弟 子 規
『弟子規』は孔子の教えを基に学生の生活規範を編成したもので、儒教教育の入門書と言うべきものである。中国清朝の康煕年間の李毓秀(1662年~1722年)によって書かれ、もとは『訓蒙文』と言ったが、のちに清朝の賈存仁によって改定され『弟子規』と改名された。
「弟子」は学生の意味。「規」は規範の意味である。学生(弟子、書生)が家に居るとき、外出時、人との接し方、物の扱い方、学習上の原則や規範などを細かく示したものであり、近年中国の小学校の教科書にも採用され、見直されている。
『弟子規』の題目は『論語』学而6による。
<白文>
子曰、弟子入則孝、出則悌、謹而信、汎愛衆而親仁、行有余力、則以学文。
<書き下し文>
子曰く、弟子入りては則ち孝、出でては則ち悌、
謹みて信、汎(ひろ)く衆を愛して仁に親しみ、行いて余力あらば、則ち以て文を学ぶ。
<和訳>
孔子は仰られた。
弟子(学生)は、家にあっては親兄弟に仕え、外に出ては年長者に仕え、慎み深く行動して信用を重んじ、
人を分け隔てなく愛し、仁徳のある人に親しんで学び、余力が生じたら学問をすべきである。
『弟子規』はこの文を、
主要六課
「入則孝」入りては則ち孝(家の中では孝行が大切である)
「出則悌」出でては則ち弟(家を出たら年長者を敬うことが大切である)
「謹」 謹
「信」 信
「汎愛衆」汎(ひろ)く衆を愛す(分け隔てなく人を愛する)
「親仁」 仁に親しむ(仁徳のある人に親しむ)
補習一課
「余力学文」余力あらば文を学べ(余力が生じたら有益な学問をすべきである)
に分けて、日常の処世訓を説いている。
「余力学文」の「文」は六芸(りくげい)を指す。
六芸とは、古代の中国(周代)で士以上の位の者の必修科目とされた六種の技芸のことで、
礼(礼儀)、楽(音楽)、射(弓)、書(書道)、御(馬術)、数(数学)を指すという。
着目すべきは、先の主要六課は社会における「身の処し方」であり身体動作を伴うものだということ。
そして主要六課の「道徳の実践」の下に「技術の習得」が置かれている点であろう。
総叙
序
【解説:弟子就是学生,规是规范。《弟子规》是依据至圣先师孔子的教诲而编成的生活规范,它规定了学生主修的六门课和辅修的一门课。首先在日常生活中,要做到孝顺父母,友爱兄弟姐妹。其次在一切日常生活中行为要小心谨慎,言语要讲信用。和大众相处到平等博爱,并且亲近有仁德的人,向他学习,这些都是很重要非做不可的事。如果做了之后,还有多余的时间精力,就应该好好的学习六艺等其它有益的学问。】
「弟子」とは(儒教を学ぶ)学生のことであり、「規」とは規範である。『弟子規』は先師・孔子の教えを基に編成された生活の規範であり、学生が主として修める六科目と補習の一科目を規定している。まず日常生活において、両親への孝行を身につけ、兄弟姉妹を愛すること。その次に日常生活におけるすべての行為を注意して慎み深くし、言葉は信用を重んじること。人々と接する際には平等・博愛の心を持ち、仁徳のある人に親しんでその人に学ぶこと。これらは重要であり行わなければならない事である。もしそれらを実践して時間と体力に余裕があるなら、六芸(りくげい)などの有益な学問をしっかりと学ぶべきである。
弟子規 聖人訓
『弟子規』は聖人(先師、孔子)の訓戒である。
まず日常生活の中で親孝行をし、兄弟姉妹と仲良くする。
その次に日常生活のすべての言動を慎み深くする。
汎愛衆 而親仁
分け隔てなく人を愛し、仁徳のある人に近づいて学ぶ。
有余力 則学文
さらに余力があれば、有益な学問をすべきである。
『弟子規』
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親孝行
【解説:这是学生主修的第一门课。入是在家。孝是善事父母,就是在家要善事父母。善事,一个是心,一个是侍。心即是心里面念念不忘父母对我们的养育之恩,侍即是念念都要照顾到父母。我们能以这样的心去做,就是善事父母,这是做人的根本。百善孝当先。】
