きみの靴の中の砂

ひいき目に見てなんかないよ

 

 

 休日の二度寝には気を付けないと思いのほか長い眠りに落ちる。

 生活音が聞こえて目覚めるとイチ子さんが戻ったところだった。
 ランニングして海を見に行ってきたと言う —— 片道たかだか五、六百メートルの距離とは言え、イチ子さんには『やる気』があってうらやましい(今は誰も使わなくなってしまったけれど、昔はガッツがあるなんて言ったな、なんて思い出したら可笑しくなった)。

「今日は、開高さんの記念館の方を回って帰ってきたから、2キロくらいは走ったかも」だって —— 言葉を失っちゃうよね。ぼくはもう、とっても走れない。

 同じ時間を生きているから普段は気にしたことはないけれど、もしかしたら、イチ子さんが若いのは体力ばかりじゃなくて、見た目もかもしれない —— なんでそんなふうに思ったのかというと —— 時々、高校生の頃のイチ子さんの横顔と今の横顔とが不思議と重なったりすることがあって...。
 
 

 

【Georgia Whiting - My Back Pages】
 
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