教育のとびら

教育の未来を提言 since 2007
presented by 福島 毅

「やる気はどこから来るのか」奈須正裕著

2009-02-08 | 番組、記事、書籍コメント
やる気について心理学の立場から書かれたジュニア向けの本です

授業を担当して思うのは、どうしたら生徒たちはやる気になるのかということです。
興味を引くような教材・教具を使うといったレベルの内容ではなく、日常的、恒常的に興味を持って学習をするような習慣はどのようにしたら身に着くかという次元の話です。

この本の第一章に書かれていた話題は、「無気力は学習される」というショッキングなものでした。セリグマンの学習性無力感の実験の話がありました。犬をたたせておいて前足に軽い電気ショックをする。はじめは足をばたつかせた犬も、さまざまな行動をしても電気ショックから避けられないと思うといっさいの行動を放棄しただ電気ショックに耐えそれが過ぎるのを待つようになる。次に犬を別の実験箱に入れ、その実験箱は仕切り版で2部屋に分かれている。仕切り版を飛び越して隣の部屋に移れば電気ショックから解放される。しかし、ひとたび無気力になってしまった犬はそう簡単にやる気にはならないという結果だったそうです。

人間が全く犬と同様ということはありませんが、努力を繰り返しても結果が出ないとなると小さな努力さえしなくなるのではないか? また、よい結果が出ない言い訳として、わざと努力しない。努力しているのにさえない結果しか残せないという恥をさらすよりも、「自分は勉強しなかったからできなかったんだよ」という言い訳をすることで自己防衛するのではないかと。

またこの本には、近接目標をたてる戦略の大切さが書かれていました。単に気合いでがんばるということではなかなか大きな目標(遠隔目標)は達成されない。そこまでの道のりが長ければ続かないというわけです。近接目標をたてて実行することは、スモールステップ式の学習が成果があがることと関係していると思いました。心理学からのアプローチと多段階のスモールステップ学習がうまくリンクしている思ったわけです。

となると、近接目標をうまく立案する力やそれを着実に行う実行力、実行することで小さな達成感や成果を得て自信を深めていくことが大切という当たり前の結論にまた行きつくわけです。 単なるスローガンだけではなく、したたかな計画と実行力が気力をも生んでいくということなのでしょう。
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