<営業部長はとても元気>
春が来た丹沢:塔ノ岳
(第17回)
(単独山行)
2008年4月5日(土) 晴れ
■小田急で大倉へ
何時ものように,4時過ぎに起床する。今日は天気が良さそうである。私は登山の七つ道具が入りっぱなしになっているリュックを背負って,5時10分に家を出る。
今日も良い天気である。この頃は日が伸びて,5時頃にはもう十分に明るくなり始めているし,まだ少々寒いとはいえ,早朝に出掛けるのが随分楽になった。
藤沢からナントカフリーパスを使って,相模原乗換で渋沢へ向かう。
渋沢7時16分発大倉行のバスに乗車する。今日は土曜日。バスは登山客で一杯である。登山客の大半は中高年の男性である。しかも,私を含めて,圧倒的に単独山行が多い。
■混雑するバス
7時30分に大倉着。休日には,バスの本数が多いらしくて,前のバスで到着した登山客が,まだ沢山居る。
私は,リュックの中から,簡易スパッツを取りだして装着する。続いて軽くストレッチをする。陽気が暖かいためかも知れないが,今日は身体が案外に軽くて,どうやら調子が良さそうである。気温が少々高そうなので,ダクロンのTシャツ一枚になる。
大倉からの歩き出しは,何時もより10分ほど遅れて,7時48分である。
■大倉を出発
大倉から登山口までの道路は,晴天が続いたためか良く乾いている。登山道に入ってからも,道路に適当な湿り気があって,とても歩きやすい。今日は,ガイドのサンダー氏に指摘されている歩行法を忠実に守りながら,マイペースで登ることを念頭に置いて登ることにする。
サンダーさんから指摘されている歩行法は,
1.上体を起こしたまま,足の膝を少し曲げる(少し中腰になる),
2.両足の間隔を肩幅程度に開く,
3.重心を少し前倒しにする,
の3点である。勿論,この他に歩幅を小さく,後ろ足で蹴らない,一歩一歩確かめながら歩くなどの一般的な注意事項は遵守する。また,流れ落ちるような汗をかくほど歩行速度を早めない,腹式呼吸をする,こまめに水分を取る等々。
<大倉尾根を行く登山者の列>
■見晴茶屋とキツツキ
8時07分に観音茶屋を通過する。沢山の登山客が数珠繋ぎになっている。今日の私は,まあまあの体調なので,道幅が広くなっている場所で,少しずつ追い抜かせて貰う。
8時10分に大倉高原の家への分岐に差し掛かる。私の少し前方に見覚えのある帽子を被った男性が登っている。ご常連のNさんである。私は,Nさんの後から,
「Nさん,こんにちは,お久しぶりです・・・」
と挨拶する。そして,一足先に行かせて貰う。
8時21分に見晴茶屋を通過する。そして,大倉尾根の難所,長い階段の急坂にさしかかる。前方には,私より1本先のバスで来たと思われる登山客が数珠繋ぎになっている。この坂で,何人かの登山客を追い抜いたが,逆に50才代の男性に追い抜かれる。
暫く登り続けると,目の前に,何となく見覚えのある女性が2人,喘ぎながら登っているのが見えてくる。近付いてみると,山旅スクール6期の女性,MさんとHさんである。一瞬,彼女たちと一緒に登ろうかと迷った。でも,もともと別々に登ってきたのだから,これから先も別々の方が良かろうと思って,
「おや・・・コンニチハ。今日は一人で先に行かせて貰います・・・」
と挨拶をして追い抜く。
「先に尊仏山荘に行ってます・・30分ぐらいは山荘で待っていますよ。」
8時34分に一本松を通過する。森の中からキツツキが「ダダダダ・・・」と木を打つ音が聞こえてくる。一本松を過ぎると,なだらかな尾根になる。もともとトッブギヤー型の私は,この場所で,歩行速度を速める。幸いなことに,この辺りの道幅はかなり広いので,他の人に気兼ねすることもなく,自分の速度で歩くことができる。
■また男性に追い越される
再び少し急な坂道になる。この坂道を登りきって,8時47分に,小草平に到着する。多少霞が掛かっているものの,大きな杉の木の間から真っ白な富士山が良く見える。
ここからガレた急坂が始まる。私は何とか安定した速度で登り続ける。ゴロゴロとした石の間を縫うようにして登っていると,また,後から来た60才代の男性に追い抜かれる。男性は追い抜きざまに,
「急な坂は辛いですね・・・」
と私に話しかける。私は,
「それにしても,早いですね・・・その調子だと山頂まで2時間ぐらいですか・・」
と伺う。