父母呼 応勿緩 父母命 行勿懶
【解説:父母亲叫你的时候,要立刻答应,不能迟缓;父母亲让你做事的时候,要马上去做,不能拖延偷懒。】
父母に呼ばれた時は、すぐに応えること。
父母に用事を命じられた時はすぐに行い、怠けて遅らせてはならない。
【解説:对父母的教诲,要恭敬地聆听;对父母的责备,要顺从地接受。】
父母の教えは敬って聴くこと。
父母にしかられた時は、素直に受け入れること。
【解説:子女照料父母,冬天要让他们温暖,夏天要让他们清爽凉快。早晨要向父母请安。晚上要替他们铺好被子;伺候父母安眠。】
冬は父母を温かくさせ、夏は父母を涼しく快適にさせること。
朝は父母に挨拶し、夜は父母のために布団を敷いておくこと。
【解説:出门要告诉父母一声,回来也要通报一声,以免父母挂念。平时居住的地方要固定,选定的职业或立定的志向要努力去完成,不要轻易改变。】
出かけるときは必ず父母に一声かけ、帰宅したときにも必ず挨拶すること。
普段起居する場所は定めておき、努力目標は安易に変えないこと。
【解説:不要因为小事情,就不禀告父母而擅自去做。假如自作主张地去做事,那就不合乎为人子女的道理了。】
小さな事だからといって、父母に無断で我がまま勝手にしてはならない。
我がまま勝手に振る舞う事は、子としての道に反するからである。
【解説:东西即使很小,也不要偷偷私藏起来。否则,一旦被发现,父母一定会非常伤心生气。】
小さな物だからといって、こっそり盗んではならない。
もし盗んだ事が分かったら、父母の心を傷つけるからである。
【解説:凡是父母所喜欢的东西,一定要尽力替他们准备好;凡是父母所讨厌的东西,一定要小心地处理掉。】
父母が好むものは、できるだけ父母に代わって用意すること。
父母が好まないものは、注意して遠ざけること。
【解説:如果身体有所不适或受到损伤,就会让父母为我们担忧;如果在德行上有了缺欠,就会使父母感到丢脸。】
体に傷があれば、父母に心配をかけてしまう。
徳行に欠点があれば、父母に恥をかかせてしまう。
【解説:父母亲喜欢我,做到孝顺并不难。父母亲不喜欢我,我还能用心尽孝,那才是难能可贵的!】
父母が私を愛していれば、孝行するのは難しくない。
父母が私を愛してくれなくても、やはり孝行するのが賢明である。
【解説:如果父母有了过失,子女应当耐心地劝说使其改正。劝说时态度一定要和颜悦色,声音一定要柔和。】
父母が過ちを犯したときは、根気強く説得して改めさせること。
その際は自分の態度を穏やかにし、声も柔らかくすること。
【解説:如果父母不肯接受劝说,就等到心情好时再劝。如果父母还是不听,还要哭泣恳求,即使因此而遭到鞭打,也毫无怨言。】
もし父母が聞き入れないときは、父母の機嫌が良い時に再度説得する。
それでも聞き入れなければ泣いて懇願し、仮に鞭で打たれたとしても不平を言ってはならない。
【解説:父母亲病了,吃的药自己要先尝一尝,看看是不是太苦、太烫。并且应日夜侍奉在他们的身边,不能离开一步。】
父母が病気になったときは、先に薬が苦すぎないかお湯が熱すぎないかを確かめること。
昼夜を問わずお世話をして、離れてはならない。
【解説:父母亲去世后,要守丧三年,有孝心的,提起父母会难过哭泣,哀思父母养育之恩。居处要力求简朴,禁绝酒肉、情欲等事。】
父母が亡くなったら三年喪に服し、泣いて親の恩情を忘れないこと。
住まいは簡素にし、酒肉や情欲は慎まなければならない。
【解説:丧事要完全按照礼法去办,祭祀要完全出于诚心。对待去世的父母亲,要如同他们在世时一样。】
葬儀は礼法に則って行い、祭祀は真心を尽くさなければならない。
亡くなった父母に対しては、生前と同じようにすべきである。
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年長者を敬う
兄道友 弟道恭 兄弟睦 孝在中
【解説:作哥哥的要爱护弟弟,作弟弟的要尊重哥哥。兄弟之间能够和睦相处,对父母的孝心也就包含在其中了。】
兄は弟をいたわり、弟は兄を尊重すること。
