<やっと一ノ沢登山口へ下山>
北アルプス;燕岳から常念小屋(7);第3日目;雨に濡れながら下山
(アルパインツアー)
2011年8月19日(金)~21日(日)
第3日目:2011年8月21日(日)
<3日目の地図>
<プロフィールマップ>
<常念岳残念>
■強い雨
夜半,激しい雨が降り続いている.どうやら風も出てきたようである.
本来の行程では,早朝,4時30分に常念小屋を出発して,常念岳山頂を往復.その後,朝食を取る予定である.
しかし,昨日から今朝に至るまで,かなり強い雨が降り続いている.私たちのグループの大半の方々は,風雨の中の常念岳往復は諦める.私も,もちろん,折角のチャンスなので登りたい気持ちは山々である.しかし,自分の年齢や安全のことを考えて,常念岳山頂往復は諦める.
ところが,女性2人が,どうしても山頂まで行きたいという.ツアーリーダーが,再三,中止するように進めたようだが,意思が強く,遂にH野ガイドと現地案内人のお二人が付き添って登ることになった.
残りの14人は,お二人が,無事,戻ってくるまで常念小屋で待つ.
■朝食とコーヒー
意外に早く,5時30分頃,お二人は下山してくる.風雨の中,ちゃんと山頂まで往復したとのこと.大変な健脚である.
5時35分頃から,全員揃って朝食.
常念山荘山荘前集合が7時50分.まだ時間があるので,2~3人の仲間と一緒に,談話室で,450円也のコーヒーを賞味する.
<常念小屋の朝食>
<450円也のモーニングコーヒー>
<常念小屋から一ノ沢へ>
■胸突き八丁を下る
7時45分頃,全員が常念小屋前の広場に集合する.
ツアーリーダーのM山さんの号令で,雨合羽を着たまま,雨の中でかなり念入りなストレッチを行う.私はストレッチをしながら,
「こんな悪条件の中でも,きちんとストレッチをさせるM山リーダーはなかなかの人だな・・」
と感心している.
7時55分,いよいよ下山開始.
常念小屋から常念乗越まで,標高差で,ほんの10メートル余り登った後は,ジグザグで急な下り坂になる.かなり強い雨が絶えず降り続いているので,眼鏡が曇る.足許が見えにくいので,緊張のしっ放しである.
すぐに樹林帯に入る.大きな石と木の根の登山道になる.
急な段差や,ややこしい所に来ると,どうしても遅れがちになり,前の人との距離が空く.ただ,全体としてユックリとした速度で下っているので,登山道がややこしくない所へ来ると,普通に歩いていても,すぐに前に追い付く.
こんなことを繰り返しながら,急坂を下り続ける.
8時39分,胸突き八丁の下りが終わって,一ノ沢の上流に位置する場所に一寸した広場がある.沢山の登山客の集団が休憩を取っている.この集団を抜けて,少し離れた所で,私たちも休憩を取る.
「晴れていれば,このルートもとても景色が良いんですよ・・・」
とM山リーダーが言う.
相変わらず,かなり強い雨が降り続いている.そんな美しい風景どころか,小さなノートを取り出して記録をつけることもままならない.
せめて,デジカメで辺りの様子を撮っておこうと思ったが,用心していたにもかかわらず,デジカメに水が入ったのか液晶画面が真っ暗になっただけでなく,レンズカバーもまともに開かない.したがって,一切のきろくがとれなくなってしまった.
リュックの中には,予備のデジカメが1台入っているが,この雨の中では,リュックを開くこともできない.万事休す.
<雨の中デジカメが故障する>
■笠原沢出合
10分ほど休憩の後,再び歩き出す.
現地ガイドから,
「これから先,川を高巻きする急な下り坂があるんで,転落しないように注意して下さい・・」
と注意を受ける.
この注意を受けて,ただでさえ眼鏡が曇って,大変な思いをしながら下っている私は,さらにプレッシャーを受ける.
相変わらず,大きな石と木の根の登山道が連続する.
9時39分,標高1930メートル地点で,2回目の休憩を取る.
ここは,笠原沢出合というところのようである.実際の標高は1880メートルなので,暫くの間に,高度計の数値の方が,50メートルほど高くなっている.それだけ低気圧が強くなっている証拠である.
現地ガイドに,
「怖い下りの急坂は,いつ頃通るんですか・・」
と伺う.
「もう通り過ぎました・・・先ほどの坂の所です」
とのこと.私は内心で,
「そうか,もう通り過ぎたのか・・ビックリするほどのところではなかったな・・」
と一安心.
ここは水場のようだが,M山リーダーの話によると,ここは川の水をそのまま引いているので,雨が降るとどうしても水が濁ってしまう.だから,余り飲むのを勧めないとのこと.むしろ,次の休憩場所付近にある涌き水の方が良いという.
