<山頂は冬景色>
季節外れの雪が積もった丹沢:塔ノ岳(今年15回目)
(単独山行)
2010年4月18日(日)
■大混雑の1番バス
昨日(4月17日)の午前中まで,鎌倉は雨だったものの関東一円に季節外れの雪が降った.このところ寒くで雨ばかりの毎日が続いている.ところが今日だけは天気が良さそうである.私は早速塔ノ岳へ出掛けることにする.前回登ったのが4月14日.従って,中4日の登頂である.
暖房は要らないものの,まだ朝は寒い.でも朝が目立って早くなり,5時10分に家を出るときには,東の空があかね色に染まり,スズメが活発に囀っている.
小田原経由で6時40分に渋沢駅に到着する.大倉行バス乗り場には,ビックリするほど沢山の登山客がバスを待っている.私が列の末尾に並んでから,ほんの1~2分の間に,下り電車が到着したらしくて,あっという間に行列が2倍3倍の長くなる.何時もより数分遅れて,バスが到着する.すぐに超満員になり,数名の方がバスに乗り切れない.どうも,何時もの日曜日と様子が違うなと思ったが,誰からともなく今日は丹沢山開きの日だと教えられる.
大混雑の1番バスには,韋駄天のTさん他韋駄天組,三角髭のTさん,K女史などご常連が乗り合わせている.
■沢山の登山客
大倉バス停には,入山届の臨時受付台が設けられている.そして,受付係から,今日の塔ノ岳の積雪は15センチメートル,吹き溜まりは30センチメートル位だと聞かされる.
バスが数分遅れた.それに恒例のモタモタで,大倉を歩き出すのが7時21分と大幅に遅れた.その間に,山開きの臨時バスが,2台も大倉に到着する.久々にK大Nさんの姿も見える.お互いに,
「暫く振りですね...」
と挨拶を交わす.
歩き始めると,どうも身体が重く感じる.無理はまずいなと思って,歩き出しの速度を意識的に押さえるようにする.登山道は昨日までの雨でベットリと濡れていて,随分と歩きにくい.それに平素登山をしていない方々が数珠つなぎに歩いているので,なかなか自分のペースで歩くことができない.それでも,道幅の広いところで,登山者を少しずつ追い抜いて,丹沢ベースを過ぎた辺りで,K大Nさんに追いつく.そして,2~3分の間,雑談をしてから,一足先へ行かせて貰う.
沢山の登山者を追い抜かさせていただくが,逆に何人もの方々に追い抜かれる.そんなことを繰り返しながら,なるべく自分のペースを乱さないように歩き続ける.
7時56分,見晴茶屋を通過する.長くて急な登り坂に差し掛かる.見上げると沢山の登山客が数珠つなぎになっている.一本松を通過する辺りから,道路はますます泥んこになる.
天気予報では朝から晴れの筈だが.上空には雲が立ちこめている.
<見晴山荘上の急坂>
■豆桜が見頃
8時25分に駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間04分.前回登頂したときと全く同じラップタイムである.
堀山の尾根に出るまでの掘り割りの道は,まるで田圃のように泥んこである.歩きにくくて仕方がない.ただ,堀山の尾根一帯に自生する豆桜は,今が丁度見頃.少々時間を取って,デジカメで豆桜の写真を撮る.富士山は厚い雲に覆われていて全く見えない.
前方を見ると,豆桜の下をK女史が歩いている.私はK女史に,
「・・こんにちは.ご無沙汰しています」
挨拶をする.追い越すのに気が引けていると,察してか.
「男の人は足が速いから先に行ってください・・・」
と言われるので,遠慮なしに先に行かせて貰う.
■堀山の家
8時41分,堀山の家を通過する.今日は山開きの日曜日.まだ早朝だというのに堀山の家は活気づいている.残念ながら小草平からの富士山も全く見えない.
堀山の家を過ぎる辺りから残雪が目立つようになる.