兄弟姉妹は仲良く接すること。それもまた親孝行の内である。
財物軽 怨何生 言語忍 忿自泯
【解説:如果彼此都把财务看的轻一些,不贪图钱财,兄弟之间就不会有怨仇。说话时都能够互相忍让一点,多替对方着想,愤恨自然会消除。】
お互いに財産や金銭に固執しなければ、兄弟間に怨みは生じない。
謙虚な言葉遣いを心掛ければ、憤りは自ずと静まるものである。
【解説:不论在用餐、就座或行走时,都应该谦虚礼让、长幼有序,让年长者优先,年幼者在后。】
飲食であれ、座るときや歩くときであれ、
年長者が先に行い、年少者は後から行うこと。
長呼人 即代叫 人不在 己即到
【解説:听到年长者叫人时,应立即替他去叫。如果被叫的人不在,自己就立即到年长者那里去,看看有什么事情需要做。】
年長者が人を呼んでいるときは、代わりに呼びに行くこと。
その人が不在であれば、すぐに年長者のもとに戻ること。
稱尊長 勿呼名 対尊長 勿見能
【解説:称呼尊长,不可以直接叫他们的名字。长辈见识多,阅历深,要多听他们说话,不要自己夸夸其谈,表现出很有才能的样子。】
目上の人を呼ぶときは、直接名前を言ってはならない。
目上の人に対して、自分の才能をひけらかしてはならない。
路遇長 疾趨揖 長無言 退恭立
【解説:在路上遇到尊长时,要快步迎上前去行礼问候。如果尊长一时还没说什么,就要退在一旁恭恭敬敬地站立,等候指示。】
道で年長者と会った時は、速やかに前に出て挨拶をすること。
年長者が何も言わないようであれば、礼儀正しく退くこと。
騎下馬 乗下車 過猶待 百歩余
【解説:遇到尊长时,骑马时要下马,乘车时要下车。等尊长走过百步以外后,自己才能上马或上车离开。】
(年長者と会った時)馬に乗っていれば馬から下り、車に乗っていれば車から下りること。
年長者が百歩以上通り過ぎるのを待ってから、馬、或いは車に乗ってその場を立ち去ること。
長者立 幼勿坐 長者坐 命乃坐
【解説:假如长辈站着,晚辈就不可以坐下。长辈坐下以后,让你坐时,你才可以坐下。】
年長者が立っているなら、年少者は座ってはならない。
年長者が座り、座ることを許可されたら座ってもよい。
尊長前 声要低 低不聞 却非宜
【解説:在尊长面前,说话声音要低一些。但若低到尊长听不清楚的程度,那也是不适宜的。】
年長者の前で話をするときは小声ですること。
しかし声が小さくて年長者に聞こえないのもまた適切ではない。
進必趨 退必遅 問起対 視勿移
【解説:在见尊长时,要快步走上前去,告退时,要缓慢退出。长辈问话的时候,要站起来回答,眼睛看着长辈,不要东张西望。】
(年長者と会う時は)速やかに前に進み出て、退出するときはゆっくりと退出すること。
年長者の質問に対しては立ち上がって答え、よそ見をしてはならない。
事諸父 如事父 事諸兄 如事兄
【解説:对待自己的叔叔伯伯和他人的父辈时,应像对待自己的父亲一样;对待堂兄表兄和他人的兄长时,也应像对待自己的兄长一样。】
親戚の叔父と接する時は、自分の父親と同じように接すること。
親戚の兄と接する時は、自分の兄と同じように接すること。
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慎み
これは学生必修の第三課である。「謹」とは私たちの行為を慎み深くすること、放逸にしてはならないことを指す。慎みとは「お守り」のようなものである。
朝起早 夜眠遅 老易至 惜此時
朝は早く起き、夜は遅くに眠ること。
人の一生は短く老い易いものであるから、今この時を惜しまなければならない。
晨必盥 兼漱口 便溺回 輒浄手
【解説:早晨起床后,一定要先洗脸刷牙,每次大小便完后都要洗手。这种良好的卫生习惯应该在小时候就养成。】
朝起きたら必ず顔を洗い、歯を磨くこと。
大小便のあとは必ず手を洗うこと。
冠必正 紐必結 襪與履 倶緊切
【解説:帽子一定要戴端正,衣服纽扣要扣好,袜子和鞋子都要穿整齐,鞋带要系紧。】
帽子は真っ直ぐにかぶり、服の紐(ボタン)はしっかりと締める(留める)こと。
