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「そうさ。そいつのせいで何人も亡くなって、あの町は悪いほうへ寂びれっちまった。もったいないよな」
旧世と懐古の町に、もう五十年以上蔓延っているという死を招く呪い。いつ、どこで、誰に、どうやってかけられて、どうすれば解けるのか、何も分かっていないらしい。分かっていることは二つだけ。
ひとつは、女性だけがかかるということ。女性体であれば、種族・年齢は関係ない。
もうひとつは、全身に薔薇のような紋様が浮かぶということ。まるで養分を吸う植物のように、紋様が大きく鮮やかになるにつれて身体のほうは弱っていき、やがて死に至る。
ゆえにこの呪いは、「薔薇姫の呪い」と名付けられたそうだ。
ところどころ崩れた、形ばかりの街壁を過ぎたところで、音楽隊の人たちはあっという間に町の人たちに囲まれた。彼らの邪魔をしないように、僕たちは早々に馬車から降りた。
小さな川に架かる橋を渡り、石畳の道を歩いて町を散策した。あちこちからおいしそうな匂いが漂い、いくつもの白い筋が煙突から空へ向かって伸びていた。
「長命でウワサ好きの者をあたってはどうだ。それこそ妖精とかな。連中はとにかく、新しいものや珍しいものが好きだ」
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