<塔ノ岳山頂直下から見た富士山>
まるで初夏のような丹沢;塔ノ岳(今年18回目)
(単独山行)
2011年4月16日(土)
■土曜日の天気予報にやきもき
このところ,天気予報がめまぐるしく変わっている.つう数日前の予報では,土曜日は雨.私は塔ノ岳詣でを半ば諦めていた.ところが,昨日の予報では,明け方までは雨だが,その後,8時頃からはという予報に変わった.それならば,当然,塔ノ岳に行くに如かず.私は4時に起床して,すぐに登山の支度を調える.
早い朝食を済ませて,5時10分に家を出る.意外に温かい.ところが,外は霧雨,路面がグッショリと濡れている.
「どうしよう・・」
私の決心は少々揺れる.でも,最悪,雨で,塔ノ岳に登れそうもなかったら,小田原城址公園でも散策しようと腹をくくる.リュックを背負って公園を散策するのも妙な感じだが,それもやむを得ないだろう.
■土曜日にしては空いている1番バス
大船5時44分発小田原行の電車に乗車する.土曜日の休日だというのに電車はガラ空きである.結局,今日も4人掛けのボックス席を独り占めしたままである.
渋沢発大倉行の一番バスに乗車する.どうやら,当初の天気予報が悪かったのが響いたのか,土曜日にしては,立ち席もなく,かなり空いている.丹沢ウッズさん,韋駄天のTさん,U村さんなど蒼々たる顔ぶれのご常連が乗っている.
韋駄天のTさんが,私の隣に座る.そして,雑談.
「もう,FHさんの同級生で山に登っている人など居ないでしょう・・」
言われてみれば確かにその通りである.高校同学年の方々は,もともと300人.馬齢を重ねる毎に目減りする.そして,昨年1年間だけで,8名もの友人が,来世に旅立ってしまった.
私ぐらいの年齢になると,平坦なところでも,サッサと歩ける方はごく僅かしか居られない.
そんなことから考えると,私は特に健康だという自覚はないが,兎にも角にも,特段,身体に痛いところもないし,常備薬も必要ない.これは有り難いことなのだなと改めて思い直す.
バスは7時少し前に大倉に到着する.韋駄天のTさんは直ぐに歩き出す.U林さんはご常連の女性と一緒に鍋割山方面に向けて歩き出す.
丹沢ウッズさんは,塔ノ岳から蛭ヶ岳を走り抜けるとのことである.韋駄天組よりやや遅れて丹沢ウッズさんも出発する.
例によって,私がモタモタしている内に大半の登山客は出発してしまう.私は,何時ものように,
「何で,何時もこんなに要領が悪いんだろう・・」
と自分自身に憤慨しながら,7時10分に漸く歩き出す.
<見晴山荘からの急坂>
■やや遅いラップで駒止茶屋を通過する
登山道は意外に乾いている.とても歩きやすいが,何と言っても身体が重いので,歩き出しはユックリペースでしか登れない.山麓は今春のたけなわ.バス停近くのザクラが見頃である.勿論,花の写真を撮りながら,体力を消耗しないように注意して登り続ける.このとき,既に気温は20℃近くに達している.
空には厚い雲が低く垂れ込めている.結構強い海風が吹き上げている.登山道両側の杉の木が風に吹かれてザワザワと音を立てている.そんな登山道を私はノンビリと登り続ける.私は,前方を歩いている登山者を何人か追い抜くが,逆に若い方々に追い抜かれる.
長くて辛い急勾配の階段を,やっとの思いで登りきって,8時15分に駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間05分.1時間を5分もオーバーしている.
「まあ,(自分の体力を考えれば)仕方ないな・・・まあ,こんなもんだろうな・・」
と記録を再確認する.
■堀山の富士は雲の中
堀山の尾根に到着する.ここから暫くの間は平坦な道が続く.尾根から東側を眺めると,下界からもくもくと雲がわき,表尾根の山々が次第に雲の中に消えていく.
反対側を見ると,空は大分明るいものの富士山は立ち上る雲の中で全く見えない.それでも私は未練がましく,雲しか見えない風景を写真に収める.
「バカだな,オマエは・・・雲なんか写真に撮ってどうするんだ・・」
と私の心の奥底に巣くっているもう一人の私が,私を蔑むようにして笑っている.
でも,所定の場所に来たら,何が何でも所定の写真を撮らないと気が済まないから困ったものだ.