「そうね,大体そんなものだね・・でも,雪があると2時間15分ぐらい掛かることもあるよ・・・」
と答えながら,私を追い抜いていく。凄い人がいるものだと感心する。
■岡山の団体
やがて堀山付近の尾根道に入る。富士山が良く見えている。先ほど私を追い抜いた男性が,登山道から少し離れて,富士山を眺めている。その間に,先ほど追い抜かれた男性をもう一度追い抜いて先を急ぐ。堀山を通過すると,やや狭い尾根道になる。すると,前方に50人ほどの大きな団体が,超ユックリのペースで登っている。私は追い越している間に,
「どちらから,お出でですか?」
と伺ってみる。この団体は,岡山からわざわざ丹沢を訪れたようである。
9時丁度に堀山の家を通過する。ここから長い坂道が続く。案外,調子よく登り続ける。
<今日の萱場平:まあまあ乾燥している>
■三角髭のご常連
9時11分に戸沢分岐を通過する。二人の男性に追い抜かれたものの,今日の私の体調はなかなか良い。当初思っていたよりは,良いペースで登っているようである。分岐の直ぐ上の萱場平は,この前来たときとは比較にならないほど,良く乾いている。例によって定点観測用に萱場平の写真を一枚撮る。ベンチでは,沢山の人が休憩を取っている。
さらに登り坂が続く。花立山荘手前の長い上り階段道を,沢山の登山者が喘ぎながら登っている。私は何人かの登山者に,挨拶をしながら,先に登らせて貰う・・・が,ここでも60才代と思われる男性に追い抜かれる。さらに,先ほど抜き返した60才代の男性に再び追い抜かれる。
花立山荘まで後,30メートルぐらいの地点で,ご常連の三角髭の紳士(以下三角紳士と略す)が下山してくる。何時もなら,金冷やし手前のコル辺りで出会う紳士である。私は挨拶した後,
「あれ・・随分早いですね。今日は2時間を切りましたね・・・」
と質問する。すると三角紳士は,
「ええ,今日は一寸頑張って,まあ,そこそこ,切りましたよ・・」
とニッコリする。全く凄い人である。
<塔ノ岳山頂からの富士山>
■塔ノ岳山頂
9時34分に花立山荘を通過する。山荘直前で私を追い抜いた紳士は,もう50メートルほど先の坂道を脱兎のような勢いで登っている。山荘前のベンチには,沢山の登山客が休憩を取っている。ベンチの向こうには,春霞にぼんやりの富士山が見えている。
つい先日登ったときには,日陰にまだ残雪が見えたが,今日はもうすっかり融けている。坂を登ってコルの木道を通過する。この辺りから富士山や南アルプスがとても良く見えている。前方には,東側の斜面に残雪が残る塔ノ岳が聳えている。
9時50分,金冷シを通過する。金冷シの直ぐ上の平地は,融雪でひどい泥んこになっている。この泥んこを過ぎると,残雪の階段道になる。しかし,アイゼンがなくても,十分安全に歩くことができる。その後も泥んこ道と,残雪道が交互に現れる。
10時05分,ようやく塔ノ岳山頂に到着する。今日の大倉から山頂までの所要時間は,2時間17分。現在の体調から勘案して,私にとっては,まあまあの記録である。どうやら,体力はそう弱体化していないようである。
先ほど私を追い抜いた男性が,昼食を食べようとしている。私を見ると,
「今日は,2時間10分も掛かっちゃったよ・・・」
と言う。
今日の山頂は珍しく無風である。暖かい日差しを浴びて,沢山の登山客が日向ぼっこをしている。私は,例によって,周辺の風景をカメラに収める儀式を済ませる。
<山頂付近の残雪>
■尊仏山荘にて
尊仏山荘に入る。番台にオーナーのHさんが座っている。私の顔を見ると,ニッコリしながら,
「いらっしゃい!」
と挨拶する。山荘は沢山の客で混雑している。山荘の温度計によると,10時15分現在,山頂の気温は+4.6℃。さすがに春。随分と暖かくなっている。
私は品の良い夫婦の脇に座って,300円也のお茶を飲む。すると,男性の方が,
「色々な山へ登っていらっしゃるんですね・・」
と私に話しかける。私は,なぜ初対面の方から,いきなりこのような質問が出るのか理解できない。まるて,狐に摘まれたような顔で,キョトンとしていると,
「Tシャツの背中に『穂高山荘』って書いてありますよ・・・」
成る程! そういえば,私は,たまたま,穂高山荘で着替えのために購入したTシャツを着ている。
