・有毒植物の誤食Mistaken eating of poisonous plant ゆうどくしょくぶつのごしょく
厚生労働省の「過去10年間の有毒植物による食中毒発生状況(平成21~30年)」によると、食中毒の件数は176件、死者は12人、患者数は780人でした。
最も多いのはスイセンで48件を確認し、患者数180人、死者1人です。
誤食しやすい有毒植物の件数・患者数は
(1) スイセン48件[患者数180人]:有毒部位は植物全体で、ニラ、のびると間違い誤食し口にすると、吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛などを引き起こします。
(2) ジャガイモ21件[患者数346人]:新芽、緑色部分に多く幼芽の半分ぐらいあり皮に含まれ毒性があります。光に当たり緑色の部分はソラニンを100mg/100g以上含み、生芋で20~40mg/100gで腹痛、メマイなどを起こし中毒を起こすといわれます。
(3)バイケイソウ16件[患者数33人]:新芽の時の形態が山菜のオオバギボウシ(地方名ウルイ)やギョウジャニンニク(地方名アイヌネギ)と似て、中毒事故が多いとしています。食用のオオバギボウシ(うるい)は一緒に生えていることもあり注意が必要です。オオバギボウシの葉は葉柄があって、主脈から側脈が出るのに対し、バイケイソウの葉は無柄で、完全な平行脈であることなどで識別します。
芽出し期には特に判りにくいため、少し成長して葉が開いたもので確認しましょう。中毒症状に、嘔吐、手足のしびれ、呼吸困難、脱力感、痙攣、血圧低下などを呈し、最悪の場合は死に至ります。
(3)チョウセンアサガオ16件[患者数39人]:全草、特に種子に猛毒の成分があり、全体に特異な臭いを呈し中毒になると、のどの渇き、おう吐、けいれん、頻脈、呼吸困難、幻覚などの症状が顕(あらわ)れ、大量に摂取で脱力、けいれん、昏睡を経て死に至ることもあります。オクラのつぼみ、シシトウ、明日葉・モロヘイヤの葉、ゴマの種子、根をゴボウと誤認、摂食し食中毒になることが多く見られます。
(5)クワズイモ13件[患者数26人]:観葉植物で有毒成分シュウ酸カルシウムを根茎に含み皮膚炎、嘔吐、麻痺を起こします。サトイモ、ハスイモと間違えての誤食で中毒を起こしています。
(5)イヌサフラン13件[患者数19人]:9月~10月に15cmほどの花茎を伸ばしサフランに似た薄紫色の花を咲かせます。山菜の時期に出てくる葉がギョウジャニンニクと間違えやすく誤食し死亡するという事故があります。
サフランとイヌサフラン[イヌサフラン科(ユリ科)]は球根も花も非常によく似ていますがサフランはアヤメ科で異なります。
(7)トリカブト8件[患者数12人]:全草に猛毒があり新芽は、ニリンソウ(キンポウゲ科)、ゲンノショウコウ(フウロソウ科)、モミジクサ・ヨモギ(キク科)に葉が似て間違って採取、食用とし中毒を起こし最悪の場合には中毒死することがあります。
(8)コバイケイソウ5件[患者数13人]:全草有毒でコバイケイソウのの花のシーズンは6月中旬~6月下旬です。ニンニクの香りはないのですが山菜のギョウジャニンニクと間違える誤食事故が発生し亡くなる人がいます。若芽は山菜のオオバギボウシやノカンゾウの若芽にも似ています。誤食で嘔吐、下痢、手足のしびれ、めまい等葉を、かじると舌がしびれる辛さといいます。
(9)ヨウシュヤマゴボウ4件[患者数4人]:アザミの根がヤマゴボウという名で売られています。ヨウシュヤマゴボウの根が食べられるものと勘違いし誤食して、中毒になるという事例があります。果実中の種子は毒性が高くブルーベリーと間違って果実を誤食する事故もあります。誤食で腹痛、 嘔吐、下痢を起こし、重症化すると、けいれんを起こして死に至ります。
(10)ハシリドコロ3件[患者数8人]:は、誤食により幻覚を生じ苦しんで走り回ることから語源ともしています。新芽をフキノトウやオオバギボウシなどの山菜と間違え採取しないよう注意しましょう。
(10)観賞用ヒョウタン3件[患者数20人]:瓢箪(ひょうたん)型に近いユウガオで苦味のククルビタシンCucurbitacinの強い品種を食用とし嘔吐や下痢の症状を引き起こし食中毒の報告があります。
他には、オクラとチョウセンアサガオ、トウシキミとシキミ、アジサイ、毒ゼり、スノーフレークとニラ、テンナンショウ類とトウモロコシ・タラノ芽、ジギタリスとコンフリー、フキノトウとフクジュソウなどの事例が有ります。
秋に採取するギンナンは、多量に食べると、嘔吐や下痢、呼吸困難を引き起こすことがあります。
厚生労働省では、食用の野草と確実に判断できない植物は「絶対に採らない!食べない!売らない!人にあげない!」「野菜を食べて体調が悪くなったら、すぐに医師の診察を!見分けに迷ったら、最寄りの保健所に相談を」と注意喚起しています。
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[初版:2020,3,16]