<早朝のマウントクック>
ルートバーン(38):マウントクック山麓トレッキング(4)
(湘南カラビナ隊)
2005年1月25日(金)~2月2日(日)
第8日目:2005年2月3日(木) (つづき)
第9日目:2005年2月4日(金)
38 眠れぬ夜
<デジカメも人間も不調>
■デジカメ異変
夕食を済ませた私は,20時30分,部屋へ戻る.窓外には夕焼けに染まったマウントクックが不気味なほど綺麗に見える.昼間より少し雲が出てきている.その雲に夕日が当たり紅に輝いている.
バッテリーが消耗して夕食を撮ることができなかったデジカメのバッテリーを新しいものに取り替え,夕暮れのマウントクックを撮る.しかし,映像を確かめてみると,マウントクックは全く映らず画面全体がもやもやした色でボンヤリと被われている.
「なぜ映らないんだろう」
私は一瞬迷ったが,窓ガラス越しに撮ったので,カメラは目の前のガラスに焦点を合わせようとしていたからだと気がついた.そこで,カメラを遠距離モード(つまりレンズの焦点を無限大に固定する)にして撮り直した.
同室のフクロウが寝ているので,部屋の照明を消し,ベッドに潜り込む.そして,毛布を被って,中でヘッドランプを頼りに,暫くの間,ゴソゴソとノートの整理をする.そして,
「もしや」
とデジカメで写した風景が,ちゃんと映っているかどうか,心配になり,寝床の中で,今日撮ったデジカメの写真を全部レビューしてみる.バスの中から,窓越しに,美しい風景を沢山撮ったつもりだったが,すべてが極端なピンぼけになっている.10数枚の写真が使い物にならない.残念だが,使い物にならない写真は全部消去した.カシオの固定焦点のデジカメで,バックアップのつもりで撮っていた数枚の写真は問題なく撮れている.
そんなことをしている内に,眠くなる.何時か分からないが,いつの間にか眠っている.
<ホテルの部屋の鍵>
■寝小便みたい
ふと夜中に目が覚める.
何時寝込んだか分からないが,ヘッドランプは,ちゃんとオフになっている.気がつくと,捻挫した右足首を冷やしていたビニール袋の中の氷が溶けて,袋の外に流れ出している.寝相が悪い私は,寝ていて暑かったのか,いつの間にか,下半身をベッドカバーの上に出して寝ていた.右足に縛り付けていたビニール袋も一緒にベッドカバーの上で潰れている.ベッドカバーに熔けた水が半分ほど流れ出して,直径50センチメートルほどの大きなシミになって,ビシャビシャに濡れている.これには参ったが,仕方がない.クリーニング代を出すしかないなと諦める.
同時に,今朝,Sさんにしていただいた右足首のテーピングが気になり始める.何となく右足が攣りそうな予感がするので,暗闇の中でテーピングを剥がそうとするが,しっかりと固定されていて,簡単には剥げそうもない.面倒なので,剥がすのをすぐに諦める.うつらうつらしながら,右足のふくらはぎをマッサージしていると,違和感もなんとなく治まる.その内に,また何時しか寝てしまう.
夜中に,フクロウが何回も洗面所に行って,「ガラ,ガラ・・」とうがいをしている.うがいの音を聞いていると,昨夜に較べて,乾いた変な音に変っている.どうやら,フクロウの風邪はだんだんと悪化しているように思える.
<眠れないまま朝を迎える>
■朝からゴソゴソ
夜中に,また,目が覚めてしまう.もう,2005年2月4日(金)を迎えている.
夜中に何回も目が覚めるのは,脳の老化によるものだと,誰かが言っていた.そうだとすると,私の脳もすっかり老化したものだ.
水をこぼしたベッドカバーが,いつの間にかすっかり乾いている.洗濯代が掛からないのでホッとする.良かった.良かった.
短時間に乾いてしまうのは,部屋の空気が乾燥しているからであろう.乾燥した空気では,風邪を引いているフクロウには,さぞかし辛いだろう.
5時15分,フクロウがフラフラと起き出す.そのまま洗面台に行って「ガラ,ガラ・・・」と長時間うがいをしている.そして,再びベッドに戻り,ゴソゴソと何かを始める.