「何も好き好んで.こんな日に登っているんだろう・・・」
私は,登りながら,自分自身のことが不思議でたまらなくなる.実際,無理をして山へ来なければ,家の中で快適に過ごせるのに・・・
私は,花立山荘に至る長い登り坂を喘ぎながら,ふと,例の島崎藤村の詩,
“昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪(あくせく)
明日をのみ思ひわずらふ”
・・・・・・
を思い出す.
この詩を思い出す切っ掛けは,私と同年配の井上ひさし氏が,最近,みまかったことを,急に思い出したからのようだ.人間の思考って,随分面白いなと思う.
坂道を登るという単調な動作を繰り返していると,自分がロボットのようになってしまう.まるで自動運転のような放心状態で登っている.その間に,心の中では,まるで山登りとは無関係なことを,めったやたらに,考え続けている.
そしてさらに,何で毎回細かいラップタイムを取っているんだ.なぜブログに記録を残す必要があるんだ.家の中に蓄えている資料類だって,代替わりをすれば,訳が分からないままに捨てられる運命にじゃないか・・・
<戸沢分岐手前;登山者の列>
■萱場平
8時59分,萱場平を通過する.まだ朝が早いのに,ベンチに人影がある.
半ば惰性で,毎回,萱場平の写真を撮っているが,立派な木道ができてから,泥んこに気を取られずに通過できるので,大助かりである反面,写真を撮る魅力は失われた.
立派な木道を見るたびに,新幹線の線路を連想する.なぜ,新幹線を連想するのか自分でも分からないが・・・頭の中の動作って,とても不思議だなと思う.
■雪景色の花立山荘
私は惰性で登りながら,下らないことが次から次へと頭の中に沸いてくるのに辟易とする.
9時13分,ふと正気に返ると,例の“あと7分坂”に到着している.
標準時間の7分を費やして,9時20分に花立山荘に到着する.平素,この時間には全く人気がないが,今日は山荘前のベンチに沢山の登山客が屯している.多分,どこかの山小屋に宿泊した方々だろう.
残念ながら,山荘前からも富士山は全く見えない.
花立山荘を通過すると,辺りの様子が一変する.前方には霧が掛かっている.足許の残雪が増え出す.全く眺望のない雪の露岩帯を登って,9時29分に花立山を通過する.儀式なので,霧だらけの景色の写真を撮るが,勿論,何も写っていない.
「馬鹿だよ・・お前さんは.何にも写らないのが分かっているのに,何で写真を撮るんだい・・」
もう一人の私が,私を笑う.
<花立山荘から上は別世界>
■すっかり冬景色
馬ノ瀬を過ぎると,残雪がますます深くなる.まるで真冬のような景色になる.しかし,幸いなことに今日は無風なので,決して寒くはない.
同じバスに乗っていたご常連が降りてくる.余りに早いので,私はビックリして,
「随分とお速いですね・・」
と挨拶する.
「まあ・・そんなこともないですよ.他の人と速さを較べるものではないですよ・・」
と言いながらニヤリとする.
彼の言うことは,“正に図星!”私が何時も自分に言い聞かせていることである.また,私自身,他の方から“速いですね”と言われたときに,いつもお返しに言っている言葉である.一本してやられた気分になる.
山頂直下の階段で,三角髭のTさん,続いて韋駄天のTさんとすれ違う.
「先ほどまで,晴れていてとても景色が良かったんですが,急に曇ってしまいましたよ・・」
と韋駄天さんが言う.
<花立山>
<山頂直下>
■霧の塔ノ岳山頂
雪景色の写真を撮りながら,9時51分に塔ノ岳山頂に到着する.山頂にはもう沢山の登山客が詰め掛けている.風はないものの霧が立ちこめていて,全く眺望がない.
今日の大倉から山頂までの所要時間は,丁度,2時間30分.泥んこと雪道を考慮すれば,今の私の状態では,マア,マア,というところだろう.
山頂からの眺望は全くないが,儀式だから仕方なく数枚の写真を撮る.
■ネコに会えた尊仏山荘
尊仏山荘に入る.小屋番はオールスターキャスト.先客で多少混雑している.外国人2人が沢山の荷物を広げている.山頂の気温は+5.2℃.雪景色に反して,随分と温かい.私が山荘に入ると,小屋番が,
「・・お茶ですね・・」
と言いながら,オーダーする前にお茶の準備を始める.面倒くさくなくて実に良い.
