徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

彩の月、果樹と宴の町にて 2

2019-10-16 17:55:21 | 小説








 本文詳細↓



 「暖かくなったこれからの時期にこの町に来られる方の多くは、寝泊まりするために部屋を取られることってあまりないんです。だって、朝から晩までお酒を飲んでるんですから、そのまま道ばたでごろ寝でしょう?」
 彼女にはなるほどと言っておいたけど、絶対になるほどじゃない。そしてそんな事情があるからか、荷物を預ける貸し金庫はたくさん用意があるらしい。しかも、値段は宿泊する場合の三分の一だとか。値段には心惹かれるけど、そのために道ばたでごろ寝ができるかというと……僕らは柔らかいベットがあってお湯が使える宿のほうがよかった。
 女の子に言われた通り、中央広場近くの宿屋へ行けば、二階建ての部屋は半分も埋まっていなかった。どれだけ宿泊部屋の需要がないかがよく分かった。
 「ちなみに、今日は山桃の記念日ですので、お菓子や草木染めの屋台がありますよ。よければそちらにもお立ち寄りください。どうぞ楽しんでいってくださいね。真なる天地の喜びが多からんことを」
 女の子はそう言って僕らに手を振ってくれた。この町では毎日が何かの記念日になっていて、いつも祭や催しや大会が行われているらしい。〝宴〟の由来はここからきてるんだとか。
 さらに追記すると、宿屋のカレンダーによれば明日は歯の健康記念日で、明後日は雑巾がけの記念日であり髪結いの記念日らしい。色々謎だし、なんだったら清々しいほどの自由っぷりだ。



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