きみの靴の中の砂

夏に降る雪





 早朝の一番機を滑走路へと導く誘導路のランプが、朝靄に小さく乳白色のハレーションをつくる。

 果たして飛行可能か否か。

 いつもの事ながら、離陸時間までには晴れるはずとグランド・スタッフ。山と水辺が近い地形にある飛行場ではよくあることという。

                             

 昨日まで遊んでいたラグーンでは、今朝も変わらず、沖のリーフに小さく砕ける波の音が遠く近くに聞こえていることだろう。

                             

 十日ばかりの滞在で、すっかり日に焼け、一皮むけつつあるぼくの背中は、見ればどこか知らない世界地図のよう。

 ムズムズする肩先を軽く掻くと、薄皮が粉雪のように辺りに舞う。

 まるで夏に降る雪だと水口イチ子が笑う。




The Hollyridge Strings / Yesterday's Gone


 

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