<湧き上がる雲と表尾根>
■堀山の家
8時31分に堀山の家を通過する.まだ,早い時間なので,堀山の家は開店していない.気温は先ほどより少し下がって,14.0℃.
堀山の家の手前で,私を強引に追い抜いた中年男性が,小草平のベンチに,へたり込むように座り込む.平素から,私は登攀速度は遅いけれども,大倉から山頂まで休憩は取らずに,そのまま登り続けることにしている.私は,
「とりあえずお先に・・」
と挨拶して通過する.
ここから花立山荘まで傾斜が急な登り坂が連続する.途中の萱場平には,ほんの少しだが平らなところがある.その他は,急な傾斜の登り坂が連続している.
登り始めると,今日は,案外,楽に登れそうな気分になる.歩き始めに感じた身体の重さは,何時の間にかなくなっている.
■萱場平
8時49分,萱場平に到着する.例によって,定点写真を撮るつもりである.ところが,つい先ほどまでかなりの先を歩いていた男性に,何時の間にか接近していて,画面に入ってしまう.ここで,足を止めて,少し間を空けてから写真を撮れば良いのだが,立ち止まると歩くリズムが狂ってしまう.
「まあ・・良いか・・」
で,男性の後ろ姿入りの写真を撮る.
■ご常連を追い越さないように・・
9時03分,後7分坂に到着する.前方にご常連の後ろ姿が見え始める.あまり接近しても悪いなと思いながら登り続ける.上空の雲が薄くなり,空が明るくなり始める.
登り坂が間もなく終わろうとする頃,二人連れのご常連が下山してくる.先頭のご常連が,私に,
「おや,今日は随分速いですね・・」
と話しかける.私は怪訝な顔をしていると,
「今,そこのガレ場で韋駄天のTさんとすれ違ったばかりですよ・・」
と言う.
私も何だか変な感じがする.私はTさんより,10分ほど遅く歩き出している.ガレ場が花立山山頂とすれば,ここからの所要時間は約10分.お二人がガレ場からここまで下ってくる時間はせいぜい5分.すると,Tさんと私の距離は15分.私が10分遅れの出発だったので,正味の時間差は5分程度ということになる.
お二人とは,ほんの30秒程度立ち話をしただけですれ違う.その間に,前を行くご常連との距離が幾分広がった.急ぐ旅でもないので,このご常連との距離は,この程度に保ったまま登り続けることにする.
後7分坂を,規定値通り7分で登って,9時10分に花立山荘に到着する.大倉を歩き出して丁度2時間.まあ,まあ,こんなものだろう.
花立山荘には,まだ,人の気配はなく,静まり返っている.富士山は雲の中.眺望は全くないが,雲だけの景色を写真に収めて,登り続ける.
<花立山山頂>
■金冷シ
背中から淡い太陽のぬくもりを感じながらガレ場を登る.相変わらず富士山は雲の中である.それでも,雲ばかりの写真を数枚撮りながら,8時08分に花立山を通過する.
馬の背に差し掛かる頃,足許の土が濡れているのに気がつく.山頂付近には降雨があったようである.
前方を歩くご常連とは,同じ間隔を保つようにしながら歩き続ける.
9時21分,金冷シを通過する.前回までは,この辺りから泥道になっていたが,今日は土壌が濡れてはいるものの,泥濘の箇所は全くなく,とても歩きやすい.
何時の間にか上空には青空が見え始めている.
階段道を登っていると,木の間から真っ白な富士山が見え出す.富士山の山麓には雲海が広がっている.実に見事な富士山だ.私はすかさずデジカメを取り出して,富士山を写真に収める.
■韋駄天のTさんとすれ違う
山頂直下の階段で,下ってくる韋駄天のTさんとすれ違う.
「今日の山頂は,+7℃.暑いですね・・」
とTさんが教えて暮れる.二言,三言立ち話をしてから,お別れする.
昨年の4月17日には,丹沢に季節外れの雪が降ったことを思い出す.
私は妙な気分になる.先ほど推察したように,もし私との時間差が15分程度ならば,こんなに早い時間にすれ違うことはないはずである.おかしいなと思いながら,
「まあ,どうでもいいや・・些細なことだから・・」
と思いながら登り続ける.
■チャンピョンが下りてくる
山頂直下の木製の階段を登る.上から階段脇の斜面を下ってくるチャンピョンとすれ違う.早速デジカメに収める.画面の中にはチャンピョンと私の前を行くご常連の後ろ姿が写っている.
<チャンピョンが下って,ご常連が登る>
■塔ノ岳山頂.
