枇杷 の例句
いつも夫病む頃枇杷の熟るる頃 岡本眸
かの泥の意のままに枇杷滴るや 永田耕衣
かへり梅雨手にさづけられ枇杷三顆 石橋秀野
けふ毎に枇杷も鈴ふるいさめかな 上島鬼貫
すゞしさにいくらも喰ふや枇杷の玉 夏目成美
どの家にも枇杷彩なせり城下町 松崎鉄之介
なつかしさ稚く成し枇杷の味 土芳
ひとり旅枇杷たべて手を濡らしをり 中村汀女
ふるさとの枇杷は固しやつばめ来る 鈴木真砂女 卯浪
わがもいで愛づる初枇杷葉敷けり 杉田久女
わがもいで贈る初枇杷葉敷けり 杉田久女
わが十指蟻を殺して枇杷剥いて 岡本眸
わが齢の忽と過ぎゆく枇杷の種 古舘曹人 樹下石上
マリア観音面輪愁ひて枇杷青し 水原秋櫻子 残鐘
一人居のともしび色の枇杷食べて 細見綾子
一日平安、ふところに枇杷の種がある 荻原井泉水
一盆に枇杷かく盛れば~ 高野素十
与話情浮名横櫛枇杷は実に 松崎鉄之介
中国蘇州庭に小粒の枇杷熟れて(懐古) 細見綾子
人が来たよな枇杷の葉のおちるだけ 種田山頭火 草木塔
伊勢は風棲める国なり枇杷青く 飯島晴子
切支丹坂の枇杷の実熟れゐたる 細見綾子
初枇杷や女らみんな海が好き 燕雀 星野麥丘人
卓上に枇杷五六粒夜の集ひ 細見綾子
口中にふくらむばかり枇杷の種 右城暮石 散歩圏
古人清談せし枇杷園の枇杷黄ばみ 大野林火 月魄集 昭和五十五年
塵労の夜や錆いろに枇杷の汁 岡本眸
墓裏のいろづく枇杷に田が濁る 松村蒼石 雪
大南風にもまるゝ枇杷が葉をこぼす 清崎敏郎
天に黄の枇杷や初老の阿弥陀仏 古舘曹人 能登の蛙
天地梅雨ともしび色の枇杷抱へ 野澤節子 未明音
太き柄を臍の緒大き枇杷の実よ 百合山羽公 寒雁
妻あらぬ一日の枇杷の疵古し 下村槐太 光背
妻在らぬ一日の枇杷の疵古し 下村槐太 天涯
子が寝てのち少しすつぱき夜の枇杷 鷹羽狩行
寐てまつや梅田枇杷麦郭公 丈草
山砂を採る山枇杷の青き下 松崎鉄之介
島の枇杷雀いづこへ失せたるや 雨滴集 星野麥丘人
庭の枇杷ゑがける如し眺むべし 山口青邨
庵主の茶碗のよこの枇杷二つ 星野立子
忌の枇杷のつゆあまりては指濡らす 野澤節子 未明音
怒濤ひねもす 枇杷うつうつと袋被る 伊丹三樹彦
患者らはみなのつぽなり枇杷をもぐ 石田波郷
房総の色たしかなる枇杷貰ふ 細見綾子
房総の雨の旅より枇杷もたらす 細見綾子
新緑や白猫のゐる枇杷の下 渡邊白泉
日々平穏枇杷は色づくこといそぎ 鈴木真砂女 夏帯
時鳥啼音やひよいと枇杷の核 蘆文
時鳥枇杷のことし葉見ゆるうち 万子
月の家枇杷ここまでは提げてきた 赤尾兜子 蛇
木の上にひとり枇杷くふ童かな 正岡子規 枇杷
村の墓枇杷の古葉に埋もれつゝ 清崎敏郎
村雨の露やまだ干ぬ盆の枇杷 東皐
枇杷いまだ青きに雨のいたく降る 大野林火 海門 昭和十二年