靴下と靴はきちんと履き、靴紐はしっかり結ぶこと。
置冠服 有定位 勿乱頓 致汚穢
【解説:脱下来的衣服和帽子,要放置在一个固定的地方,不能到处乱丢,以免把衣帽弄脏。】
衣服や帽子は、置き場所を定めておくこと。
失くしたり汚してはならない。
衣貴潔 不貴華 上循分 下称家
【解説:穿衣服贵在整洁大方,而不在于华丽。不但要符合自己的身份,还要和自己的家庭条件相适合。】
衣服は清潔であることが大切であり、派手さを貴ぶものではない。
分相応の服を選び、また家庭の経済状況に適していること。
対飲食 勿揀択 食適可 勿過則
【解説:对于食物,不要挑食,也不要偏食,偏食会营养不良。吃东西也要适可而止,不要过量,过量会损伤脾胃。】
食事に関しては、好き嫌いを言ったり、偏食してはならない。
適度に食べるようにし、食べ過ぎてはならない。
年方少 勿飲酒 飲酒醉 最為丑
【解説:年青的时候,千万不要喝酒。因为一旦喝醉了,就会丑态百出而丢脸。】
年少の者は酒を飲んではならない。
酒に酔えば、醜態をさらして面目を失うことになるからである。
歩従容 立端正 揖深圓 拜恭敬
【解説:走路时要不急不慢从容大方,站立时身体要端庄直立。作揖是要把身子躬下去,礼拜时要恭恭敬敬。】
歩くときはゆったりと歩き、立つときは真っ直ぐに立つこと。
お辞儀をするときは体を曲げ、慎み深くすること。
勿踐閾 勿跛倚 勿箕踞 勿搖髀
【解説:进出门时,脚不要踩到门槛上;不要用一条腿支撑身体斜靠着;蹲坐时不要叉开两腿;更不要摇晃大腿。否则,就会显得你没有教养。】
門を出入りする時は、敷居を踏んではならない。片足で体を支えて斜めに立ってはならない。
座るときは両足を開いたり揺り動かしてはならない。
緩揭簾 勿有声 寬転彎 勿触棱
【解説:进出门时,要缓慢地揭开門帘,尽量不要发出响声。走路拐弯时角度要大一些,不要碰着东西的棱角,以免造成不必要的伤害。】
門を出入りする時は、ゆっくりとカーテンを開け音を立てないこと。
道を曲がる時は大きく曲がり、角に当たらないようにすること。
執虛器 如執盈 入虛室 如有人
【解説:手里拿着空的器具,要像拿着装满东西的器具一样小心。走进没人的房间,要像进到有人的房间一样谨慎,不能乱走乱动。】
手に空の器を持つ時は、器に物が入っているかのように扱うこと。
空室に入る時は、人がいる時のように慎み深く入ること。
事勿忙 忙多錯 勿畏難 勿軽略
【解説:做事情不能太匆忙,匆忙时最容易出现差错。不要害怕困难,应该知难而进,也不要马虎草率,即使是小事,也要认真对待。】
物事は慌ただしくしてはならない。慌ただしくすると間違いが起こりやすい。
難しさを恐れてはならない。いい加減に行ってはならない。
斗鬧場 絶勿近 邪僻事 絶勿問
【解説:凡是打架嬉闹的场合,一定要远离而不去接近。凡是不正当、不合情理的事情,一定要远离而不去过问。】
争そい事や騒がしい場所に、近づいてはならない。
邪まなことや不条理なことは、聞いてはならない。
將入門 問孰存 將上堂 声必揚
【解説:准备进入别人家门时,应该先敲门,问一声有人在吗?主人允许后才能进入。将要走进厅堂时,声音要提高一些,以便让里面的人知道。】
人の家の門に入る時は、戸を敲き、人がいるかどうかを尋ねること。
建物に入る時は、必ず大きな声を出して中の人に知らせること。
人問誰 対以名 吾與我 不分明
【解説:当里面的人问是谁时,要将自己的姓名告诉对方。如果只回答“是我”,那对方就弄不清楚你是谁了。】
中の人から「どなたですか」と聞かれたら、名前をしっかり答えること。
「私です」と答えても相手には誰だか分からない。
用人物 須明求 倘不問 即為偸
【解説:想要使用别人的东西时,必须当面向人家提出请求,以便征得别人同意。假如不问一声就拿走,这就是偷盗。】
人の物を使いたい時は、はっきりと要求して同意を得ること。
人に断りなく持ち出しては泥棒になってしまう。
借人物 及時還 後有急 借不難