Oさんに,
「今日はOさんがいるから,ネコに会えると思って登ってきましたよ」
とお愛想を言う.Oさんは,
「そこにいますよ・・」
と言いながら目線を石油ストーブに向ける.
なるほど,ミー君が石油ストーブの前で丸くなっている.
もう一人の小屋番がミー君にちょっかいを出す.ミー君は両耳を伏せて,
「いやだよ・・」
とボデーランゲージで返信する.あいかわらす香箱を作ったままである.
「この前,お邪魔したときは“天敵さん”だったので,ミー君に会わないで帰りましたよ・・」
「こいつは,大体2階で寝ていますよ.隣の建物は寒いので,温かくなるまでは,大体2階ですね・・寝てばかりで居ますよ・・」
「ネコ(寝子)だから仕方ないですよ・・・暫く会わないと死んじゃったかと心配していますよ・・」
するとOさんが,
「死ぬまえに埋めちゃおうかな・・」
と茶々を入れる.客の1人が,
「・・このネコ,何歳ですか・・?」
と質問する.
「・・10歳ですよ・・・」
「10歳.すると人間なら70歳か.おれと同い年だな・・じゃあ,寝てばかりでも仕方がないな・・」
山荘のノートを見る.どなたかの書いた記事に「営業本部長に癒される」と書いてある.数年前にK大Nさんとの雑談で,ミー君のことを, 「こいつは営業部長だよ・・」と“あだ名”を付けた.それが,今では“営業本部長”に昇進している.ご本人(ご本ネコ)は何も知らないのに・・
その内に,ご常連のX氏,K女史が相次いで山荘に到着する.一見の客も沢山入ってくる.小屋が混雑してきたので,そろそろ退散時かなと思ったので,10時28分に山荘を出発,下山を開始する.
■雪景色を眺めながら下山
雪の下り坂なので,慎重に,慎重に,下山を続ける.途中で沢山の団体客とすれ違う.花立山荘付近でご常連に追いつかれる.その後は2人旅.
幾分,雲が高くなり,近場の山が見え出す.雪化粧した丹沢の山並みをデジカメに収めながら下山し続ける.
下山途中,何人かの顔見知りと挨拶を交わす.
登山口近くで,ヒトリシズカが咲いているのを見つける.ご同行が,
「ブログに載せなさいよ・・」
と勧めるので,写真に収める.
<大山遠望>
<豆桜と雪の三ノ塔>
<登山口近くのヒトリシズカ>
■山開祭で賑やかな渋沢
12時51分,大倉に到着する.大倉は山開きの祭りで賑やかである.バス停近くで無料の甘酒が振る舞われている.1杯馳走になる.猛烈に甘い甘酒である.
帰りのバスも,何時もに比較すると,随分と混雑している.
渋沢駅では,何時もなら間に合う電車に間に合わない.ホームで次の電車を待っていると,南口の広場がやけに騒々しい.ホームから透かして見ると,鼓笛隊がブカブカやっている.その後ろに毛槍隊が続いている.
小田原駅で特別快速高崎行の電車に乗り換えて帰宅する.
<甘酒を振る舞う大倉>
<渋沢駅のパレード>
<ラップタイム>
7:21 大倉歩き出し
7:41 観音茶屋
7:56 見晴茶屋
8:25 駒止茶屋
8:41 堀山の家
9:20 花立山荘
9:35 金冷シ
9:51 塔ノ岳山頂 着
=====================================
10:28 塔ノ岳山頂 発(+5.2℃)
10:44 金冷シ
11:05 花立山荘
11:35 堀山の家
11:54 駒止茶屋
12:17 見晴茶屋
12:29 観音茶屋
12:51 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:21
塔ノ岳 着 9:51
(所要時間) 2時間30分(2.50h)
登攀速度 1269m/2.50h=507.6m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:28
大倉 着 12:51
(所要時間) 2時間23分(2.38h)
下降速度 1269m/2.38h=533.2m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/29cd4767c1c280dff075aa19d264f39d
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b7e4841f86d8632cb084dd10ac5e087e
季節外れの雪が積もった丹沢:塔ノ岳(今年15回目)
(単独山行)
2010年4月18日(日)
■大混雑の1番バス
昨日(4月17日)の午前中まで,鎌倉は雨だったものの関東一円に季節外れの雪が降った.このところ寒くで雨ばかりの毎日が続いている.ところが今日だけは天気が良さそうである.私は早速塔ノ岳へ出掛けることにする.前回登ったのが4月14日.従って,中4日の登頂である.