枇杷くふやこみあふ船に立ちとほし 下村槐太 光背
枇杷すするしづかにあまき匂かな 下村槐太 天涯
枇杷すする大いなる貌よ阿波に入る 角川源義
枇杷すする灯台長 髭を生やし給え 伊丹三樹彦
枇杷たべて再び火口覗かざる 津田清子 礼拝
枇杷の子のぽぽぽとともるほの曇り 平井照敏 天上大風
枇杷の実に蟻のたかりや盆の上 正岡子規 枇杷
枇杷の実のイヱズスに化す一閃よ 平井照敏 天上大風
枇杷の実の天を仰ぎて太りけり 上村占魚 鮎
枇杷の実の幼なさ見せて昼の雨 松村蒼石 雁
枇杷の実の肉うすくして世をなげき 山口青邨
枇杷の実やよきことはありあまるべし 平井照敏
枇杷の実を陶のごとくに寒山寺 鷹羽狩行
枇杷の實の僅に青き氷柱哉 正岡子規 氷柱
枇杷の柔毛わが寝るときの平安に 森澄雄
枇杷の汁ひぢを伝へり昔より 細見綾子
枇杷の種ごとんと落す美しき人 山口青邨
枇杷の種すべらし教師中年たり 橋閒石 朱明
枇杷の種つるりと二男一女かな 橋閒石 微光
枇杷の種コップの中にコトンと落す 細見綾子
枇杷の種堅しや女等も酔ひて 右城暮石 句集外 昭和二十八年
枇杷の種子しばらくは手に乗せしまま 佐藤鬼房
枇杷の種捨てるまじくと子の言へり 細見綾子
枇杷の種硝子の皿にならべたり 細見綾子 虹立つ
枇杷の種赤く吐き出す基地の階 秋元不死男
枇杷の葉のなを慥也初霞 斜嶺
枇杷の葉は市に濡れけり五月雨 沾徳 其便
枇杷の葉やとれば角なき蝸牛 其角
枇杷の黄を旅に加ふる雨ながら 古舘曹人 能登の蛙
枇杷みのれ小さないくつもの太陽に 平井照敏
枇杷むけば亡き人の来て一つ剥く 岡本眸
枇杷もぎし棹青蜘蛛のつたひたる 細見綾子
枇杷もやがて熟るるしづかな村を過ぐ 山口青邨
枇杷を*もぐ笠を阿弥陀に雨の中 福田蓼汀 山火
枇杷を攝る手の艶きて尼僧かな 飯田蛇笏 山響集
枇杷を食ぶ完き閑を得んとなし 中村汀女
枇杷を食むぼろりぼろりと種子二つ 星野立子
枇杷啜る双手に血色戻りけり 石田波郷
枇杷啜る妻を見てをり共に生きん 石田波郷
枇杷啜る片手の一つ日にかざし 加藤秋邨
枇杷大葉籠の実蔽ふうらおもて 飯田蛇笏 山響集
枇杷実る天の電気屋はたらいて 平井照敏
枇杷新葉ま新しくてうち曇る 細見綾子
枇杷新葉ま新らしくてうち曇る 細見綾子 桃は八重
枇杷新葉立つ見る今も忘れねど 細見綾子 桃は八重
枇杷熟るる人に会はねば午後長し 細見綾子
枇杷熟るゝ頃やまもゝの熟るゝ頃 高野素十
枇杷熟れし便り夕焼の中に読む 大野林火 冬雁 昭和二十一年
枇杷熟れて持病喘息おこりけり 松崎鉄之介
枇杷熟れて釣仙すでに亡かりけり 亭午 星野麥丘人
枇杷甘し満水の池ところどころ 永田耕衣
枇杷色といふ不思議なる実のありぬ 細見綾子
枇杷苦し四方八方水禍にて 百合山羽公 樂土
