珊瑚をあしらい、南海に見立てたウォーター・タンク(水槽)の中で、熱帯魚が昇降運動を繰り返すのをふたりで見詰めていた。 「きみたちは、なぜ水平に泳ぐのが嫌いなのかな?」とイチ子さんが硝子越しにクマノミに話しかける。 「大昔から珊瑚礁のイソギンチャクと仲がいいから、横方向に行動範囲を広げる必要がなかったからじゃないか!?」 ぼくのいい加減な答えに、きみが相づちを打つはずもなく…。