【解説:借别人的东西,要在约定的时间内归还,拖延时间人家以后就不相信你了。以后遇到紧急需要的时候,再借也不难了。】
人の物を借りる時は、約束の期限内に返すこと。
もしまた必要になったら、また借りれば良いのである。
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信
信用
【解説:这是学生主修的第四门课。信,是指一个人当与社会他人打交道时,在语言、行为上要做到言必行,行必果,这就是言而有信。讲信用是成功阶梯第一步。】
これは学生必修の第四課である。「信」とは社会で人と接する際に、言動において「言葉は誠実に、行動は果断にする」ことである。要するに有言実行である。信用を重んじることは成功の第一歩である。
凡出言 信為先 詐與妄 奚可焉
【解説:凡是说出的话,首先要真实不虚、讲求信用。说谎话骗人、胡言乱语都是不可以的。】
およそ口に出して言う言葉は、信用を重んじるべきである。
いい加減な事を言って人を騙してはならない。
話説多 不如少 惟其是 勿佞巧
【解説:说话多不如说话少,因为言多必有失。说的话要恰当在理、符合实际,千万不要花言巧语。否则人家只会讨厌你。】
言葉は多いより少ないに越したことはない。(言い過ぎれば過失が生じるからである)
実情に合ったことを話し、口先だけのうまい話をしてはならない。
奸巧語 穢汚詞 市井気 切戒之
【解説:虚伪狡诈、尖酸刻薄、下流肮脏的话,千万不能说。阿谀奉承等粗俗的市侩习气,都要彻底戒除掉。】
ずるくて巧みな言葉や、下品な言葉遣いをしてはならない。
市井の良くない風習は戒めなければならない。
見未真 勿軽言 知未的 勿軽伝
【解説:看到的事情没有弄能够清楚,不要随便乱说,轻易发表意见;听来的事情没有根据,不要随便乱传,以免造成不良后果。】
まだ状況を飲み込めていない時は、軽々しく意見を言ってはならない。
まだ分かっていないことを、むやみに人に伝えてはならない。
事非宜 勿軽諾 苟軽諾 進退錯
【解説:对于自己认为不妥当的事情,不能随便地答应别人。假如你轻易许诺,就会进退两难。】
妥当だと思えないことを、軽々しく承諾してはならない。
軽々しく承諾すれば、進むにしろ退くにしろ葛藤が生じるものである。
凡道字 重且舒 勿急疾 勿模糊
【解説:说话的时候,吐字要清楚、缓慢,不能讲得太快,也不能讲得含糊不清,使人家听不明白。】
話をする時は「はっきり」と「ゆっくり」と話し、
速すぎたりはっきりしない喋り方をしてはならない。
彼説長 此説短 不関己 莫閑管
【解説:东家说长,西家说短,别人的是非很难弄清楚;与自己的正经事没有关系的,不要去多管。否则,不但搅乱了别人,也有损自己的德行。】
ある人は話が長く、ある人は話が短い。
(人の善し悪しの見極めは難しいものであるから)
自分に関わりのないことに、みだりに関わってはならない。
見人善 即思齊 縦去遠 以漸躋
【解説:看到了别人的善行,就要想到自己也应该努力去做到。即他和他差距很远,只要肯努力,渐渐也能赶上他。】
人の善い行いを見たら、自分もそうするように心がけること。
自分はその人に遠く及ばないと思っても、少しずつ追いつけるものである。
見人悪 即内省 有則改 無加警
【解説:看到了别人的恶行,要立刻反省自己。如果发现自己也有,就要马上改正;如果没有,也要引起警惕,防止自己犯同样的过错。】
人の悪い行いを見たら、すぐに内省すべきである。
もし自分にも悪い要素があれば改め、なければ自分の戒めとすべきである。
唯徳学 唯才芸 不如人 当自礪
【解説:做人最要紧的是自己的道德、学问、才能和技艺,这些方面不如人家,就要不断勉励自己,尽力赶上。】
人として大切なのは道徳や学問であり、才能や技芸である。
もし人に及ばないのであれば、自分を鼓舞して励むべきである。
若衣服 若飲食 不如人 勿生戚
【解説:如果吃的、穿的不如人家,用不着忧愁悲伤。这不是什么不光彩的事,因为做人最重要的是品德的修养。】
衣服や食べているものが人に及ばないとしても、
