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「当たり前だ。欲を言うなら、もう少しゆっくり引っ張ってもらいたいものだが。危うく吹き飛ばされるところであった」
「本来は相手を逃がさず、捕まえるためのですから」
そのとき、さらに闇が濃くなった。上から一軒の家ほどもある巨大な鳥がかぎ爪を伸ばしてきていた。神経を逆撫でする甲高い鳴き声が空を揺るがした。
「黄色因子をターゲットに固定。攻撃術式『愛しみの風よ、今ここに』展開。世界に黄金の奇跡を見せつけよ!」
再びエクレアさんの銃が火を噴き、放たれた雷撃を受けて鳥の悪魔が悶え苦しんでいる間に、次のブロックへ上がる階段に駆け寄った。
それからひたすら逃げ回った。攻撃されても逃げ回って、飛び移ろうとしたブロックを動かされても逃げ回り、最後は火の波に襲われながらも救貧院に、ひいては祭壇へ転がり込んだ。
バタンッと勢いよく閉めた石の蓋が壊されることもなく、院内はずっと静けさを保ったままで、僕らはようやく力を抜くことができた。
「……なんとか、助かったようですね」
「……ほんっとうにギリギリであったがな。我の尻にも火がつくかと思ったぞ」
そりゃ剥き出しの皮膚にあの炎は痛かったことだろう。僕のコートもエクレアさんの修道服も、ところどころ焦げて穴が空いていて、血も滲んでいた。
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