徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

結の月、湖城と天見の町にて 5

2020-04-14 20:05:09 | 小説





 本文詳細↓



 「これは、この島に生えてる木の樹液と花の蜜を混ぜて作った油だよ。臭いがキツいから室内では使えねえけど、これにつけた火はどんな風でも雨でも消えないから、特に漁に出る船で使われるんだ」
 「そうなんですね。じゃあ火の番っていうのは」
 「ああ。あの石柱の天辺は窪んでてな。毎朝そこにこの油を足してるんだよ。……で? お前らはなんでこんなとこに来て、あの火に何の用なんだよ?」
 僕は、ナイトウォーカーとの出会いからフィレモンの教えまで、全て話した。アスキリオさんは相づちを打って最後までしっかり聞いてくれた。
 「だからどうか、僕に天の火を下さい! お願いします!」
 金銭とか、何かの対価は求められるだろうと身構えていたけど、意外なことに何も言われなかった。むしろ逆に、頭を下げても何も反応がないから不安になった。
 おそるおそる顔を上げて彼の様子をうかがうと、口元を手でおおって何かを考え込んでいる様子だった。
 「これ、何か言ってはどうだ」
 アダムもそう言ってくれたけど、彼は無言のまま立ち上がり、暖炉の上に飾られていたシンプルな箱を持ってきた。
 「さて思うのだが、《世界》とは何だろう」
 その言葉に、どくんっと心臓が大きく震えた。だってそれは、僕もずっとずっと考えていたことだから。




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