9時36分に塔ノ岳山頂に到着する.今日の大倉から山頂までの所要時間は2時間26分.この所,所要時間が2時間25~30分程度で安定しているので,まあ,この辺りが,現在の私の実力なんだろう.数年前に比較すると,やっぱり5分程度遅くなっているようである.
山頂からの富士山は,何とも素晴らしい.山麓にはモクモクとした雲が棚引いている.南アルプスは,残念ながら雲の中である.富士山の後ろにはうっすらと白い雲が掛かっている.その雲の手前に,7~8合目まで雪を被った富士山が見えている.
私は塔ノ岳山頂を移動しながら,色々な角度から富士山の写真を撮る.
尊仏山荘の手前,ネコ御殿まで移動すると,2頭の鹿が盛んに草を食(は)んでいる.もしネコ御殿の2階の窓際にネコが居たら,富士山,鹿,ネコを入れた珍しい写真が撮れるのに,残念ながらネコ不在.
富士山と鹿の写真を数枚撮ってから,尊仏山荘に向かう.
<シカと富士山>
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.先客は先ほど私の前を歩いていたご常連お一人.小屋番はオーナーのHさん.例によって300円也のお茶を所望する.山頂の気温は+8.0℃.お茶を飲みながら,暫くの間,とりとめもない雑談を続ける.
ふと,先ほどの韋駄天のTさんのラップタイムが気になる.個人的なことだとは思いながら,Hさんに,
「何時もTさんは,こちらに何分ぐらい居られるんですか・・?」
と伺ってみる.
「Tさんですか? ここに到着すると直ぐにコーヒーをお出しするんです.すると,サッサとコーヒーを飲んで,ほんの2~3分で下山されますよ・・」
とのこと.
なるほど! ガッテン.私はTさんが20~30分程度は山荘に居られると思っていた.それで,どうも間尺が合わないなと思っていた.まあ,どうでも良いことだが・・
そんな話をしていると,2階からミー君がのっそりと下りてくる.
「おい,ミーや・・オマエここ居たのか・・」
とデジカメを取り出す.するとミー君はもう居ない.
「あれっ! 何処へ行った?」
と不思議がる,すると,Hさんが,
「台所へ行ったんですよ,餌が欲しかったんでしょう」
と苦笑いする.
すぐに,ネコが再び姿を現す,そしてバケツに顔を突っ込んで,水をピシャピシャと飲み始める.その姿をデジカメに収める.
この所,ミー君も大分老け込んできたようである.ここ1年ぐらいの間に,毛並みの艶が大分無くなってきた上に,右目の調子が悪そうである.
「オマエ,元気で居なさいよ・・」
と言いながらネコの頭を撫でる.
<水を飲むミー君>
■K大N氏
今日は,大倉発12時40分のバスに乗ろうかと思う.そこで,充分に時間を取って,10時10分に下山を開始する.先ほどまで山頂には,ほとんど人影はなかったが,たった30分ほどの間に,随分と賑やかになっている.気温は+9℃まで上がっているが,いきなり外へ出ると,やっぱり寒い.花立山荘まで下れば温かくなるのが分かっているので,そこまでは,少しピッチを上げて下ろうと思っている.
登ってくる登山客とすれ違いながら下り続ける.
金冷シ手前の坂道を下っていると,下から長身で姿形の良い紳士が登ってくる.K大N氏である.
「こんにちは,暫く振りです.2番バスですか?」
とお尋ねする.足許を見て登っていたK大N氏は,私の方を見て,
「やあ,暫く,2番バスです.ようやくここまできましたよ・・」
と挨拶する.再会を約してお別れ.
<山頂からの富士山・棚引く雲が綺麗だ>
■山旅スクール6期の元気印
木々の間に見え隠れする富士山や鍋割山稜の山々を眺めながら,馬の背を通過して,10時25分頃,花立山山頂に到着する.山頂の木道をボンヤリと歩いていると,前方から来た2人の女性に,
「あら・・FHさん.お会いできて嬉しい・・!」
と話しかけられる.ガチャ目の私は,直ぐにはどなたか見分けが付かない.でも,少し近付いて,山旅スクール6期の元気印の面々だと分かった.
「だれか知っている人と会わないかなと思いながら登ってきました・・写真撮らせて下さい」
私の写真など撮っても一銭の価値もないのだが,それぞれの方とツーショットを撮る.ここで5分ほど懐かしい立ち話.私もお二人の写真を撮る.
「FHさん,足を怪我したそうですが,大丈夫ですか?」
と私に聞く.
