クローディーヌ…!
クローディーヌ・ド・モンテスは生来の性別は女性ではあったが、その女性の肉体に男性の心を宿して生を受けた不完全な男性だった。彼女の罪は相手の立場等を思い遣ろうとしない恋ゆえの身勝手さと、幼い頃から彼女の理解者であり男性として愛し続ける幼馴染の女性ローズマリーを友人としてすら顧みなかったことである。15年来の友人であった精神科医の他に、ローズマリーだけが生涯クローディーヌをクローディーヌとして認識し愛し理解した存在だったのに。
クローディーヌは8歳の時にローズマリーの家庭教師ルイ・ラックスを、まだ幼い少年だった彼を同一化したいと願うほどに敬愛する父オーギュストが愛したことを知った。妻を裏切り、息子も娘も裏切って少年を愛でた。それがクローディーヌの性自認を歪めなかったとは言い切れないと思うのは私の気の所為だろうか? その父はやがて嘗ての恋人の少年の姉セシリアと愛し合い家族ばかりか嘗ての恋人ルイをも裏切ったため、ルイによりセシリア共々に焼き殺されてしまう。
大学に進学して再び故郷と同様にチヤホヤされ浮かれる日々を送る中で出会ったシレーヌ・ベージュこそ、クローディーヌの永遠の恋人になるかもしれないと思われた。しかし、長兄アンドリューに交際を申し込まれ求婚されたシレーヌはクローディーヌを裏切ってしまう。15年来の友人である精神科医に自身は男性だと訴え、彼に女性の肉体に男性の心を宿した不完全な男性だと告げられたクローディーヌは不完全だからこそ叶わないのかと彼女なりに納得し拳銃自殺を遂げた。クローディーヌの墓に佇むのは彼女が真に愛すべきだったローズマリーだった。
『嘘解きレトリック』
都戸利津(みやこ・りつ)
花とゆめコミックス 第3巻
出版社からの画像提供が遅れていたが、6月1日に漸く画像がupされた。
九十九夜町九十九番にある「祝探偵事務所」。
頭脳明晰なのにダメ人間である貧乏探偵の祝左右馬は大家に家賃をまけて貰っているものの遂に夜逃げを決行! 助手の浦部鹿乃子は列車に乗っているのは仕事だと思っていたが、知らずに夜逃げに同行させられていることを知り真っ青になる。ダメ人間だと知っていて左右馬とのほほん生活を送っていた自身に彼を責める資格はないと自覚し、何とかしなくちゃいけないと思うも妙案は浮かばなかった。車中での泥棒騒動で左右馬の友人である端崎馨の姉で雑誌『心霊・怪奇「魔境探訪」』の記者の雅に出会う。よく似た姉弟で一目で血の繋がりがわかる容貌である。取材で荷物持ちをすれば家賃を出して貰えるという餌を鼻先につり下げられ、同行した先で「人形殺人事件」に遭遇した。
人のウソがわかる能力ゆえに疎まれ郷里にいられなくなって逃げて来たのに、その力を過信して鹿乃子は腐った思考に陥ることが多々ある。双子じゃないという品子の言葉を自身の能力で真に受けるが、嘘を言っていないだけで事実ではないということが鹿乃子にはわからなかった。双子じゃないという言葉には「1人」ということと「3人以上」という2つの意味がある。
「その場しのぎと過保護が過ぎるわよね」
→ 端崎雅
綾尾夫人は自身も双児の姉妹として生を受け親族に強引に養子にされた際、それを拒絶した母親を養父となった男に階段から突き落とされて殺され、母親に抱かれていた姉をも失った。母と姉を殺された記憶は夫人の心に深く刻まれ、生まれてくる我が子が1人ではないと分かった途端に夫人は恐怖に襲われてしまう。やがて三つ児の姉妹が生まれるも夫人の心情を慮った綾尾氏により1人の娘として扱われ、そんな両親に言われるままに三つ児は「品子」という1人の娘を演じて三人一役を続けた。しかし、両親の海難事故による死から2年後、人形のお膳の食事が減るのは台所に出没するネズミが盗み食いしているからではないかと考えた女中の柴田イネが食事に殺鼠剤を混ぜ、そうとは知らずに3人の「品子」の1人が毒で死んでしまった。その直後、滝で転落死体となって発見されたイネは自殺したと警察に処理されたが、人形の祟りだと戦いた彼女は兄に共謀して盗んだ人形を元に戻そうとして兄に殺されたのだった。
改名やら新しい生活に戸惑いつつ各々の人生を歩み始めた2人の品子は、新しい名前で、新しい心で死んだ姉妹の分も生きてゆく。
「これは同情じゃない、「任務」でもない。君と私の間に気持ちの差はない、気づかなかったのは君の方だ。いや私自身確かにわからなかった、この想いが何なのか、日ごと増してくる君への感情に戸惑いすら覚えた。君が感情をぶつけてくるたび私は考え、そして模索し始めていた、君と生きる道を。私はずっと君が好きだった。」
→ 篠塚高 in 第1シリーズの「DUTY12:果てなき日々への追憶 4」(コミックス第6巻 / 文庫版第3巻)
慎悟と篠塚。初恋同士、一目惚れ同士の2人。篠塚もまた慎悟と同様に彼に一目惚れだった。水面下で初恋の炎に焼き焦がされ、足掻くも想いは消えなかった。当時、総じて恋愛感情を自身に抱く外部の人間を蔑む「UB」の中でも最たる彼女自身にとっては幸いなことに、それが何なのか認識できていなかった。慎悟と接して次第に変化してゆく自身の“何か”に内心首を傾げるDIVの戸惑いは、きっと誰よりも篠塚が一番理解できるだろう。多分、イックや「煌龍」の結城直人(張道明)、慎悟に関わった他の人間達も同様だ。なにしろ慎悟は“今世紀最強のタラシ”だから影響を回避するのは不可能だ! 結城ですら「UB」への敵対行為をやめるまではいかないが、慎悟に苦難が降り懸かる度に神経をすり減らす羽目に陥っている。