「どうですか.調子は・・」
と私が聞く.
「うん,まあ・・」
と頼りなげの返事が返ってくる.
「部屋の電気,点けようか」
と聞く.電気を点けると,フクロウは,いきなり電気カミソリを取り出して,髭をそり出す.そしてすぐに鼾をかきながら眠ってしまう.
「この人も,15秒で眠ってしまう仁王様と,“どっこい,どっこい”に寝付きのいい人だな」
私は,えらく感心する.
■朝日のマウントクック
そうこうしている内に,私も眠るような,眠らないような中途半端な状態だったが,6時25分に起き出す.モーニングコールの5分前である.外は大分明るくなっている.
窓から,マウントクックが朝日に輝いているのが見える.
<早朝のマウントクック>
(つづく)
「ルートバーン」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/8046c1868223f4e8fce8b1b6a0018d06
「ルートバーン」の次回の記事
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[編集後記]
2011年5月19日(木) 快晴
このところ,随分と日の出が早くなり,4時少し過ぎに朝日が煌々と昇ってくる.私の部屋の東側の窓から,まぶしい太陽が早朝から射し込んでくる.最近の家には雨戸が付いていないので,薄っぺらなカーテン越しに,値みたい顔を目掛けて,日光が容赦なく照りつける.とても寝ては居られない.
「今頃は,丹沢のシロヤシオもそろそろ咲き始めているだろうな・・」
と思うと,気もそぞろになるが,今日もまた,横浜山下公園沿いの神奈川県民ホールギャラリーへ出かける予定である.それに,まだ,多少のクラクラ感が残っているので,丹沢行は,少なくとも,来週火曜日ぐらいまではお預けである.
今朝はヒンヤリとしていて心地良い気温であった.
朝の内,気分爽快なときに,新しく描き始める絵の構想を,あれこれと考え続けるが,瞬く間に時間が過ぎて,午前中でギブアップ.
絵を描くのも,論文を書くのも,そのプロセスは全くよく似ているなと,元三流学者だった私はつくづく感じている.絵も論文も構想がしっかり固まれば,ほぼ完成したのも同じである.
友人でもあり,絵の先輩でもあるIさんが,頻りに,
「絵にはストーリーが亡ければ駄目だ・・・」
と何回も聞かされている.
全く,Iさんの言うとおりだと思う.結局,絵の訴求力は,その絵が何を表現しようとしているかが明確かどうかで決まる.明確ならば絵を見て頂いている方々の共感が得られる.それが絵の作者の満足感にも繋がる.ところが,ただ美しい,ただ上手だというだけの絵では,何かが足りない.
このところ,私は雪山(正確には氷河山か)の絵に凝っている.
山は遠くから見ても美しい.でも,でも,・・である.私が思い続けている山は,いくら遠目で美しい山でも,その山の内面ではマグマが煮えたぎっているし,昇ってみると厳しい岩や谷があり,汗を流しながら苦労して登る山である.
遠目に美しく優しく見える山にも,内在するマグマ,岩や谷の厳しさ,登山者の汗,・・などが必ずある.絵の上手下手は,二の次で,そんな諸々の「何か」を,是非,自分が描く山の絵の中で表現してみたい.これが私の切なる願いである.
今日はもと勤務先の知人お二人,丘さんと待さん(いずれもあだ名)が展覧会を見に来てくれる.そこで,少し早めに昼食を済ませて,展覧会場に向かう.今日は昨日にもまして,気温が高く,すっかり初夏のようである.
平日にもかかわらず山下公園で散策している人が多い.広々とした公園は実に気分が良い.
14時少し前に会場に到着する.1階のベンチで座りながら,お茶を飲んでいると,お二人が目ざとく私を見つける.お二人と一緒に会場を一回りする.展覧会は何回見ても飽きないが,今日の所は,お二人と一緒に展覧会場を後にする.
見応えのある絵がたくさんあるが,その中でも特に印象に残った絵を頭の中に納める.中には是非まねをしてみたい絵も沢山ある.これらの絵を見ながら,琴似の秋の展覧会に向けて,絵を描き始めようと,心に誓う.
絵に接していると,俄然,ファイトが沸いてくる.だから,今日は愚痴にならない愚痴で終わりにしよう.
(愚痴おわり)
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