(人として大切なのは徳と修養の深さであるから)憂うことはない。
聞過怒 聞誉楽 損友来 益友却
【解説:听到别人说自己的过错就生气,听到别人称赞恭维自己就高兴,那么,有损德行的朋友就会来与你接近,对你有益的朋友就会和你远离。】
人から自分の欠点を指摘されて怒り、人から褒められて喜ぶようなら、
徳のない友人は近づき、あなたに有益な徳のある友人は離れていくものである。
聞誉恐 聞過欣 直諒士 漸相親
【解説:听到别人赞美自己就感到惶恐不安,听到别人指出自己的过错就欢喜接受。经常这样做,那些正直诚实的人,就逐渐与你亲近起来。】
人から褒められたら不安に思い、欠点を指摘されたら喜んで受け入れる。
そのようであれば正直で誠実な人は、次第にあなたと親しくなるものである。
無心非 名為錯 有心非 名為悪
【解説:如果是无意中做了错事,这就叫“错”。如果是故意去做的,那就叫“恶”。】
知らずに過ちを犯すことを「間違い」と言い、
故意に過ちを犯すことを「悪」と言う。
過能改 帰於無 倘掩飾 増一辜
【解説:有了过错,要能勇于面对,并彻底改正过来。这样,别人就还是把他当好人看;如果不肯承认,还要极力掩饰,那就是错上加错了。】
過失を認めて改めることができれば、無に帰する(善い人だと見直される)。
過失を認めず誤魔化していれば、過失の上に過失を重ねることになる。
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分け隔てなく人を愛する
凡是人 皆須愛 天同覆 地同載
【解説:不论是什么人,我们都要互相关心、爱护和尊敬,因为我们共同生活在同一片蓝天下,同一块土地上。】
どのような人であっても、皆お互いに愛し合うべきである。
私たちは同じ天の下に、同じ大地の上に生きているからである。
行高者 名自高 人所重 非貌高
【解説:一个行为高尚的人,名声自然会高。因为人们敬重的是一个人的品行,而不是看他是否有一副好的相貌。】
徳の高い行いをする人は、自然に名声が高まるものである。
人々が重んじるのは品行であり、容貌の良し悪しではない。
才大者 望自大 人所服 非言大
【解説:一个才学丰富的人,名望自然会大。因为人们所佩服的,是有真才实学的人,而不是自吹自擂的人。】
才能豊かな人は、自然に名声が高まるものである。
人々が敬服するのは真の才能であり、自画自賛ではない。
己有能 勿自私 人所能 勿軽訾
【解説:自己有才能,不要只想着为自己谋私利,也应当做些对社会大众有益的事。别人有才能,不要心生嫉妒,随便轻视、毁谤。】
自分に才能があっても、私利私欲を貪ってはならない。
人に才能があるとしても、嫉妬や中傷をしてはならない。
勿諂富 勿驕貧 勿厭故 勿喜新
【解説:不要谄媚巴结富有的人,也不要对穷人傲慢无礼。不要厌弃过去的朋友,也不要只喜欢新结交的朋友。】
金持ちに媚びへつらったり、貧しい人に傲慢な態度をとってはならない。
古い友人に愛想をつかしたり、新しい友人ばかりを好んではならない。
人不閑 勿事撹 人不安 勿話擾
【解説:当别人正忙着没空时,不要因自己有事儿去打搅。当别人身心不安时,不要跟人家说话而去打扰他。】
人が忙しい時は、自分の用事があるからといって邪魔をしてはならない。
人の心身が不安定な時は、話しかけて混乱させてはならない。
人有短 切莫揭 人有私 切莫說
【解説:别人有短处,千万不要到处宣扬。别人有隐私,绝对不能说出去。】
人に欠点があっても、誰かに吹聴してはならない。
人に隠し事があるとしても、人に話してはならない。
道人善 即是善 人知之 愈思勉
【解説:称赞别人善行,本身就是一种美德。因为别人知道后,就会因此受到勉励而更加努力地去行善。】
人の善い行いを褒めることは、善であり美徳である。
人がそれを知れば、さらに善い行いに努めるからである。
揚人悪 即是悪 疾之甚 禍且作
【解説:宣扬别人恶性,本身就是一种恶行。如果由于过分的厌恶痛恨而一味地去宣扬,就会招来祸害。】
