「…上の姓名が植村だから、それに合わせて違和感のない名前がいいよね、やっぱり…♪ どうせだから、うんと男らしい名前にしようか♪ ねぇ、好美ちゃ…」
そう言いかけて忍が振り向くと、好美は寝息をたててぐっすり眠ってしまっていた。
「こっ…、好美ちゃん…」
忍は一瞬ムッとしたが、手術の後、日毎背が伸びるなどの急激な変化で、体が疲れやすくなっているのである。疲れきった好美の寝顔を見て、溜息をついた。
「…やれやれ…」
「まぁ、仕方ないよな…」
洋次は苦笑いしてそう言った。
しばらく忍も本を見ていたが、なかなかいい名前が思いつかなかった。気分転換に、洋次が持ってきた漫画雑誌を読み出した。
その際、サッカーを題材にした漫画のページを読み、主人公のライバルの名前を見て、忍は何かひらめいた。
<この名前、いいかもっ…♪>
忍が、その漫画を見てニヤッと笑みを浮かべたので、洋次は何気に雑誌を横目で見た。そして、忍が見ていたページに出ている主人公のライバルを見て、一抹の不安を覚えた…。
「…おい、忍…。まさか…?」
洋次が半信半疑で訊くと、忍は、嬉しそうな表情をして頷いた。
「お前な~っ! 冗談はやめとけって…!」
洋次の止めるのも聞かず、忍は好美の体を揺すると無理矢理起こした。