<ほんまち町屋館からの眺望>
8月15日:暑い日の小諸ネコ(3):北国街道を歩く
2009年8月15日(土)(つづき)
<小諸宿の名残り>
■小諸宿本陣主屋
まだ,法事には時間がある.
私は,観光案内所で頂いた小諸市街地図を片手に,小一時間,小諸市内を散策することにした.
小諸は,私が生まれてから高等学校を卒業するまで,住んでいた懐かしい古里である.残念ながら大学生になったときから,現在に至るまで,しばしば帰郷はするものの,故郷で落ち着いて,長い時間を過ごしたことがない.少し時間があると,懐古園は訪れるものの,市街地をシゲシゲと観光したことがない.そこで,今回は懐古園は後回しにして,長いこと訪れたことのない所を重点的に散策することにする.
まず最初に,小諸宿本陣主屋を訪れる.
実は,長いこと小諸市民だったのに,私は,こんな所に小諸宿主屋があるとは,迂闊にも知らなかった.多分,宿場などには,全く興味がなかったので,知ろうともしなかったのだろう.知らないとは全く恥ずかしい.
「本陣主屋」と大きな字で書いてある看板に沿って,夏草が繁茂する路地を進む.すると,私の背の丈よりも高い夏草の間から白い芯壁造りの立派な建物が見える.辺りには,全く人気がない.
何となくうらぶれた感じがもの悲しい.
<小諸宿本陣主屋>
■歴史資料館
小諸は牧野氏の城下町であるとともに,北国街道の宿場町でもあった.小諸市歴史資料館の資料によると,1611年(慶長16年)に北国街道に宿駅伝馬制が敷かれて,小諸宿が設けられたという.
この小諸宿本陣主屋は,木造切妻造で,18世紀末から19世紀初めに建築されたと推定され,国指定重要文化財だという.
建物の中は歴史資料館として使われているようだが,「当分の間休館」という看板が立っていて中を見ることは出来ない.
<大手門公園>
■大手門公園に入る
再び,元の観光案内所前に戻る.
観光案内所と道を挟んで反対側に,大手門公園がある.迂闊なことに,この公園が何時出来たのか,私は全く知らなかった.小諸駅から懐古園へは,帰郷するごとに,殆ど毎回往復しているのに,この公園があることに気が付かなかった.それに,この公園が出来る前は,どんな様子だったかも全く思い出せない.
■くらしかる浪漫館
今,目の前に,かなり広い公園が広がっている.小諸は,元々,浅間山麓に位置する坂の町である.この公園も,私が立っているところから見ると,上り坂の斜面に作られている.
雑草がやたらに伸びている公園内の道を進むと.土蔵のような白壁の建物が建っている.何の建物だろうかといぶかりながら,建物の正面に廻ると,「くらしかる浪漫館」という看板が掛かっている.ここにも「当分の間休館」という掲示がある.
何となくうらぶれた感じがして悲しい.
■威風堂々の大手門
くらしかる浪漫館を通り過ぎると,目の前に大きくて立派な門が建っている.小諸城大手門である.門の近くにある案内文によると.この門は1612年(慶長17年)に建立されたようである.
門の前で,ボランティアの中年女性が,愛想よく説明をしている.私の他に,2~3人の観光客が門の前にいる.
恥ずかしながら,長い間,小諸市民だったのに,私はこんなに立派な門があるとは知らなかった.ボランティアの女性に,
「・・・私も小諸で育った人間ですが,ここにこんなに立派な門があるとは知りませんでした.昔からあったんですか?」
と伺う.
「ここは,最近まで個人のお屋敷の中だったので,公表されていませんでした.小諸に住んで居られる方でも,この門のことを知らない方が沢山居られますよ・・」
とのことである.
「・・大手門の脇の石垣は,昔のものですか・・・?」
「昔のものです.ただ,崩れてしまったところもあったので,積み直してふくげんしたところもあります」
ついでに,
「公園の入口にある『くらしかる浪漫館』は,中を拝見することは出来ないんですか・・」
と伺ってみる.
「・・小諸市教育委員会に申し込めば,見せてくれますよ.鍵を開けてくれますよ.」
大手門の2階は展示場になっている.石垣の間の石段を登って,展示場を一回りする.一見したところ,目を引くようなものはあまりなさそうに思えるが,それは私が無知なため,見る目がないからだろう.
<立派な大手門:みどりの上着の女性が説明してくれる>
<大手門の説明文>
<北国街道寸景>
■ほんまち遊子公園
大手門を潜って,浄斎坂に出る.坂を登り国道141号線を渡る.そして,本町交差点から北国街道に入る.交差点西側の角に「ほんまち遊子公園」という小さな公園が出来ている.私は,この公園も知らない.確か,この辺りには本屋があったような気がするが,あまり定かではない.いつの間にか,私は,小諸にとって,すっかりよそ者になってしまったようである.