”えっ!・・えぇ・・? 何時のこと?”
私は戸惑う.そういえば昨年,大船駅前で,躓いた拍子に右足脹ら脛を軽く肉離れした.そのとき,2週間ほど丹沢をご無沙汰した.
飛んでもないところまで,噂が広まっているのにビックリ.
私のブログに,お二人の写真を載せて良いかと聞くと,“どうぞ,どうぞ”とのこと.山旅スクールの皆さんに元気で居ることが伝えられれば有り難いということなので,敢えて掲載する.ただし,お名前は伏せておく.
もし,このブログをご覧になっている山旅スクールご関係の方々が居られたら,彼女らが元気で山旅を楽しんでいるとお察しいただきたい.
<山旅スクール6期の元気印2人組>
■小屋番Oさんとすれ違う
10時55分に萱場平を通過する.堀山の家を目指して階段道を下っているときに,下から登ってくる尊仏山荘の小屋番Oさんとバッタリ.長靴を履いておられる.
「もう,足の方は・・大丈夫!」
「ン・・まあ,大丈夫です.・・・で,ネコに会いましたか・・」
「きょうはOさんが居ないので,ネコに会えないかと思っていました.でも,偶然,会いましたよ・・」
Oさんはネコのことが気になるようである.
「来週は,Oさん,(尊仏山荘に)居られますよね・・」
「首にならない限り,居りますよ・・是非,上がってきて下さい」
と一言多いお返事が返ってくる.
「じゃ~ぁ・・お天気を見計らって,来週中頃,登っていきますよ・・」
<Oさんが登る>
■見頃な桜
下るにつれて気温がどんどんと上がってくる.見晴山荘手前の急坂を下っていると,すこしムッとするような湿気を感じ始める.
見晴山荘近くまで下る.登山道の両側にある桜が正に見頃.豆桜(?)と言うのだろうか.小さな花がビッシリと咲いている.数輪に花だけを浮き上がらせて写真に撮りたいが,コンデジでは被写体深度を調節することが難しい.歯がゆい思いをしながら数枚の写真を撮る.
<見晴山荘付近の桜>
<大倉バス停付近にて>
■気分は最高
バスの時間に会わせながら,ユックリと下山を続ける.
12時25分に,無事,バス停大倉に到着する.この辺りの桜は今が見頃.沢山の観光客が花見に来ている.バスは,何時もの土曜日よりは混雑している.
塔ノ岳をひと登りしてくると,暫くの間は満ち足りた気分が続く.私はリラックスした気分のまま,小田急線,東海道本線の電車を乗り継いで,14時少し過ぎに帰宅する.
早速,少し熱い風呂を沸かして入浴.気分は最高である.
<ラップタイム>
7:10 大倉歩き出し
7:30 観音茶屋
7:46 見晴茶屋
8:15 駒止茶屋
8:31 堀山の家
9:10 花立山荘
9:21 金冷シ
9:36 塔ノ岳山頂 着(+8.0℃)
=============================================
10:10 塔ノ岳山頂 発
10:20 金冷シ
10:37 花立山荘
11:11 堀山の家
11:28 駒止茶屋
11:55 見晴茶屋
12:08 観音茶屋
12:25 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:10
塔ノ岳 着 9:36
(所要時間) 2時間26分(2.43h)
水平歩行速度 7.0km/2.43h=2.88km/h
登攀速度 1269m/2.43h=522.2m/h
■下降所要時間(雑談時間を含む)
塔ノ岳 発 10:10
大倉 着 12:25
(所要時間) 2時間15分(2.25h)
水平歩行速度 7.0km/2.25h=3.11km/h
下降速度 1269m/2.25h=564.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c189995a92d9ad0ca9cf60cc74edb11c
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/50b155d411470d0e2a8ee8cf5a801aa0
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あれから気持ちを立て直すのに....
やはり、毎週やらないと弱ります
日曜日のK女史も毎週日曜日に来ています
初めてK女史にお会いした時には
確か一番バスの先頭で歩いてました
FHさんも日々精進の蓄積があればこそで
素晴らしい快挙の連続だと思います
また、楽しみにしています
コメント有り難うございました.
土曜日,久々にお目に掛かれて,大変嬉しかったです.相変わらずお元気で何よりです.
日曜日のK女史は,私より年齢が1才弱上.K女史の元気に私も随分と励まされています.
塔ノ岳に登ると,何時もご常連さんの元気な姿に勇気づけられています.
今後ともよろしくお願いします.