枇杷買ひて夜の深さに枇杷匂ふ 中村汀女
枇杷買ふて舷梯のぼる夜の雨 橋本多佳子
枇杷青き階登りきてピサロ観る 伊丹三樹彦
枇杷青く陶房の坂綺羅つくす 角川源義
枇杷食ふやこみあふ船に立ちとほし 下村槐太 天涯
枇杷食べて雀の死にし話する 細見綾子
枇杷黄なり町家に交る門徒寺 三宅嘯山
梅は落枇杷やあやめの初仕事 野紅
梅雨の中畠の枇杷の売られけり 右城暮石 句集外 大正十五年
檜山淵と別れて下る枇杷に倦む 角川源義
水禽の声やはらかし枇杷いとけなし 飯田龍太
水郷の夜は更けにけり卓の枇杷 清崎敏郎
江の電にすれすれ枇杷の熟れにけり 清崎敏郎
洋傘は腕に掛くべし枇杷買ふべし 岡本眸
渦潮や枇杷のわかき実風つどふ 藤田湘子 途上
満目の白きは枇杷の実を包む 山口誓子
潮風にもまれて熟れし枇杷ならむ 細見綾子
燦々とをとめ樹上に枇杷すする 橋本多佳子
狐火の如く枇杷熟れ芳一像 松崎鉄之介
異邦人枇杷食べて種いぶかしむ(スイス人学生) 細見綾子
病院の出窓々々の枇杷の雨 高浜年尾
目の如き豊粒の枇杷盲女の手に 中村草田男
盲女の垂り手母買ひ渡すわた毛の枇杷 中村草田男
盲女枇杷受け睫毛しづかに指わななく 中村草田男
磔像に 枇杷の無駄生り うつうつと 伊丹三樹彦
磯の枇杷たわたわとあり青一髪 赤尾兜子 玄玄
納屋の前枇杷の厚葉に夏日こもる 大野林火 青水輪 昭和二十五年
縁のなき貧乏畳枇杷すゝる 清崎敏郎
群燕に紀伊路の田居は枇杷熟るる 飯田蛇笏 山響集
脚立移して 枇杷がある 灯台がある 伊丹三樹彦
苺畑目覚め枇杷畑まだねむる 大野林火 青水輪 昭和二十三年
蜜着の枇杷の皮むく二人の夜 鷹羽狩行
袋掛せる枇杷一と木修道院 高浜年尾
製材の音絶え間なく枇杷黄ばむ 右城暮石 虻峠
転宅や紅らみそめし枝の枇杷 村山故郷
野育ちや小枇杷の出臍緑帯び 香西照雄 素心
金印の出土の島や枇杷たわわ 鷹羽狩行
金色のコーランの文字枇杷熟るる 有馬朗人 知命
鈴の音にさあらば枇杷をまいらせん 支考
鎧扉ひらく青きあぢさゐ青き枇杷 橋本多佳子
長き葉のかげに幾日枇杷生毛 細見綾子
長崎の枇杷食うべをり雨しとど 細見綾子
降り歇まぬ雨雲低し枇杷熟れる 杉田久女
雨しぶきつつ枇杷黄ばむ白昼を 大野林火 青水輪 昭和二十五年
雨の夜の枇杷食べてまた別るるよ(清川とみ子さんに) 細見綾子
雨の日を灯ともし色の枇杷貰ふ 細見綾子
青峡の中に一樹の枇杷の鈴 富安風生
青枇杷の枝伸したる昼寝島 飯島晴子
青枇杷や九十九折なす島の道 石川桂郎 含羞
青枇杷を大事にひとつ夢の端 飯島晴子
非情にも毛深き枇杷の若葉かな 上島鬼貫
鴬も老ぬさぞかし梅田枇杷 鈴木道彦
鵯か知らずすい~鳴きて枇杷新葉 細見綾子 桃は八重
黒衣より掌を出し神父枇杷をもぐ 津田清子 礼拝