これを切っ掛けにして,暫くの間,この夫婦と雑談をする。お二人は,昨日,栃木から来て,尊仏山荘に泊まったとのこと。そして,今日,丹沢山を往復。これから下山するとのことである。旦那の方は,御年,○10+5才。
「もう年ですので,なかなか・・・」
と弱音を吐き始める。ところが,私の方が10才も年上だと知ると,旦那は「希望が湧いてきた」と喜ぶ。10時20分頃,このご夫婦は山荘から下山を開始する。
暫くの間,山旅スクールの2人や,ご常連のNさんを待っていたが,どちらも,なかなか山荘に到着しない。仕方なく,10時38分頃,私も下山を開始する。私が山荘の出入口を開けると,どこからともなく営業部長のミー君が現れて,私より先に外へ出る。春の日差しが,営業部長にも気持がよいのだろ。その辺りを,随分元気に歩き回っている。
いつの間にか,彼方此方に雲が湧き始めている。先ほどまで見えていた富士山も,すっかり雲の中である。残念。
■金冷シ
ノンビリと下り始める。途中次々と登ってくる登山者とすれ違う。山頂付近の急坂を降りきった所で,先ほど追い抜かせて頂いたご常連のNさんとすれ違う。ついで,金冷シ近くで,山旅スクールのお二人とすれ違う。
「あと山頂まで,どのくらいですか?」
とお一人が私に質問する。その間に,もう一人が草臥れて道端に座り込む。
「先に行ってて・・・」
と,もう一人に言っている。私は,
「山頂はもうすぐですよ・・・あと10分ぐらい・・」
と励ます。
私はMさん達と,もう一度,山頂まで登り返そうかと思ったが,帰りが遅くなるので,今日の所は,失礼して先に下山することにする。
10時52分に金冷シを通過する。そして,ヤセ尾根に差し掛かると,先ほど尊仏山荘でお会いした夫婦に追いつく。私は内心で,まだこんな所を歩いているのと不審に思う。お二人とも,どうやら,山歩きを始めてから間もないようである。山の歩き方も本で読んだだけだという。そこで,お節介かなと思ったが,山旅スクールで教わった歩き方を,少しばかり披露する。すると,
「今度の旅行で,一番役に立ちました」
と喜ばれる。横浜付近にお住まいなら,是非,山旅スクールにいらっしゃいと誘うのだが,栃木では遠すぎる。残念。
<山麓で見掛けた綺麗な花>
■無事大倉に到着
栃木のご夫妻と一緒に花立山荘まで下る。11時25分に山館山荘に到着する。単独で下山するときよりも,10分ほど余計に時間が掛かった。もう,大倉13時11分発のバスに乗るのは大変。そんなに急いで帰宅することもないので,13時38分のバスに間に合うように,ユックリ下山することにする。
ノンビリ,ユックリと春の日差しを堪能しながら下り続ける。途中,10人ほどの登山客に追い越される。何処かの土手で横になって,暫く昼寝をしたいなと思いながら下り続ける。そして,13時18分に,無事,大倉に到着する。
トイレ前の水道で,泥の付いた登山靴を丁寧に洗う。その後,広場で開かれている青空市を見て回る。渋沢行きのバスは,ほぼ満席だった。
[ラップタイム]
7:48 大倉歩き出し
8:07 観音茶屋
8:19 雑事場ノ平
8:21 見晴茶屋
8:34 一本松
8:47 駒止茶屋
8:54 堀山
9:00 堀山ノ家
9:15 戸沢分岐
9:17 萱場平
9:37 花立山荘
9:50 金冷シ
10:05 塔ノ岳山頂 着
==============================
10:38 塔ノ岳山頂 発(+4.6℃)
10:52 金冷シ(栃木の方に同行)
11:25 花立山荘
11:44 萱場平
11:46 戸沢分岐
12:01 堀山ノ家
12:10 堀山
12:19 駒止茶屋
12:30 一本松
12:41 見晴茶屋
12:43 雑事場ノ平
12:55 観音茶屋
13:18 大倉 着
[山行記録]
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間
大倉発 7:48
塔ノ岳山頂着 10:05
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
登攀速度 1,201m/2.28h=526.8m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10;38
大倉発 13:18
(所要時間) 2時間35分(2.58h)
下降速度
1,201m/2.58h=465.5m/h