暖房は要らないものの,まだ朝は寒い.でも朝が目立って早くなり,5時10分に家を出るときには,東の空があかね色に染まり,スズメが活発に囀っている.
小田原経由で6時40分に渋沢駅に到着する.大倉行バス乗り場には,ビックリするほど沢山の登山客がバスを待っている.私が列の末尾に並んでから,ほんの1~2分の間に,下り電車が到着したらしくて,あっという間に行列が2倍3倍の長くなる.何時もより数分遅れて,バスが到着する.すぐに超満員になり,数名の方がバスに乗り切れない.どうも,何時もの日曜日と様子が違うなと思ったが,誰からともなく今日は丹沢山開きの日だと教えられる.
大混雑の1番バスには,韋駄天のTさん他韋駄天組,三角髭のTさん,K女史などご常連が乗り合わせている.
■沢山の登山客
大倉バス停には,入山届の臨時受付台が設けられている.そして,受付係から,今日の塔ノ岳の積雪は15センチメートル,吹き溜まりは30センチメートル位だと聞かされる.
バスが数分遅れた.それに恒例のモタモタで,大倉を歩き出すのが7時21分と大幅に遅れた.その間に,山開きの臨時バスが,2台も大倉に到着する.久々にK大Nさんの姿も見える.お互いに,
「暫く振りですね...」
と挨拶を交わす.
歩き始めると,どうも身体が重く感じる.無理はまずいなと思って,歩き出しの速度を意識的に押さえるようにする.登山道は昨日までの雨でベットリと濡れていて,随分と歩きにくい.それに平素登山をしていない方々が数珠つなぎに歩いているので,なかなか自分のペースで歩くことができない.それでも,道幅の広いところで,登山者を少しずつ追い抜いて,丹沢ベースを過ぎた辺りで,K大Nさんに追いつく.そして,2~3分の間,雑談をしてから,一足先へ行かせて貰う.
沢山の登山者を追い抜かさせていただくが,逆に何人もの方々に追い抜かれる.そんなことを繰り返しながら,なるべく自分のペースを乱さないように歩き続ける.
7時56分,見晴茶屋を通過する.長くて急な登り坂に差し掛かる.見上げると沢山の登山客が数珠つなぎになっている.一本松を通過する辺りから,道路はますます泥んこになる.
天気予報では朝から晴れの筈だが.上空には雲が立ちこめている.
<見晴山荘上の急坂>
■豆桜が見頃
8時25分に駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間04分.前回登頂したときと全く同じラップタイムである.
堀山の尾根に出るまでの掘り割りの道は,まるで田圃のように泥んこである.歩きにくくて仕方がない.ただ,堀山の尾根一帯に自生する豆桜は,今が丁度見頃.少々時間を取って,デジカメで豆桜の写真を撮る.富士山は厚い雲に覆われていて全く見えない.
前方を見ると,豆桜の下をK女史が歩いている.私はK女史に,
「・・こんにちは.ご無沙汰しています」
挨拶をする.追い越すのに気が引けていると,察してか.
「男の人は足が速いから先に行ってください・・・」
と言われるので,遠慮なしに先に行かせて貰う.
■堀山の家
8時41分,堀山の家を通過する.今日は山開きの日曜日.まだ早朝だというのに堀山の家は活気づいている.残念ながら小草平からの富士山も全く見えない.
堀山の家を過ぎる辺りから残雪が目立つようになる.
