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高智晟著『神とともに戦う』(9)
確かあれは、夏の日の昼ごろだった。私は母について水を汲みに行った。私たちの村の水汲み場は崖の中ほどにある。だが、そこに行くには1人しか通れないほど狭い小道を抜けなければならない。しかも、石の間からしみ出る水を汲むためのヒシャクが必需品なのだ。その日、ちょうど正午だったので、灼熱の太陽に照らされ、あたり一面まぶしかった。
山の昼は、死んだように静まり返っている。母が桶を水でいっぱいにした時、外側に掛けておいた銅のヒシャクが突如、転がり落ちた。水汲み場の周りは、傾斜70度もあろうかという険しい岩の崖である。ヒシャクは岩に当たりながら崖を落ちて行き、耳をつんざく凄まじい音を響かせた。それは、何代前から使われたのかも分からぬヒシャクだ。母は、呆然と立ち尽くし、泣きながら、絶望の面持ちで瞬く間に転げ落ちて行くヒシャクを見ていた。
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