ほんまち遊子公園の隣は駐車場になっている.駐車場からは浅間連峰の見晴らしが良さそうだが,あいにく,今日は,浅間山は雲の中である.
■ほんまち町屋館
北国街道本町を西南西に進む.ほんの数分で「ほんまち町屋館」に到着する.
このような立派な観光スポットができていたとは・・・ここでも,私はビックリする.
とりあえず中を拝見しようと思う.どうやら,観光客は誰も居ない.何となく入りずらいが,受付の男性に会釈して,おそるおそる中に入る.中は昔ながらの商家の風情が残っている.
高い天井,少し薄暗いがヒンヤリとした冷気,しんなりとした冷気が淀む土間.土間の片隅で,2間ばかりのショーケースが置いてある.中にはリーフレット,土産品がさらりと並んでいる.ショーケースの奥に管理人の男性が,何も言わずに,ボンヤリと私の方を眺めている.
<ほんまち町屋館の玄関>
■奥が深い町屋造り
町屋の造りは,道路に面した間口より,奥の方がずっと深い.あまりゆっくりする時間がないので,奥に通じる土間を,左右の陳列物を,チラチラ見ながら,先へ進む.
途中に大きな味噌樽(かな?)が置いてある.土間の反対側には8角形の石の囲みがある.
■浅間連峰を望む
建家を抜けると,広場になっている.広場の片隅には,あずま屋が建っている.素晴らしい眺めである.
白い椅子に座ると,浅間連峰の山々が良く見える.
9月に,小諸在住の弟と遺書に,浅間山へ登ることにしているが,こうして,目の前の浅間山を見ていると,もっと早く登りたくなる.
<ほんまち町屋館から望む浅間連峰>
<島崎藤村縁の地>
■藤村プロムナード
ほんまち町屋館を出て,北国街道本町を,ほんの少し西へ進むと,藤村プロムナードと交差する.ここで北国街道を離れ,右折して藤村プロムナードを歩く.静かな路地である.
<人影がない藤村プロムナード>
■藤村の使用した井戸
少し進むと,島崎藤村が使用したと言われる井戸が残っている.
井戸の周りは,小さな公園風に整備されている.この辺りを散策するのは,もう何十年振りかのことである.毎年数回は小諸を訪れているのに・・
■藤村旧栖地跡
井戸から枝道に入る.
直ぐに,藤村旧栖跡地の前に到着する.当時の面影は全く残っていないが,ここに藤村が住んでいたんだなと想像をたくましくする.
多分,ここで有名な『千曲川のスケッチ』も執筆したのだろう.
<再び北国街道へ>
■相生町
藤村プロムナードから相生町に出る.相生町は小諸で一番賑やかな商店街である.ご多分に漏れずシャッターを下ろしている商店も少なからずあるが,しゃれた店が建ち並んでいる.
相生町の坂道を登って,荒町一丁目交差点で,再び北国街道に戻る.この辺りには,上田中学/高校の同級生の家がある.彼はすでに他界してしまった.また,母に連れられて,良く文房具を買いに訪れた文房具店は,すでに廃業していて,どの辺りに店があったかも,もう定かではない.
■光岳寺
時間があれば,北国街道をもっと東へ進んで,与良町にある高浜虚子記念館を訪れてみたかったが,残念ながら今回は省略する.与良町には画材屋があった.今は,この店がどうなっているか知るよしもない.
また,昔,浅間登山をするときには,赤坂との交差点近くにあった雑貨店で,わらじ2足と,雨よけの油紙を購入していた.その店あたりも訪れてみたいが,時間がない.
仕方なく,荒町1丁目の交差点を左折して,光岳寺を詣でる.
この辺りは,「えびす講」になると,とても賑やかだったところである.子どもの頃の印象では,光岳寺は素晴らしく大きくて立派なお寺だったように記憶しているが,半世紀の時を経て,再び訪れてみると,とても静かで落ち着いた寺なので驚く.
私には,この寺の故事来歴は全く分からない.
<祇園坂を下る>
■健速神社
そろそろ,法事の会場である栃木へ向かわなければならない.
私はうろ覚えの道順を辿って,本町から右折して,祇園坂を下る.懐かしい.
途中,数十段の石段を登って,健速神社を詣でる.神社の大木の下で,腰を下ろして,5分ほど休憩を取る.
ここの境内からは,浅間連峰の広大な裾野が,重野,田中方面まで広がっている.
涼しい風が吹き抜ける.
■実大寺
神社の境内で一休みした後,谷間の民家の間を通じる狭い道を,うろ覚えの記憶を辿りながら西へ向かう.
途中,石段を登って実大寺を詣でる.観光の寺ではないので,何の説明書きもないし,故事来歴も分からない.ただ独特の字体の石碑から日蓮宗の寺だということだけは分かる.境内には人影が全くない.
私は,栃木へ向かって,歩き出す.
(つづく)
「関東・上信越の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f899a8cce88f0fdea50e497a6a029d47
「関東・上信越の山旅」の次回の記事
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