野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

どこでもみかけるが、イモカタバミに負けているムラサキカタバミ

2019年06月13日 07時27分38秒 | 
すっかりイモカタバミに押されているムラサキカタバミ。
それでもムラサキとは対照的に帰化植物として要注意生物に指定されている。
ごく普通の野草としてどこでもみかけるが、この写真は調布の野草園のもの。
(2019-05 東京都 調布野草園)





ムラサキカタバミ
ムラサキカタバミ(紫片喰、紫酢漿草、学名 Oxalis debilis Kunth subsp. corymbosa (DC.) O.Bolos et Vigo, 1990)は、カタバミ科カタバミ属の植物。

南アメリカ原産であるが、江戸時代末期に観賞用として導入されて以降、日本に広く帰化している。環境省により要注意外来生物に指定されている。他にも、北アメリカ、オーストラリア、熱帯アジアなどに帰化している。

特徴
背丈は約30cm、地下に鱗茎があり、地上には葉と花柄だけを伸ばす。葉は三出複葉、小葉はハート形、裏面の基部に黄色い腺点がある。地下の鱗茎の下部から太いやや透明がかった牽引根を出す。この牽引根と鱗茎の間に木子(微細な小球根)をびっしりと付け非常に旺盛な繁殖をする。牽引根が夏場に縮み、木子を広げていく。日本では夏場になるとサビ病が多発してその後夏場は休眠する場合が多い。

花は主に春~初夏に咲き、葉の間から伸び出した花柄は葉を越えて伸び、先端に数輪を散形花序につける。花は青みのある濃い桃色で花筒部奥は白く抜け、花の中心部に向けて緑色の筋が入る。植物体の栄養状態や環境に起因して花色が異なる場合もあるが、同じ環境で育ててみると殆どが同じ花色になってしまう。日本では本種は種子を付けない。繁殖は牽引根と鱗茎の間に無数に生じる木子で行われる。

利害
元来は観賞用に栽培されたものであるが、現在では庭園から畑地、芝地を中心に広く見られる。土の中の鱗茎を取り尽くすのが非常に難しいので、駆除の困難な雑草である。草の丈が低く柔らかいため雑草の刈り取りから殆ど無視される対象でもある。開花が始まった頃が木子の出来るピークなので、その時期に土を深く掘り抜き捨てるしかない。なお、体内に蓚酸を多く含む関係上、用土がアルカリ化すると勢いが弱まる。

花は独特の色合いで美しいが、雑草のため市販されることはほとんどない。しかし、葉にウイルス性の斑入りが入る系統が存在し、この系統のみ流通している。但し、このウイルス斑はやや不安定で、草の状態によっては消えてしまうこともある。

古代から日本人に愛されてきたムラサキ

2019年06月13日 05時39分11秒 | 
調布の野草園で大事にされていたムラサキ。
古代から紫の色素をとるために愛用され
万葉集にも歌われている。
額田王の「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」は有名だ。
古来、日本人に愛されてきたムラサキの花、なんとか生き延びてほしい。
花としては形がホタルカズラにそっくりである。
シンプルで美しい花だ。

(2019-05 東京都 調布野草園)



ムラサキ
ムラサキ(紫、Lithospermum erythrorhizon)はムラサキ科の植物の一種。多年草で、初夏から夏にかけて白い花を咲かせる。栽培用には、同属異種のセイヨウムラサキ(L. officinale L.)が利用されることが多い。

利用
生薬
根は暗紫色で、生薬「シコン」(紫根)である。この生薬は日本薬局方に収録されており、抗炎症作用、創傷治癒の促進作用、殺菌作用などがあり、紫雲膏などの漢方方剤に外用薬として配合される。主要成分はナフトキノン誘導体のシコニン(shikonin)、アセチルシコニン、イソブチルシコニンなどであり、最近では、日本でも抗炎症薬として、口内炎・舌炎の治療に使用される。

染料
古くから紫色の染料として用いられてきた。色を染めるには、乾燥した紫根を粉にし、微温湯で抽出して灰汁で媒染して染色する。江戸時代には染められた絹を鉢巻にして、病気平癒の為に頭に巻く風習が生まれた(病鉢巻)。

口紅
染料の成分および薬用成分はナフトキノン誘導体のシコニン (Shikonin) で、最近ではバイオテクノロジーにより大量生産されて口紅などに用いられている。

絶滅危惧種
万葉集にもその名が出るほど歴史は古く、奈良時代から江戸時代末期まで栽培が行われてきた。しかし、明治時代以降は合成染料の登場により商業的価値を失い、ムラサキ自体も絶滅危惧種レッドデータブックIBにランクされるまでになってしまった。そのため、現在も熱心な愛好家たちが栽培を試みているが、種の発芽率が低い上、ウイルスなどに弱いため、株を増やすのは困難である。このため、現在では中国から近縁種(下記)が輸入され、ムラサキとして流通しているが、ムラサキとの交雑により純正種を脅かすことになっている。


たのしい万葉集: 紫草(むらさき)を詠んだ歌

0020: あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る

0021: 紫のにほへる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋ひめやも

0395: 託馬野に生ふる紫草衣に染めいまだ着ずして色に出でにけり

1392: 紫の名高の浦の真砂土袖のみ触れて寝ずかなりなむ

1825: 紫草の根延ふ横野の春野には君を懸けつつ鴬鳴くも

2974: 紫の帯の結びも解きもみずもとなや妹に恋ひわたりなむ

3099: 紫草を草と別く別く伏す鹿の野は異にして心は同じ

3101: 紫は灰さすものぞ海石榴市の八十の街に逢へる子や誰れ

3500: 紫草は根をかも終ふる人の子のうら愛しけを寝を終へなくに

3870: 紫の粉潟の海に潜く鳥玉潜き出ば我が玉にせむ