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すると、フェネネットの一団がいっせいに動き出した。カウンターの上に硬貨を置き、あっという間にドアを開けて店から飛び出していった。ちなみに黒毛のフェネネットだけは、僕の肩に跳び乗ると、そのまま首を一周してから音もなく駆け下りていった。ほわほわとした手触りに悶えるかたわら、なんとなく僕にはあのフェネネットが外へと誘っているような気がした。何があるのかマスターに尋ねてみると、肩をすくめられた。
「んー、今から何かが始まると言うよりは、いよいよ宴の町の真骨頂ってとこか。盛り上がって参りましたー! ってやつだ」
「ほう! そうかそうか、それは行かねばならぬな! 宴とあらば踊るのが当たり前、むしろ踊り狂わぬは宴に申し訳ない!」
鼻息荒く胸を張ったアダムの首をひょいとつまみ上げて肩に乗せると、僕もお金を置いて立ち上がった。せっかく誘ってもらったわけだしね。
「俺ァこの町の雰囲気が気に入ってんだ。一人でも多く楽しんでくれれば嬉しい」
「はい、ありがとうございます。ごちそうさまでした」
「君たちに真なる天地の喜びが多からんことを」
「あなたとこのお店にも、真なる天地の喜びがあるように」
店の外は、ほどよく浮かれた陽気で満たされていた。広場の中心で奏でられる音楽にあわせて、色んな種族の人たちが思い思いに踊っている。
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