■標高1600メートル付近で休憩
同じような下り坂が連続する.下るにつれて,少しずつ歩きやすくなる.
朝歩き出して,沢に降りてからすぐに川の左岸に渡ったが,その後,また右岸に渡り返したり,さらにまた左岸に渡るなど,数えている内に,何回川を渡ったか分からなくなる.
標高約1600メートル付近で小休止.
「・・ここから一ノ沢登山口までは1ピッチですよ・・・」
とM村リーダーが言う.
正直なとろ,“ヤレヤレやっとか”と思う.
<一ノ沢登山口>
■ジメジメ雨合羽から解放される
5分ほどの達休憩の後,再び歩き出す.登山道の下り勾配がだんだんと緩くなる.
何回,徒渉を繰り返したか分からなくなっているが,今は,ずっと一ノ沢の左岸を下っている.大きな石が少なくなり,登山道の終点が近いことを予感させる.
その内に,辺りに里山の山麓を歩いているような雰囲気が漂い始める.しかし,雨は性懲りもなく相変わらず降り続いている.
好い加減,歩くのに飽きてくる.暫くの間,ただ黙々と歩き続ける.
そして,11時49分,漸く,一ノ沢登山口(標高1261m)に到着する.
私たちより先に下山した方々が沢山居る.数台のバスが駐車している.ただ,私たちの専用車は,12時30分の予約なので,まだ到着していない.
登山口の前には,数台のバスが停車できるほどの広場になっている.広場の片隅にトイレと水場(水は飲めない),はす向かいにちょっと大きめに事務所の建物がある.
建物の軒下に潜り込んで,雨合羽を脱ぐ.蒸し暑いジメジメからやっと解放される.次いでザックカバーを外す.ザックの中に防水のスタッフバッグを入れている.そして,さらにすべての携行品をビニール袋に入れてから,スタッフバッグの中に入れるようにしているが,それでも,予備のデジカメが湿っぽくなっている.
多分,昨夜,濡れ物をすべて大きなビニール袋に入れて,自室まで運んだのが原因だろう.自室に入ってから,濡れ物を整理している最中に,リュックの中身を入れ替えたりしたので,そのとき,ウッカリ,予備のデジカメを入れていたビニール袋の入口から水が入ってしまったのだろう.
でも何とか,だまし,だまし,登山口の様子を1枚だけ撮影する.
■専用車で帰途につく
全員の身支度が調った頃,M山リーダーが参加者全員を集める.
「・・・残念ながら,3日間雨に祟られてしまいましたが,何はともかく,全員無事に下山できて良かったです.ご苦労様でした・・」
という主旨の挨拶がある.
そして,恒例のアンケート用紙が配られる.
12時15分頃,専用車が到着する.すぐに乗車,12時17分に一ノ沢登山口から発車する.
<やっと我が家に>
■雨が止んだ豊科駅
一ノ沢登山口を発車した専用車は,随分と山深い谷筋延々と下り続ける.
どうやら一ノ沢の左岸を高巻きしている道路のようである.20~30分もの間,深い山間の道を曲がりくねりながら下り続ける.
やがて,進行方向左手に大きな駐車場が見え出す.地図で確かめると,どうやら「常念いこいの広場」という所のようだ(間違っているかも知れない).
専用車は,すぐに安曇野の盆地に入る.もう,里の風景である.ここまで下ると地図を追う気がなくなる.
どこをどう通ったから分からないが,12時56分,JR大糸線豊科駅に到着する.ここで,今回のチームは解散.
かなりの方々が,ここからタクシー相乗りで,近くの温泉に行くという.
私も温泉には魅力を感じるが,それよりも,できるだけ早く,家に帰りたい.そんなことを見越して,今朝,常念小屋を出発するときに,2日間着たままだった下着類とズボンを新しい物に着替えている.隣の席に座った方に,多少の汗臭さで,迷惑を掛けるかも知れないがご容赦で,豊科駅13時15分発松本行の電車に乗車する.
そういえば,この辺りは,NHKの連続テレビドラマ『おひさま』の舞台になっているところだ・・・・豊科駅の昇り旗を見て気がつく.
<閑静な豊科駅>
■松本で皆さんとお別れ
私と同じように,温泉行をパスした方が5名居られる.
松本行電車は混雑していて座れない.立ち席のまま雑談を続ける.名前は覚えられなかったが,ご夫婦のお二人,長野在住の女性,それに奈良在住の女性,さらに私を加えて5人である.
13時35分,松本駅に到着する.
ここで,帰り先が異なる5人はバラバラになる.寂しいようなホッとするような気分である.まさに一期一会.
私は,1人になって,すぐに中央本線のホームに廻る.幸運なことに,松本13時40分発新宿行あずさ20号に丁度間に合う.もちろん自由席.
私が乗車するとすぐに発車.