藤沢市役所の新庁舎建設に伴い、市役所本館の解体工事が6月に始まる。本館は鉄筋コンクリート造で地上3階地下1階。昭和30年代まで消防が火の見櫓として使っていた高さ27mの望楼もあり、市のシンボルとして長年親しまれてきた。耐震性に問題があるため、2011年3月の東日本大震災の後に使用を停止した。新庁舎は本館などを解体した後の15年夏に着工。地上11階地下1階の構造で、17年度末までに供用を開始する予定である。
1997年の新宿東警察署 藤沢市役所 本館
本館の玄関 up
作品名:『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』
公開日:2008年8月30日(土)
ロケ地:藤沢市役所 本館
所在地:神奈川県藤沢市朝日町
現在の諸手続きは新館で処理される。そのため、立体交差の連絡通路の橋を渡った対岸の本館を訪れることは皆無である。記憶に残らないほどの昔は急傾斜の階段を昇り降りしたこともあった筈だが、欠片も思い出すことは出来ない。或る手続きを行うべく訪れた新館1Fに写真が掲示されており、その写真の中の一枚を見て『20世紀少年』で今や忘却の彼方にある本館が“1997年の新宿東警察署”として撮影されたことを知った。
それにしてもトモダチの犯行の動機には同情しつつも呆れるしかない。確かに彼をいじめたケンヂは悪い!いじめはクズのすることだし、悪いことをしたら謝らなければいけない。いじめられた側の心に傷は深く刻まれるものだが、だからって大量虐殺や世界を滅ぼしても良いという理由にはならない。
因みに、2作目の『20世紀少年 第2章 最後の希望』で“2015年の新宿東警察署”として撮影されたのは東京都日野市程久保2丁目の明星大学日野キャンパスである。
艶やか転生(てんしょう)ロマン『ゆかりズム』は幕を下ろした。
花魁の夕紫(♀)の転生である高校生小説家の小早川紫(♂)、夕紫の用心棒の数馬(♂)の転生である里見克彦(♂)、呪(まじな)い師の嵩村静(♂)の転生である立花真秀(♀)、三者三様の愛憎が現代の彼らは絡み合う。ただ数馬を排除することしか頭に無かった嵩村の転生だけあって、真秀は数馬の転生の里見を殺すことしか考えようとはしなかった。そうして転生を重ねれば因縁の呪いは薄れるだろうとね。呪いでも病気でも原因を解明しなければ、どうしたって根本的な治療は不可能なのにこいつってば最低だ。
因みに、小早川家の元々の家政婦で里見の叔母の正(まさ)さんは夕紫のいた遊郭の女将の転生だった。
「紫さん。「数馬」じゃないんです、本当の名は「数音(和音)」。夕紫の兄。妹が売られた金で生き延びたのにろくでもない生き方しかできなかったことを悔やんで。せめて、これ以上の苦しみから妹を守ろうと、どんな望みも叶えようと――――。たとえそれが殺してやることでも、たとえどんなに辛いことでも。そんな風に――― 1人で背負いこんで壊れていったんです。兄だと告げるべきだったんですよ、それで妹に憎まれた方がよっぽど。」
学校で対峙した3人。里見の殺害という現世のみの対処療法を実行しようとする真秀を押し留め、過去世の間違いを繰り返すまいとする里見の心を信じて数馬のことを彼に尋ねた紫は意外な事実を知る。数馬は偽名で本名「数音(和音)」の彼は夕紫と呼ばれる前の、幼い頃に共に育った夕の実兄だった。貧しい浪人の父親を失って病がちの母親は更に身体が弱くなり、度重なる不作で村全体が貧しく他人に救いの手を差し伸べる余裕など誰にも無かったため、家財・田畑を売り払っても生きるのに足りずに妹を売るしかなかった。それでも貧乏人がマトモに生きるのは困難な時代、花魁になった妹を用心棒として守るしかなかった。胸を患った妹を殺すしか兄として出来ることはないのかと自問しつつ苦しみながら“願い”を叶え自殺しての転生であり、紫は夕紫の想いを告げて数馬の悲しみを解き放つ。数日後、今回の転生に纏わる術を解きに紫の夢の中に現れた嵩村に過去世で夕紫が彼に会うのを拒んだ理由を告げる。嵩村を愛しながらも彼を含めた他の“好き”をも嘘にしないため、平等に愛するために誰のものにもならないと決めていた。そうでないと辛すぎる苦界の境地ゆえに。それは誰に対する“好き”も逆に嘘だと証明している愚挙に他ならない。しかし、彼に対する想いが膨れ上がり逢瀬を重ねれば自己満足のための愚かな誓いが崩壊することを悟り、これ以上は逢うまいと拒むも嵩村を愛して幸せだったと200年目にして打ち明けるのだった。
嵩村の術による転生にケリをつけ術を解除し術者である嵩村の転生の真秀だけが過去世の記憶を残すのみとなり、それぞれの道を歩み始めた。里見は小早川家を出てフランスに渡航しシェフを目指して修業しつつネットで紫の勉強を見てメールで問題を送信する日々、紫は小説家を辞めて勉強し色々な世界を知りたいと学生業に専念し、真秀は夕紫のような病人を1人でも減らして命を救いたいと願い医学部を目指す。