人の悪い行いを吹聴することは、悪である。
行き過ぎた憎悪で吹聴すれば、自分に災いをもたらすからである。
善相勧 德皆建 過不規 道両亏
【解説:朋友之间互相规过劝善,则彼此都能成就良好的德行。如果有错不能互相规劝,两个人在道德上就都会有缺陷。】
善い行いを勧め合うことは、お互いに徳行を成就させることである。
過失があるのにお互いに忠告しないのは、双方に道徳的な欠陥がある。
凡取與 貴分曉 與宜多 取宜少
【解説:拿人家东西和给人家东西,特别要分得清清楚楚。给人家的东西要多一点,拿人家的东西要少一点,这是人情来往的道理。】
人から物を受け取る時、或いは人に物を与える時はしっかりと区別すること。
人に与えるのは多くして、人からもらうのは少しにすること。
將加人 先問己 己不欲 即速已
【解説:想让别人做一件事,首先要问一问自己愿不愿意做。如果自己都不原意去做,你赶快也不要让别人去做。】
人に依頼するときは、先ず自分に問うてみて、
自分でもやりたくないと思うことであれば、人に依頼すべきではない。
恩欲報 怨欲忘 報怨短 報恩長
【解説:受人恩惠,要感恩在心、常记不忘,并时时想着报答;别人有对不起自己的事,过去就算了,不要老放在心上,应该宽大为怀,尽快把它忘掉。】
人から受けた恩には報いたいと願い、人の過失に対するわだかまりは忘れること。
怨みごとはすぐに忘れ、人の恩は長く覚えていること。
待婢僕 身貴端 雖貴端 慈而寬
【解説:对待家里的佣人,最重要的是自身品行要端正。品行端正固然重要,对人还要仁慈宽厚。】
家の使用人に対しては、自分の品行を正すことが大切である。
品行を正した上で、慈愛と寛容の心を持つこと。
勢服人 心不然 理服人 方無言
【解説:用权势去压服别人,别人就会口服而心不服。用道理去说服别人,别人才会无话可说。】
権威で人を服従させるなら、人は心の中に不満を持つものである。
道理を説いて人を承服させるなら、人は不満の声を上げないものである。
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仁徳のある人に親しむ
同是人 類不齊 流俗衆 仁者希
【解説:同样在世为人,品行高低各个不相同。跟着潮流走的普通俗人很多,而有仁德的人却很稀少。】
同じ人であっても品行の程度は異なっている。
通俗的な潮流に流れていく人は多くても、仁徳のある人は極めて稀である。
果仁者 人多畏 言不諱 色不媚
【解説:真正品行高尚的人,人们都心存敬畏。因为仁者说话时直言不讳,也不阿谀奉承。】
本当に仁徳のある人には、人々は心から敬意を表すものである。
仁徳のある人の言葉はまっすぐで、へつらうことがない。
能親仁 無限好 徳日進 過日少
【解説:能够亲近品德高尚的仁者,就会得到无限的好处。与仁者亲近,德行就会一天比一天增进,而过失就会一天比一天减少。】
仁徳の高い人と親しくすることはこの上なく素晴らしい。
仁徳が日に日に身に付き、過ちが少なくなっていくからである。
不親仁 無限害 小人進 百事壊
【解説:不亲近品德高尚的仁者,就会有无限的害处。这样一来小人就会乘机接近,很多事情都因此而不能成就。】
仁徳の高い人と親しくしないことは大きな損害である。
小人が機に乗じて近づいてくると、良いことは何もない。
『弟子規』
第一回更新2011-05-16
第一回訂正2018-04-01
余力があれば学問をすべきである
「文」とは「六芸」等その他の有益な学問を指す。上述の主要六課を修めた上で、もし時間と余力があれば、六芸等の有益な学問を学ぶべきである。
【解説:如果所学的不实践力行,一味读死书,容易养成华而不实的习性,不能成为一个真正有用的人。】
実践することなくただ学んでいても、
うわべの飾りばかりであり、有用な人物になることはできない。
但力行 不学文 任己見 昧理真
【解説:如果只晓得卖力去做,不肯读书学习,而固执于自己的见解,就不会明白道理的真假与否,这也是不对的。】
ただ実践するだけで学ばなければ、