(おわり)
春が来た丹沢:塔ノ岳
(第17回)
(単独山行)
2008年4月5日(土) 晴れ
■小田急で大倉へ
何時ものように,4時過ぎに起床する。今日は天気が良さそうである。私は登山の七つ道具が入りっぱなしになっているリュックを背負って,5時10分に家を出る。
今日も良い天気である。この頃は日が伸びて,5時頃にはもう十分に明るくなり始めているし,まだ少々寒いとはいえ,早朝に出掛けるのが随分楽になった。
藤沢からナントカフリーパスを使って,相模原乗換で渋沢へ向かう。
渋沢7時16分発大倉行のバスに乗車する。今日は土曜日。バスは登山客で一杯である。登山客の大半は中高年の男性である。しかも,私を含めて,圧倒的に単独山行が多い。
■混雑するバス
7時30分に大倉着。休日には,バスの本数が多いらしくて,前のバスで到着した登山客が,まだ沢山居る。
私は,リュックの中から,簡易スパッツを取りだして装着する。続いて軽くストレッチをする。陽気が暖かいためかも知れないが,今日は身体が案外に軽くて,どうやら調子が良さそうである。気温が少々高そうなので,ダクロンのTシャツ一枚になる。
大倉からの歩き出しは,何時もより10分ほど遅れて,7時48分である。
■大倉を出発
大倉から登山口までの道路は,晴天が続いたためか良く乾いている。登山道に入ってからも,道路に適当な湿り気があって,とても歩きやすい。今日は,ガイドのサンダー氏に指摘されている歩行法を忠実に守りながら,マイペースで登ることを念頭に置いて登ることにする。
サンダーさんから指摘されている歩行法は,
1.上体を起こしたまま,足の膝を少し曲げる(少し中腰になる),
2.両足の間隔を肩幅程度に開く,
3.重心を少し前倒しにする,
の3点である。勿論,この他に歩幅を小さく,後ろ足で蹴らない,一歩一歩確かめながら歩くなどの一般的な注意事項は遵守する。また,流れ落ちるような汗をかくほど歩行速度を早めない,腹式呼吸をする,こまめに水分を取る等々。
<大倉尾根を行く登山者の列>
■見晴茶屋とキツツキ
8時07分に観音茶屋を通過する。沢山の登山客が数珠繋ぎになっている。今日の私は,まあまあの体調なので,道幅が広くなっている場所で,少しずつ追い抜かせて貰う。
8時10分に大倉高原の家への分岐に差し掛かる。私の少し前方に見覚えのある帽子を被った男性が登っている。ご常連のNさんである。私は,Nさんの後から,
「Nさん,こんにちは,お久しぶりです・・・」
と挨拶する。そして,一足先に行かせて貰う。
8時21分に見晴茶屋を通過する。そして,大倉尾根の難所,長い階段の急坂にさしかかる。前方には,私より1本先のバスで来たと思われる登山客が数珠繋ぎになっている。この坂で,何人かの登山客を追い抜いたが,逆に50才代の男性に追い抜かれる。
暫く登り続けると,目の前に,何となく見覚えのある女性が2人,喘ぎながら登っているのが見えてくる。近付いてみると,山旅スクール6期の女性,MさんとHさんである。一瞬,彼女たちと一緒に登ろうかと迷った。でも,もともと別々に登ってきたのだから,これから先も別々の方が良かろうと思って,
「おや・・・コンニチハ。今日は一人で先に行かせて貰います・・・」
と挨拶をして追い抜く。
「先に尊仏山荘に行ってます・・30分ぐらいは山荘で待っていますよ。」
8時34分に一本松を通過する。森の中からキツツキが「ダダダダ・・・」と木を打つ音が聞こえてくる。一本松を過ぎると,なだらかな尾根になる。もともとトッブギヤー型の私は,この場所で,歩行速度を速める。幸いなことに,この辺りの道幅はかなり広いので,他の人に気兼ねすることもなく,自分の速度で歩くことができる。
■また男性に追い越される
再び少し急な坂道になる。この坂道を登りきって,8時47分に,小草平に到着する。多少霞が掛かっているものの,大きな杉の木の間から真っ白な富士山が良く見える。
ここからガレた急坂が始まる。私は何とか安定した速度で登り続ける。ゴロゴロとした石の間を縫うようにして登っていると,また,後から来た60才代の男性に追い抜かれる。男性は追い抜きざまに,
「急な坂は辛いですね・・・」
と私に話しかける。私は,
「それにしても,早いですね・・・その調子だと山頂まで2時間ぐらいですか・・」
と伺う。