「何も好き好んで.こんな日に登っているんだろう・・・」
私は,登りながら,自分自身のことが不思議でたまらなくなる.実際,無理をして山へ来なければ,家の中で快適に過ごせるのに・・・
私は,花立山荘に至る長い登り坂を喘ぎながら,ふと,例の島崎藤村の詩,
“昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪(あくせく)
明日をのみ思ひわずらふ”
・・・・・・
を思い出す.
この詩を思い出す切っ掛けは,私と同年配の井上ひさし氏が,最近,みまかったことを,急に思い出したからのようだ.人間の思考って,随分面白いなと思う.
坂道を登るという単調な動作を繰り返していると,自分がロボットのようになってしまう.まるで自動運転のような放心状態で登っている.その間に,心の中では,まるで山登りとは無関係なことを,めったやたらに,考え続けている.
そしてさらに,何で毎回細かいラップタイムを取っているんだ.なぜブログに記録を残す必要があるんだ.家の中に蓄えている資料類だって,代替わりをすれば,訳が分からないままに捨てられる運命にじゃないか・・・
<戸沢分岐手前;登山者の列>
■萱場平
8時59分,萱場平を通過する.まだ朝が早いのに,ベンチに人影がある.
半ば惰性で,毎回,萱場平の写真を撮っているが,立派な木道ができてから,泥んこに気を取られずに通過できるので,大助かりである反面,写真を撮る魅力は失われた.
立派な木道を見るたびに,新幹線の線路を連想する.なぜ,新幹線を連想するのか自分でも分からないが・・・頭の中の動作って,とても不思議だなと思う.
■雪景色の花立山荘
私は惰性で登りながら,下らないことが次から次へと頭の中に沸いてくるのに辟易とする.
9時13分,ふと正気に返ると,例の“あと7分坂”に到着している.
標準時間の7分を費やして,9時20分に花立山荘に到着する.平素,この時間には全く人気がないが,今日は山荘前のベンチに沢山の登山客が屯している.多分,どこかの山小屋に宿泊した方々だろう.
残念ながら,山荘前からも富士山は全く見えない.
花立山荘を通過すると,辺りの様子が一変する.前方には霧が掛かっている.足許の残雪が増え出す.全く眺望のない雪の露岩帯を登って,9時29分に花立山を通過する.儀式なので,霧だらけの景色の写真を撮るが,勿論,何も写っていない.
「馬鹿だよ・・お前さんは.何にも写らないのが分かっているのに,何で写真を撮るんだい・・」
もう一人の私が,私を笑う.
<花立山荘から上は別世界>
■すっかり冬景色
馬ノ瀬を過ぎると,残雪がますます深くなる.まるで真冬のような景色になる.しかし,幸いなことに今日は無風なので,決して寒くはない.
同じバスに乗っていたご常連が降りてくる.余りに早いので,私はビックリして,
「随分とお速いですね・・」
と挨拶する.
「まあ・・そんなこともないですよ.他の人と速さを較べるものではないですよ・・」
と言いながらニヤリとする.
彼の言うことは,“正に図星!”私が何時も自分に言い聞かせていることである.また,私自身,他の方から“速いですね”と言われたときに,いつもお返しに言っている言葉である.一本してやられた気分になる.
山頂直下の階段で,三角髭のTさん,続いて韋駄天のTさんとすれ違う.
「先ほどまで,晴れていてとても景色が良かったんですが,急に曇ってしまいましたよ・・」
と韋駄天さんが言う.
<花立山>
<山頂直下>
■霧の塔ノ岳山頂
雪景色の写真を撮りながら,9時51分に塔ノ岳山頂に到着する.山頂にはもう沢山の登山客が詰め掛けている.風はないものの霧が立ちこめていて,全く眺望がない.
今日の大倉から山頂までの所要時間は,丁度,2時間30分.泥んこと雪道を考慮すれば,今の私の状態では,マア,マア,というところだろう.
山頂からの眺望は全くないが,儀式だから仕方なく数枚の写真を撮る.
■ネコに会えた尊仏山荘
尊仏山荘に入る.小屋番はオールスターキャスト.先客で多少混雑している.外国人2人が沢山の荷物を広げている.山頂の気温は+5.2℃.雪景色に反して,随分と温かい.私が山荘に入ると,小屋番が,
「・・お茶ですね・・」
と言いながら,オーダーする前にお茶の準備を始める.面倒くさくなくて実に良い.
