には不運な職業となった。その後、港は機械化され、当時の沖仲仕と同一内容の仕事は今は無い。しかし、この職業は高収入で、贅沢を望まなければ、芸術家など創作の時間を必要とする者には都合が良く、月の半分を働き、半分を創作に当てることが出来た。

                    

 ぼくの若い頃からの愛読書のひとつがこの一冊。アメリカでは『沖仲仕の哲学者』などと今も語られるエリック・ホッファーの日記だ。別に特別なことが書かれているわけではないが、重労働と執筆時間のバランスを伺い知ることができて心強い。やる気を起こさせる一冊と言っておこう。

 


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