「そうね,大体そんなものだね・・でも,雪があると2時間15分ぐらい掛かることもあるよ・・・」
と答えながら,私を追い抜いていく。凄い人がいるものだと感心する。
■岡山の団体
やがて堀山付近の尾根道に入る。富士山が良く見えている。先ほど私を追い抜いた男性が,登山道から少し離れて,富士山を眺めている。その間に,先ほど追い抜かれた男性をもう一度追い抜いて先を急ぐ。堀山を通過すると,やや狭い尾根道になる。すると,前方に50人ほどの大きな団体が,超ユックリのペースで登っている。私は追い越している間に,
「どちらから,お出でですか?」
と伺ってみる。この団体は,岡山からわざわざ丹沢を訪れたようである。
9時丁度に堀山の家を通過する。ここから長い坂道が続く。案外,調子よく登り続ける。
<今日の萱場平:まあまあ乾燥している>
■三角髭のご常連
9時11分に戸沢分岐を通過する。二人の男性に追い抜かれたものの,今日の私の体調はなかなか良い。当初思っていたよりは,良いペースで登っているようである。分岐の直ぐ上の萱場平は,この前来たときとは比較にならないほど,良く乾いている。例によって定点観測用に萱場平の写真を一枚撮る。ベンチでは,沢山の人が休憩を取っている。
さらに登り坂が続く。花立山荘手前の長い上り階段道を,沢山の登山者が喘ぎながら登っている。私は何人かの登山者に,挨拶をしながら,先に登らせて貰う・・・が,ここでも60才代と思われる男性に追い抜かれる。さらに,先ほど抜き返した60才代の男性に再び追い抜かれる。
花立山荘まで後,30メートルぐらいの地点で,ご常連の三角髭の紳士(以下三角紳士と略す)が下山してくる。何時もなら,金冷やし手前のコル辺りで出会う紳士である。私は挨拶した後,
「あれ・・随分早いですね。今日は2時間を切りましたね・・・」
と質問する。すると三角紳士は,
「ええ,今日は一寸頑張って,まあ,そこそこ,切りましたよ・・」
とニッコリする。全く凄い人である。
<塔ノ岳山頂からの富士山>
■塔ノ岳山頂
9時34分に花立山荘を通過する。山荘直前で私を追い抜いた紳士は,もう50メートルほど先の坂道を脱兎のような勢いで登っている。山荘前のベンチには,沢山の登山客が休憩を取っている。ベンチの向こうには,春霞にぼんやりの富士山が見えている。
つい先日登ったときには,日陰にまだ残雪が見えたが,今日はもうすっかり融けている。坂を登ってコルの木道を通過する。この辺りから富士山や南アルプスがとても良く見えている。前方には,東側の斜面に残雪が残る塔ノ岳が聳えている。
9時50分,金冷シを通過する。金冷シの直ぐ上の平地は,融雪でひどい泥んこになっている。この泥んこを過ぎると,残雪の階段道になる。しかし,アイゼンがなくても,十分安全に歩くことができる。その後も泥んこ道と,残雪道が交互に現れる。
10時05分,ようやく塔ノ岳山頂に到着する。今日の大倉から山頂までの所要時間は,2時間17分。現在の体調から勘案して,私にとっては,まあまあの記録である。どうやら,体力はそう弱体化していないようである。
先ほど私を追い抜いた男性が,昼食を食べようとしている。私を見ると,
「今日は,2時間10分も掛かっちゃったよ・・・」
と言う。
今日の山頂は珍しく無風である。暖かい日差しを浴びて,沢山の登山客が日向ぼっこをしている。私は,例によって,周辺の風景をカメラに収める儀式を済ませる。
<山頂付近の残雪>
■尊仏山荘にて
尊仏山荘に入る。番台にオーナーのHさんが座っている。私の顔を見ると,ニッコリしながら,
「いらっしゃい!」
と挨拶する。山荘は沢山の客で混雑している。山荘の温度計によると,10時15分現在,山頂の気温は+4.6℃。さすがに春。随分と暖かくなっている。
私は品の良い夫婦の脇に座って,300円也のお茶を飲む。すると,男性の方が,
「色々な山へ登っていらっしゃるんですね・・」
と私に話しかける。私は,なぜ初対面の方から,いきなりこのような質問が出るのか理解できない。まるて,狐に摘まれたような顔で,キョトンとしていると,
「Tシャツの背中に『穂高山荘』って書いてありますよ・・・」
成る程! そういえば,私は,たまたま,穂高山荘で着替えのために購入したTシャツを着ている。