Oさんに,
「今日はOさんがいるから,ネコに会えると思って登ってきましたよ」
とお愛想を言う.Oさんは,
「そこにいますよ・・」
と言いながら目線を石油ストーブに向ける.
なるほど,ミー君が石油ストーブの前で丸くなっている.
もう一人の小屋番がミー君にちょっかいを出す.ミー君は両耳を伏せて,
「いやだよ・・」
とボデーランゲージで返信する.あいかわらす香箱を作ったままである.
「この前,お邪魔したときは“天敵さん”だったので,ミー君に会わないで帰りましたよ・・」
「こいつは,大体2階で寝ていますよ.隣の建物は寒いので,温かくなるまでは,大体2階ですね・・寝てばかりで居ますよ・・」
「ネコ(寝子)だから仕方ないですよ・・・暫く会わないと死んじゃったかと心配していますよ・・」
するとOさんが,
「死ぬまえに埋めちゃおうかな・・」
と茶々を入れる.客の1人が,
「・・このネコ,何歳ですか・・?」
と質問する.
「・・10歳ですよ・・・」
「10歳.すると人間なら70歳か.おれと同い年だな・・じゃあ,寝てばかりでも仕方がないな・・」
山荘のノートを見る.どなたかの書いた記事に「営業本部長に癒される」と書いてある.数年前にK大Nさんとの雑談で,ミー君のことを, 「こいつは営業部長だよ・・」と“あだ名”を付けた.それが,今では“営業本部長”に昇進している.ご本人(ご本ネコ)は何も知らないのに・・
その内に,ご常連のX氏,K女史が相次いで山荘に到着する.一見の客も沢山入ってくる.小屋が混雑してきたので,そろそろ退散時かなと思ったので,10時28分に山荘を出発,下山を開始する.
■雪景色を眺めながら下山
雪の下り坂なので,慎重に,慎重に,下山を続ける.途中で沢山の団体客とすれ違う.花立山荘付近でご常連に追いつかれる.その後は2人旅.
幾分,雲が高くなり,近場の山が見え出す.雪化粧した丹沢の山並みをデジカメに収めながら下山し続ける.
下山途中,何人かの顔見知りと挨拶を交わす.
登山口近くで,ヒトリシズカが咲いているのを見つける.ご同行が,
「ブログに載せなさいよ・・」
と勧めるので,写真に収める.
<大山遠望>
<豆桜と雪の三ノ塔>
<登山口近くのヒトリシズカ>
■山開祭で賑やかな渋沢
12時51分,大倉に到着する.大倉は山開きの祭りで賑やかである.バス停近くで無料の甘酒が振る舞われている.1杯馳走になる.猛烈に甘い甘酒である.
帰りのバスも,何時もに比較すると,随分と混雑している.
渋沢駅では,何時もなら間に合う電車に間に合わない.ホームで次の電車を待っていると,南口の広場がやけに騒々しい.ホームから透かして見ると,鼓笛隊がブカブカやっている.その後ろに毛槍隊が続いている.
小田原駅で特別快速高崎行の電車に乗り換えて帰宅する.
<甘酒を振る舞う大倉>
<渋沢駅のパレード>
<ラップタイム>
7:21 大倉歩き出し
7:41 観音茶屋
7:56 見晴茶屋
8:25 駒止茶屋
8:41 堀山の家
9:20 花立山荘
9:35 金冷シ
9:51 塔ノ岳山頂 着
=====================================
10:28 塔ノ岳山頂 発(+5.2℃)
10:44 金冷シ
11:05 花立山荘
11:35 堀山の家
11:54 駒止茶屋
12:17 見晴茶屋
12:29 観音茶屋
12:51 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:21
塔ノ岳 着 9:51
(所要時間) 2時間30分(2.50h)
登攀速度 1269m/2.50h=507.6m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:28
大倉 着 12:51
(所要時間) 2時間23分(2.38h)
下降速度 1269m/2.38h=533.2m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
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「丹沢の山旅」の次回の記事
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