◎エディブルフラワーEdible flower えでいぶるふらわー
アジサイ、スイセンには有毒物質が含まれることから葉をあしらい、お浸しに使いそれを食べ食中毒を起こしたことを以前に報じられていたことがありました。最近では、エディブルフラワーが知られ食卓を賑わしています。そこで食べられる花と、身近な有毒な成分を含む植物を一部調べてみることにしました。
エディブルフラワーの多くはそれほど美味しいものではありませんが、料理に彩りを添えたり、食用にされる花でありエディブル(食用とされる)・フラワー(花)で、日本で使用にされている花で代表的なものは、食用菊があり、桜の花は塩漬けして桜湯としています。食用にできる花としてあげられるものに、以下のような植物が使われています。季節を感じさせる代表的な食用に使われている食品の詳細をおのおのの季節ごとに一点づつ紹介します。
▼春には
ローズツバキ、ミヤコワスレ、マリンゴールド、エゾムラサキ、すみれ、パンジー、サツキ、ヤマツツジ、🌸桜、藤の花、ジャスミン、カモミール、🌷チュウリップ
惣菜で野菜としている菜の花、ふきのとう、ワサビ、花サンショウ、シュンランの花の塩漬け、コウサイタイ
野山に見られる萱草(かんぞう)のつぼみ、キンサイ、ニワトコ、レンゲソウ、タンポポがあります。
*蕗の薹 ふきのとう
キク科、日本原産。栽培は、日本だけといわれ、雪の溶けきらないうちから芽を出すふきのとうは、いの一番に春を感じさせ頭状花が白色(雌花)、黄色(雄花)単性花で、多くの鱗片葉(苞:ほう)をつけ、特有の香り、ほろ苦さがあり乾燥させたり塩漬けにして保存もされる。苦味があり健胃として胃も垂れ、胃の痛み、また咳を止め、たんを切ることにも利用されていた。
▼夏には
🌻ひまわり、ラベンダー、ウスベニアオイ(マロウ)、ゼラニュウム、カーネーション、🌺ハイビスカス、キンギョソウ、キンセンカ、ダリア、クチナシ、キマナス、スイトピー、センニチコウ、ナスタチュウム、紅花、ズッキーニの花、ピタヤ、月下美人、チャイブの花、デンファレ(ランの一種)
惣菜で野菜としているアーティチョーク、ハナニラ、キンレンカ、バナナの花、エルダーフラワーがあります。
*花韮 はなにら
ユリ科東アジア、南米原産。国交正常化後に導入され中国野菜といわれる。日当たりのよいところを好む多年生で1年越しの成育で春に種をまいたものが翌年30cm程に成長した春以降5~9月に掛けて収穫し旬とする。葉を食用としている葉韮よりは柔らかく甘味があり香気が強い。汁の実、炒め物、卵とじ、漬物とされている。ビタミンA効力は葉韮590μgに比べ、花韮180μg、ミネラル、その他のビタミン類も同程度か若干劣る。
▼秋では
トレニア、コスモス、キキョウ、ヒルガオ、キボウシ、ナデシコ、花シソ、葛の花
惣菜で野菜としている食用菊があります。
*食用菊 しょくようぎく
キク科、中国原産。中国では、古くから薬用とし利用されており、日本には、すでに奈良時代以前に薬用、観賞用として伝来していた。苦味が少なく、独特の風味があり八重咲きの香りのよい大きいものがよい。お浸し、汁の実、漬物、酢の物、サラダ、てんぷらに秋の香りが楽しめる。漢方で肝臓、腎臓の機能を高め眼精疲労、視力の低下の症状改善に役立ち、その他抗菌(杭菊花:こうきくか、白い花)、解熱、降圧作用も認められ、経験的に菊花茶、菊花酒としても利用している。
▼冬には
惣菜で野菜としているカリフラワー、ブロッコリーがあります。
*🥦ブロッコリー ぶろっこりー
アブラナ科、地中海沿岸を原産地とする。緑色の花蕾、若茎部を食用とし花蕾(からい)が密集して重量感のあり色の濃いのがよい。茹でて彩りとしてサラダに用いられシチュー、バター炒め、付け合せとしても利用される。1997年ブロッコリーのスプラウト(新芽)に含まれるスルフォラファン(おもに辛味の成分)の成分がピロリ菌を抑制しガン予防に効果的との発表があった。
年間を通して用いられるもの
🌹バラ、クローブ、サザンクロス、プリムラ、ペチュニアがあります。
*クローブ・丁子・丁字(ちょうじ)
