数日後、好美は手術を受ける前日に外出許可をもらい、忍と一緒に街に出て映画を観ていた。年末という事もあり、街中も映画館も混雑していた。
映画を観終わると、しばらく雪の降る街を二人で歩いていた。
「ねぇ、忍…」
「何?」
「…もしも、アタシが手術で男になっちゃったら…、それでも、友達でいてくれる?」
「何言ってるの、当たり前でしょっ…」
忍はそう答えて好美の顔を見た。その時、好美はぼんやりと雪を見つめていた。悲痛な表情で…。
<たとえ、好美ちゃんが男になったとしても、俺の気持ちは変わらないよ…>
忍は何度も心の中でそう呟いていた…。
その日の夕方、好美が病院に戻ってくると、洋次が病室にいた。
「あれっ? なんだ、洋次、来てたんだ…」
「…あぁ…。こないだアネゴが入院したって忍から聞いて…。でも、病院に来てみたら病室にいないし、看護婦さんに訊いたら忍と一緒に外出したっていうしっ…」
洋次はプーッと膨れっ面をしながら漫画雑誌を読んで待っていたのである。
「ごめんごめん。明日手術だから、ちょっと気分転換に忍と映画館に行ってたんだ…」
好美はなるべく明るく振る舞おうとしていたが、微かに声が震えていた。
「…アネゴ?」
洋次がその微妙な変化に気付いて振り向くと、好美の背中が小刻みに震えていた。
「…ごめん、ちょっとだけ、一人にしてくれないかな…」
好美はそう言うと、白いカーテンをグッと強く握りしめた。その様子を見て、洋次は後ろから好美の肩をグッと掴み、好美の顔を見た。すると、好美は涙を流していた…。
<えっ…?>
洋次は、今まで好美が人前で泣いた表情を見せた事がなかったので、一瞬驚いたが、次の瞬間、好美の肩を自分の胸に抱き寄せた。
「…洋次…?」
「…黙ってようと思ってたんだけど、俺、アネゴのおばさんから、明日の手術がどういう内容なのか、聞いたんだ…。今日、忍の前で泣くの我慢してたんだろ…?」
洋次はそう言うと、好美を強く抱きしめた。
「洋次っ…」
好美は、張りつめていたものが切れたように、洋次の胸に顔を埋め、しばらくの間声を上げて泣いた…。
翌日の午後、モロッコから来日していた専門医が中心となって、手術を行なう事になっていた。
好美は、手術を受ける1時間前に全身麻酔をかけられた。
しばらくして麻酔が効いてきて、意識が朦朧としたまま、手術室に運ばれた。手術室の前では、美麗と祖父母が長イスに腰掛けていた…。
長時間に及ぶ手術を受けている間、好美はまた、あの「不思議な夢」を見ていた…。
いつものように、他校の不良グループを次々と倒していった後、またあの男が好美の前に現れた…。
「アンタ、一体誰なのっ…?」
好美が何度も拳を振りかざしても、蹴りを入れようとしても、男は軽々とかわしてしまう…。
やがて、好美が疲れ果てると、男は好美の両腕をグッと掴んだ。
<今日こそ、顔を見てやるっ…>
好美は、男の顔を見上げた瞬間、自分の目を疑った…。
映画を観終わると、しばらく雪の降る街を二人で歩いていた。
「ねぇ、忍…」
「何?」
「…もしも、アタシが手術で男になっちゃったら…、それでも、友達でいてくれる?」
「何言ってるの、当たり前でしょっ…」
忍はそう答えて好美の顔を見た。その時、好美はぼんやりと雪を見つめていた。悲痛な表情で…。
<たとえ、好美ちゃんが男になったとしても、俺の気持ちは変わらないよ…>
忍は何度も心の中でそう呟いていた…。
その日の夕方、好美が病院に戻ってくると、洋次が病室にいた。
「あれっ? なんだ、洋次、来てたんだ…」
「…あぁ…。こないだアネゴが入院したって忍から聞いて…。でも、病院に来てみたら病室にいないし、看護婦さんに訊いたら忍と一緒に外出したっていうしっ…」
洋次はプーッと膨れっ面をしながら漫画雑誌を読んで待っていたのである。
「ごめんごめん。明日手術だから、ちょっと気分転換に忍と映画館に行ってたんだ…」
好美はなるべく明るく振る舞おうとしていたが、微かに声が震えていた。
「…アネゴ?」
洋次がその微妙な変化に気付いて振り向くと、好美の背中が小刻みに震えていた。
「…ごめん、ちょっとだけ、一人にしてくれないかな…」
好美はそう言うと、白いカーテンをグッと強く握りしめた。その様子を見て、洋次は後ろから好美の肩をグッと掴み、好美の顔を見た。すると、好美は涙を流していた…。
<えっ…?>
洋次は、今まで好美が人前で泣いた表情を見せた事がなかったので、一瞬驚いたが、次の瞬間、好美の肩を自分の胸に抱き寄せた。
「…洋次…?」
「…黙ってようと思ってたんだけど、俺、アネゴのおばさんから、明日の手術がどういう内容なのか、聞いたんだ…。今日、忍の前で泣くの我慢してたんだろ…?」
洋次はそう言うと、好美を強く抱きしめた。
「洋次っ…」
好美は、張りつめていたものが切れたように、洋次の胸に顔を埋め、しばらくの間声を上げて泣いた…。
翌日の午後、モロッコから来日していた専門医が中心となって、手術を行なう事になっていた。
好美は、手術を受ける1時間前に全身麻酔をかけられた。
しばらくして麻酔が効いてきて、意識が朦朧としたまま、手術室に運ばれた。手術室の前では、美麗と祖父母が長イスに腰掛けていた…。
長時間に及ぶ手術を受けている間、好美はまた、あの「不思議な夢」を見ていた…。
いつものように、他校の不良グループを次々と倒していった後、またあの男が好美の前に現れた…。
「アンタ、一体誰なのっ…?」
好美が何度も拳を振りかざしても、蹴りを入れようとしても、男は軽々とかわしてしまう…。
やがて、好美が疲れ果てると、男は好美の両腕をグッと掴んだ。
<今日こそ、顔を見てやるっ…>
好美は、男の顔を見上げた瞬間、自分の目を疑った…。