徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

至の月、階段と迷路の街にて 25

2019-12-04 18:18:25 | 小説








 本文詳細↓



 「当たり前だ。欲を言うなら、もう少しゆっくり引っ張ってもらいたいものだが。危うく吹き飛ばされるところであった」
 「本来は相手を逃がさず、捕まえるためのですから」
 そのとき、さらに闇が濃くなった。上から一軒の家ほどもある巨大な鳥がかぎ爪を伸ばしてきていた。神経を逆撫でする甲高い鳴き声が空を揺るがした。
 「黄色因子をターゲットに固定。攻撃術式『愛しみの風よ、今ここに』展開。世界に黄金の奇跡を見せつけよ!」
 再びエクレアさんの銃が火を噴き、放たれた雷撃を受けて鳥の悪魔が悶え苦しんでいる間に、次のブロックへ上がる階段に駆け寄った。

 それからひたすら逃げ回った。攻撃されても逃げ回って、飛び移ろうとしたブロックを動かされても逃げ回り、最後は火の波に襲われながらも救貧院に、ひいては祭壇へ転がり込んだ。
 バタンッと勢いよく閉めた石の蓋が壊されることもなく、院内はずっと静けさを保ったままで、僕らはようやく力を抜くことができた。
 「……なんとか、助かったようですね」
 「……ほんっとうにギリギリであったがな。我の尻にも火がつくかと思ったぞ」
 そりゃ剥き出しの皮膚にあの炎は痛かったことだろう。僕のコートもエクレアさんの修道服も、ところどころ焦げて穴が空いていて、血も滲んでいた。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 至の月、階段と迷路の街にて... | トップ | チケットホルダー »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事