フトモモ科、インドネシア、モロッカ諸島原産で熱帯、亜熱帯に高さ10m、常緑樹として成育し東アフリカザンジバル島(タンザニア)で人工栽培がされる。スパイシーなバニラに似た甘味、芳香があり甘い菓子、料理の両方に香辛料として使用できる。つぼみの乾燥品を煮込み魚介類の料理、菓子、ピクルスに、粉末にしてソース、ケチャップに使われウスターソースの香りの元にもなっている。煮こみ料理のホトプなどに玉葱などに差し込んで用いることができる。精油が16~20%あり香辛料、薬用、香料として抗菌、鎮痛、健胃、保湿、消臭、育毛に利用、化粧品にも使われる。
◆主な有毒植物は、
あじさいの有毒物質は、花、 葉、球根などに有毒物質を含み、食べると嘔吐、昏睡等の症状が起こり近年に事件となっています。紫陽花(あじさい:ユキノシタ科)の特に根、葉、つぼみには、当初胃液と反応して青酸を生じる青酸配糖体が含まれていますとのことでしたが原因物質は青酸配糖体であると確認されてないようです。葉が季節の植物として何気なく利用したものと思われますが、食用にできないものを食卓に食事として出すことは厳禁です。
厚生労働省からの発表は
2008年8月18日付けで修正版が出ています。
アサガオ(ヒルガオ科)の種子(生薬名:牽牛子・けんごし)に 樹脂配糖体(ファルビチン)により激しい吐き気、下痢の症状を呈する。
アマリリス(ヒガンバナ科)の球根・花・葉にアルカロイドにより激しい吐き気、下痢 、血圧低下、心不全の症状を呈する。
エニシダ(マメ科)の枝、葉の全体にアルカロイド(スパルテイン)により神経マヒ、血圧降下、呼吸困難の症状を呈する。
オシロイバナ(オシロイバナ科)の種子(生薬:紫茉莉根シマツリコン)で根に多く全体 アルカロイド(トリゴネリン)により腹痛・ 嘔吐・下痢の症状を呈する。
オモト(ユリ科)(生薬名:万年青根)根茎、葉の全体に強心配糖体( ロデイン・ロデキシン)により呼吸不全・心臓、運動機能マヒ・全身けいれんを起こす。
キョウチクトウ(キョウチクトウ科)の枝葉、花の全体に強心配糖体オレアンドリン、ネリオドレイン 猛毒で下痢・嘔吐・心臓麻痺の症状を呈する。
クレマチス(テッセン:キンポウゲ科)、全草でアルカロイドを含み胃腸障害、皮膚炎の症状を呈する。
コンフリー(ムラサキ科)の根茎に多く含むアルカロイド(ピロリジン)で肝障害の報告があり青汁、テンプラにするが多食は危険。
シクラメン(サクラソウ科)根茎に含むサポニン配糖体(シクラミン)により嘔吐・下痢・けいれんの症状を呈する。
スイセン(ヒガンバナ科)の葉、根茎に有毒物質アルカロイド(リコリン、タゼチン等)嘔吐・胃腸障害 の症状を呈する。
スイセンとニラ間違えて食べ食中毒になったことが報道されています。水仙の花の無い葉が韮と似ていますが、土を掘り起こし根の形で、また臭いをかぐと区別できます。
アルカロイド あるかろいど
アカネ科、ケシ科、キンポウゲ科、セリ科、マメ科、メギ科の植物に多く、主に熱帯、亜熱帯地方に多く分布する。植物に含まれる塩基性含有窒素化合物で植物の有機酸塩とし存在することからアルカリで分解し溶剤抽出、蒸留により分離される。苦味の成分であり作用が穏やかなテォブロミン(ココア)、テォフェリン(紅茶)などがあり、カフェイン、タバコのニコチン(融点247℃)は興奮作用がある。コカの樹葉のコカイン(融点98℃)は、麻酔性があり、これを利用した炭酸飲料は習慣性になりやすく注意する。有毒性のあるものとしてジャガイモのソラニン、毒セリのシクトキシン、彼岸花のリコリンがある。チョウセンアサガオ(アトロピン、スコポラミン、ヒヨスチアミン)、ハシリドコロ(アトロピン:融点116℃)には、強いアルカロイドであり麻酔性のある毒素を持ち有毒植物とされるが、鎮痙(ちんけい)、止血(しけつ)薬としても知られる。
スズラン(ユリ科)花や葉や実、特に根に多く コンバラトキシン他 嘔吐、頭痛、動悸、心不全、血圧低下、心臓マヒがみられる。
チューリップ(ユリ科)の球根に多く花・葉にアルカロイドを含み胃腸障害、痙攣、 中枢神経系機能低下がみられる。