自分の見解に固執して、道理を理解することはできない。
読書法 有三到 心眼口 信皆要
【解説:读书的方法有三到:心到、眼到、口到。即心要记,眼要看,口要读,这三者确实都非常重要。】
読書には三つの注意がある。
「心」で記憶し「眼」で見て「口」で読む、すべて重要である。
方読此 勿慕彼 此未終 彼勿起
【解説:正在读着这本书时,不要去想着那本书。这本书还未读完,不要再去读另一本书。读书要用心专一,才有成就。】
今この本を読んでいるときに、別の本を思ってはならない。
この本を読み終わっていないのに、別の本を読み始めてはならない。
寬為限 緊用功 工夫到 滯塞通
【解説:不妨把学习的期限安排得宽裕一些,但在学习时要抓紧时间。只要功夫到了,不懂的地方自然就通达了。】
学習する期間にはゆとりが必要だが、学ぶときは時を惜しんで努力すること。
学問が一定の水準に達すれば、理解できなかったことも解けてくるものである。
心有疑 随札記 就人問 求確義
【解説:读书时,如果心中有疑问,就要随时做笔记,以便向别人请教,求得准确的意义。】
学習中に疑問が出てきたら、すぐに記録すべきである。
いつでも人に教えを請うことができ、疑問を正確に把握するためである。
房室清 牆壁浄 几案潔 筆硯正
【解説:房间里要收拾整齐,墙壁要保持干净。桌子要保持清洁,笔墨纸砚等文具要摆放端正。】
部屋の中はきれいに整理し、壁は清潔を保つこと。
机はきれいにしておき、筆や硯などは真っ直ぐに置くこと。
墨磨偏 心不端 字不敬 心先病
【解説:如果您把墨磨偏了,说明心不在焉。如果字写得潦草、不工整,说明你浮躁不安,心没定下来,思想不集中。学习要专心致志。】
墨を磨るときに偏っていれば、心がまっすぐでない。
字がぞんざいであるなら、心が集中していない。
列典籍 有定処 讀看畢 還原処
【解説:存列典籍,要有固定的地方;阅读完一本书,一定要放回原处,这样便于下次查找。】
書籍の置き場所は定めておくこと。
読み終わったら、必ず元の場所に戻すこと。
雖有急 卷束齊 有缺壊 就補之
【解説:读书的人要爱惜书本。即使有急事不看书了,也要把书本整理好。发现书本有损坏,应当随即修补完整。】
たとえ忙しくても、本はきちんと整理しておくこと。
本が傷んでいれば、すぐに補修すること。
非聖書 屏勿視 蔽聡明 壊心志
【解説:无益身心健康的书刊,应该避而不看,因为书里面不正当的事理会蒙蔽人们的智慧、败坏人们的心志。应该多读圣贤的著作。】
聖賢の書でないものは(心身の健康に無益であるから)見てはならない。
人の聡明さを覆い隠し、志を傷つけるからである。
勿自暴 勿自棄 聖與賢 可馴致
【解説:说话不讲道理叫“自暴”,做事胡作非为叫“自弃”,做人绝不可这样。一个人不能不知自爱;也不能甘于堕落。圣人和贤人境界虽高,都是可以通过循序渐进的努力修学而达到的。】
自分の身を粗末にしたり、自分で自分を放棄してはならない。
聖人や賢人もまた、学びによって到達したのである。
『弟子規』
第一回更新2011-05-16
第一回訂正2018-04-01
当サイトの『弟子規』の意訳は、このテキストを参考に翻訳したものです。
(筆者が2010年に中国の書店で購入したものですが、出版社、出版年月日などは記載されていません。)
『弟子規』の各題目は『論語』の「学而」の一説に含まれています。
≪論語≫学而6
子曰、弟子入則孝、出則弟、謹而信、汎愛衆而親仁、行有余力、則以学文。
<書き下し文>
子曰く、弟子入りては則ち孝、出でては則ち弟、
慎みて信、汎(ひろ)く衆を愛して仁に親しみ、行いて余力あらば、則ち以て文を学ぶ。
<訳>
弟子(学生)は、家にあっては親や兄弟に仕え、外に出ては年長者に仕え、思慮深く行動する。
すべての人を平等に愛し、仁徳のある人に親しんで学び、余力が生じたら学問をする。
『弟子規』はこの文を、
「入則孝」「出則弟」「謹」「信」「汎愛衆」「親仁」、そして「余力学文」に分けて、
日常的な具体例をまじえて説かれたものです。(筆者)