きみの靴の中の砂

批評は『真っ当な批評家』の表芸である





 この間の木曜日(2009.02.12)の読売新聞朝刊文化面に、かねてより思潮社から刊行中だった『粟津則雄著作集(全7巻)』が完結したという記事があった。

 著者インタビューをかねたその記事で粟津は言う ----- 『専門化された分野で、批評の切り口の鮮やかさばかりを競うような現代批評には興味がない』と...。そういう彼の批評の方法は、特徴的である。出会いの感動を大切にするために、『出たとこ勝負で作品と向き合い、全身でのめり込み、それを言葉にする』と説明する。そして、
「『A』と思えるが『B』の可能性も捨てられない」という彼独特の論法を用いて、読者にも判断の一部を委ねる。

 彼はまた「批評は『文士の裏芸』ではない」とも言う。それを否定しているのかというと、そうとばかりも聞こえない。あたかも、あらゆる分野の批評家に対して、批評への姿勢とその方法の再点検を迫っているように聞こえる。
 批評は、『浅薄な印象批評や専門家はだしの研究論文ではいけない』と粟津は重ねて言う。そこには、「批評は『真っ当な批評家』の表芸である」という強いメッセージがある。


 

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