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「見取り図を見るかぎり、内部は天辺に小部屋とそこへ繋がる螺旋階段があるだけのようですね」
「でも建物が逆さになってるってことは、上へ上がるための階段を下へ下りていかなきゃならないってことですよね? 想像するだけでこんがらがるんですが」
「大丈夫ですよ。考えるから分からなくなるんです。一歩一歩足場を確かめて下りていけばいけます」
「おぬし、意外と脳筋というか、色々物理的よな」
「残念ながら、思考と行動を両立できるほど器用ではなくて」
おじさんが苦笑したとき、「うおぉ!?」という声とともに梯子の一番上で作業していた天狗が落ちてきた。
「大丈夫ですか!? 何がありました?」
幸い、空中でバランスを立て直してなんとか着陸できたので、その人に大きな怪我はなかった。
「すいやせん、ちょっと目が回っちまって……。あれはそう、異界、のような気持ち悪さを感じやした」
「異界……。では、気休めかもしれませんが命綱も結びましょう」
腰にしっかりと縄をくくり付けて、僕はおじさんのあとに続いて中を覗き込んだ。
そして絶句した。
部屋を形作るための、あるはずの壁がなかった。ただ虹よりも濃い極彩色の光が渦を巻いていた。その中を下へまっすぐに貫いている硬質な黒い螺旋階段の方が異様に見えるほどだった。
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