■八王子で乗り換えて自宅へ
電車は甲府までは空いていたが,甲府からドッと沢山の乗客が乗ってくる.私の隣には20歳代前半のうら若い女性が座る.
私は自分では分からない自分の汗臭さが気になるが,隣の席に座った女性には,特段に気にする気配がない.私は安心する.
列車が南東に向けて走っている内に,寒冷前線を通過したのか,何時の間にか雨が止んでいる.
16時02分に八王子に到着する.ここでも運良く16時-9分発桜木町行快速電車に接続する.横浜線の細かい駅を通過するので気分的にも快適である.
横浜駅で東海道本線の電車に乗り換えて,18時少し前に,無事帰宅.
早速,風呂に入って,3日間のベトベト汗を,綺麗に洗い落とす.
我が家は狭いけど,自分の布団は,山小屋に比較すれば,ずっと広い.実に快適.
こうして,雨に祟られた北アルプス3日間の旅は終わった.
<第3日目のラップタイム>
5:35 朝食
7:55 常念小屋歩き出し
8:39 一ノ沢(8:49まで休憩)
9:39 笠原沢出合(9:42まで休憩)
10:41 標高約1600m地点(10:46まで休憩)
11:49 一ノ沢登山口着
===============================
12:17 一ノ沢登山口発(専用車)
12:56 JR豊科駅着(解散)
[山行記録]
■水平歩行距離 5.7km
■累積登攀高度 10m
■累積下降高度 1218m
■所要時間(休憩時間込み)
常念小屋 発 7:55
一ノ沢登山口着 11:40
(所要時間) 3時間54分(3.90h)
水平歩行速度 5.7km/3.90h=1.46km/h
平均下降速度 1218m/3.90h=312.3m/h
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1日目 2日目 3日目 合計
↓ ↓ ↓ ↓
■水平歩行距離 3.9km+11.8km+5.7km=21.4km
■累積登攀高度 1249m+ 773m+ 10m=2032m
■累積下降高度 3m+ 757m+1218m=1978m
■所要時間(休憩時間込み)
5.0h+ 10.1h+ 3.9h=19.0h
平均水平歩行速度 21.4km/19.0h=1.13km/h
(おわり)
「日本の山旅;北アルプス」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/8c7cda868460a3c0dda0320326563998
「日本の山旅;北アルプス」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f760c4327622acf3f65c6028d734f587
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[編集後記]
2011年8月30日(火)
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雨に濡れてしまい動かなくなったデジカメ2台のその後のレポート.
帰宅後,濡れたデジカメ2台は,乾電池やSDカードを外し,裏蓋をかいほうしたまま,乾燥剤と一緒に密閉したビニール袋に入れて,2日間ほど放置した.
さらに,天気の良い日に,風通しの良い場所で長時間乾かした.
その結果,3~4日後に,2台とも完全に復帰した.ヤレ,ヤレ.・・・
でも,次回,デジカメを購入する機会があったら,今度こそ防水カメラを購入しようと思っている.
<乾燥させて無事復帰したデジカメ>
さて,今日はもう8月30日.夏もいよいよ終わりである.
8月は何だかんだ言いながら,塔ノ岳詣での回数が極端に少なかった.
今,朝4時少し前.外はまだ真っ暗である.天気予報では,残暑厳しいものの晴のようである.
では,これから塔ノ岳へ出掛けるとしようか.
(愚痴おわり)
FHさんも常念山脈を歩いていたんですね。しかも私と正反対のコースだったとは驚きです。
北アルプス慣れしているFHさんとは違って、私は初北アルプスでした。
残念ながら一番メインの真ん中の縦走の日は曇りだったのですが、FHさんの文章を読んでいて、「これでもましだったんだ」と納得しました。
で、私はすっかり北アルプスの虜になってしまいました。
来年までまた一年も待つのかと思うと、しんどいです(苦笑)。
コメント,有り難うございました.
やっぱり,南アルプスも雨が多かったとは残念でした.
塔ノ岳詣では再開しております.もうそれほど速くは登れませんが,今後も登り続けたいと思っています.
塔ノ岳にも,気心優しい沢山のご常連が居ります.
是非,お仲間になってください.
コメント,どうも有り難うございました.
ございました(塔ノ岳の話を度々していたものです)
ツアー記事を見て・・そういえばそうだったなあ・・
と改めて当日の出来事を振り返って、考えたりしてました。
天気には恵まれませんでしたけど、高山で雨の中を3日通して
歩く大変さを体験できて、自身にとっては良い経験になった
と思ってます。
自身のカメラは雨で故障しましたので現在、修理中。
帰宅してから早速、防水カメラを購入してしまいました。
あの後、南アルプスに行き、1日だけですが晴天になり近場で
見ることが出来なかった、北の山々を南側から眺めました。
塔ノ岳には時々いくことがありますので、お会いできる機会
があるかもしれませんね。 ではでは