これを切っ掛けにして,暫くの間,この夫婦と雑談をする。お二人は,昨日,栃木から来て,尊仏山荘に泊まったとのこと。そして,今日,丹沢山を往復。これから下山するとのことである。旦那の方は,御年,○10+5才。
「もう年ですので,なかなか・・・」
と弱音を吐き始める。ところが,私の方が10才も年上だと知ると,旦那は「希望が湧いてきた」と喜ぶ。10時20分頃,このご夫婦は山荘から下山を開始する。
暫くの間,山旅スクールの2人や,ご常連のNさんを待っていたが,どちらも,なかなか山荘に到着しない。仕方なく,10時38分頃,私も下山を開始する。私が山荘の出入口を開けると,どこからともなく営業部長のミー君が現れて,私より先に外へ出る。春の日差しが,営業部長にも気持がよいのだろ。その辺りを,随分元気に歩き回っている。
いつの間にか,彼方此方に雲が湧き始めている。先ほどまで見えていた富士山も,すっかり雲の中である。残念。
■金冷シ
ノンビリと下り始める。途中次々と登ってくる登山者とすれ違う。山頂付近の急坂を降りきった所で,先ほど追い抜かせて頂いたご常連のNさんとすれ違う。ついで,金冷シ近くで,山旅スクールのお二人とすれ違う。
「あと山頂まで,どのくらいですか?」
とお一人が私に質問する。その間に,もう一人が草臥れて道端に座り込む。
「先に行ってて・・・」
と,もう一人に言っている。私は,
「山頂はもうすぐですよ・・・あと10分ぐらい・・」
と励ます。
私はMさん達と,もう一度,山頂まで登り返そうかと思ったが,帰りが遅くなるので,今日の所は,失礼して先に下山することにする。
10時52分に金冷シを通過する。そして,ヤセ尾根に差し掛かると,先ほど尊仏山荘でお会いした夫婦に追いつく。私は内心で,まだこんな所を歩いているのと不審に思う。お二人とも,どうやら,山歩きを始めてから間もないようである。山の歩き方も本で読んだだけだという。そこで,お節介かなと思ったが,山旅スクールで教わった歩き方を,少しばかり披露する。すると,
「今度の旅行で,一番役に立ちました」
と喜ばれる。横浜付近にお住まいなら,是非,山旅スクールにいらっしゃいと誘うのだが,栃木では遠すぎる。残念。
<山麓で見掛けた綺麗な花>
■無事大倉に到着
栃木のご夫妻と一緒に花立山荘まで下る。11時25分に山館山荘に到着する。単独で下山するときよりも,10分ほど余計に時間が掛かった。もう,大倉13時11分発のバスに乗るのは大変。そんなに急いで帰宅することもないので,13時38分のバスに間に合うように,ユックリ下山することにする。
ノンビリ,ユックリと春の日差しを堪能しながら下り続ける。途中,10人ほどの登山客に追い越される。何処かの土手で横になって,暫く昼寝をしたいなと思いながら下り続ける。そして,13時18分に,無事,大倉に到着する。
トイレ前の水道で,泥の付いた登山靴を丁寧に洗う。その後,広場で開かれている青空市を見て回る。渋沢行きのバスは,ほぼ満席だった。
[ラップタイム]
7:48 大倉歩き出し
8:07 観音茶屋
8:19 雑事場ノ平
8:21 見晴茶屋
8:34 一本松
8:47 駒止茶屋
8:54 堀山
9:00 堀山ノ家
9:15 戸沢分岐
9:17 萱場平
9:37 花立山荘
9:50 金冷シ
10:05 塔ノ岳山頂 着
==============================
10:38 塔ノ岳山頂 発(+4.6℃)
10:52 金冷シ(栃木の方に同行)
11:25 花立山荘
11:44 萱場平
11:46 戸沢分岐
12:01 堀山ノ家
12:10 堀山
12:19 駒止茶屋
12:30 一本松
12:41 見晴茶屋
12:43 雑事場ノ平
12:55 観音茶屋
13:18 大倉 着
[山行記録]
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間
大倉発 7:48
塔ノ岳山頂着 10:05
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
登攀速度 1,201m/2.28h=526.8m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10;38
大倉発 13:18
(所要時間) 2時間35分(2.58h)
下降速度
1,201m/2.58h=465.5m/h
(おわり)