チョウセンアサガオ(ナス科) の主に葉に多いが全体にアルカロイド(アトロピン、スコポラミン)を含み言語、意識混濁、精神障害を生じる。
ニチニチソウ(キョウチクトウ科)の全体にアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン)各種を含み嘔吐、麻痺、 細胞分裂阻害作用がある。
パンジー(スミレ科)の花はエディブルフラワーに利用されているが、種子・根茎に ビオリンを含み嘔吐・神経マヒの症状を呈する。
彼岸花( ヒガンバナ科)の全体にアルカロイドを含み嘔吐・下痢を伴い中枢神経をマヒさせる。救荒作物として鱗茎にでんぷんを貯えていることから水にさらして毒抜きをして食用とした。
ヒヤシンス(ユリ科)の球根に多いが花・葉に アルカロイドを含み皮膚炎 嘔吐、下痢をする。
フクジュソウ(キンポウゲ科)の全体特に根の部分に アルカロイド配糖体(アドニン)を含み嘔吐・下痢を経て血圧上昇 呼吸困難 心臓麻痺 を起こす。
ベゴニア(シュウカイドウ科) 全体特に葉、茎に シュウ酸・サポニンを含み下痢・胃腸のただれ、けいれんを生じる。
ポインセチア (トウダイグサ科) 全体、特に樹液(フォルボール)、葉の部分にアルカロイドを含み腹痛・下痢・皮膚炎を起こすことがあるが量が少なければ問題ないとされる。
レンゲツツジ(ツツジ科)、シャクナゲ(ツツジ科)の全体、特に葉に ロードトキシンなどでけいれん・嘔吐・神経麻痺・呼吸困難をおこす。
有毒植物としているアサガオ、ベコニア、水仙、コンフリー、パンジーなどの花がエディブルフラワーとして利用されていることもあります。一般に多食するものでないので食中毒までには至らなかったものと思われます。レンゲの蜂蜜は有名ですが中毒例もあるようです。あじさい、水仙はいずれも葉、茎、根茎を摂取したことによる食中毒となっています。一般に花より根茎、種子といった子孫を残す大事な部分に、有害物質を多く含んでいるように見受けられます。中には、微量で薬理作用の強いものがあり、使い方によって有毒になり、「薬と毒は紙一重」とも言われているのです。
一般に花は、綺麗(きれい)で蜜を持っています。受粉のために生物を呼び込んでいるわけですから他の部分に比較して有害性は低いものと思われます。特に多量に野菜のようにして摂取するものではありません。蕾、花より精油されウスベアオイ、カモミール、ジャスミン、ゼラニュウム、丁子、ハイビスカス、バラ、ローズマリーなどがアロマセラピーに利用しています。よくパンジー(スミレ科)の花はエディブルフラワーに利用されているようですが、「種子・根茎に ビオリンを含み嘔吐・神経マヒの症状を呈する」とあります。鳥兜(とりかぶと)は、根、葉に猛毒があることで知られ、食用には厳禁とされ薬用には使われていますが、花に猛毒とはあまり聞いたことがありません。花の毒性はどのようになっているのでしょうか。食用とはしていないようですので避けたほうが無難です。
食卓で器に盛られた物はなるべく残さず食べる習慣のある人は、注意が必要ですし、料理人は、食べられないものは出さないのが良いのですが、栗のいがぐりなど、食べられないものをお出しする時には、注意書きが必要になりますね。知識のないもの、未知なものを決して使用してはならないのです。人の役に立つことをするには、多くの情報、知識が必要です。
有毒植物による食中毒を防止するために、次のことに十分注意しましょう。
知らない植物は絶対に食用としてはならない。花屋さんの花は観賞用で殺虫剤などが使われ食用ではないので食用とする事は厳禁です。新芽や根だけで、種類を見分けることは難しいので食物に詳しい知識を持つ人の指導等により、特に山菜採りの時は正しい知識・鑑別法を習得した上で採取することが重要です。野山で採取した草花、山菜をみだりに人に譲らないようにしましょう。料理する前、配膳にもう一度、その品物が食材として適当かどうか確認したうえで利用することが大切です。
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