丹沢:鍋嵐・辺室山縦走(2)
(山旅スクール山岳会)
2007年12月2日(日)(つづき) 曇り時々晴
(前回の記事からのつづき)
<地図にない登山ルート>
■本厚木に集合
何時ものように,早朝,4時に起きてしまう。そうなると,どうせ出掛けるのに,何時までも自宅でグズグズしているのでは,どうもおさまりが悪い。平素,塔ノ岳に登るときには,5時10分に自宅を出発している。今日は小田急線本厚木駅8時集合である。だから,いくら何でも,5時10分に自宅を出たのでは早すぎる。暫くの間,居間でジリジリとしながら時間の経つのを待っていたが,どうにも間が持てずに,5時30分頃,遂に家を出てしまう。
大船駅前のコンビニで,大分時間を掛けて昼食用のオニギリと若干の食料品を購入する。そして,大船発6時04分静岡行に乗車,藤沢で小田急線に乗り換えて,7時07分に本厚木駅に到着する。まだ時間が十分あるので,構内のソバ屋で,朝食代わりに,軽くソバを食べる。
■唐沢キャンプ場を出発
本厚木駅で時間を潰している内に,集合時間になる。集合時間10分前には,参加者全員が集合する。全員が,とてもパンクチュアルなことが,山旅スクールの良いところである。今日の参加者は十名程度。ガイドはサンダーNさん(以下Nさん)である。
駅前から東横交通のタクシーに分乗して,8時35分に唐澤キャンプ場(標高315m)に到着する。
今日の山行のテーマは「読図」である。早速,25,000分の1地形図で現在地,唐沢キャンプ場の位置を確認する。ちなみに今回使用する地形図は『大山』『厚木』および『上溝』の3枚である。
今回のコースの核心部に当たる鍋嵐周辺の登山道は,残念ながら地形図には掲載されていない。また,昭文社発行の山と高原地図『丹沢』にも,鍋嵐の核心部の情報は,何も掲載されていない。
地形図と,あらかじめ調べたインターネットの記事を参照にしながら,現場で進むべき方向を見定める。現在地の南西100メートルほど先に見える赤い橋を目指して,9時12分に歩き出す。間もなく赤い橋を渡って,中津川右岸に出る。そこから中津川の支流,唐沢川をほんの少し遡る。
<最初に渡る赤い橋> <次の橋には「渡るな」の注意>
■渡れない橋
鍋嵐へ登るには,唐沢川を渡らなければならない。目の前に偉く老朽化した吊り橋がある。床板は苔むしていて,ワイヤーには蔓草が巻き付いている。橋の近くには「この吊り橋を渡らないで下さい」と書いた案内板が建っている。
なるほど見るからに危なっかしい橋である。ガイドのNさんが,橋を調べに,ほんの一寸,橋を渡ってみる。その瞬間,私は,なぜカラビナとロープで自分を確保しないまま不用意に渡り始めるのか心配になる。もし,ガイドが怪我でもしたら,今日の山行は中止になってしまうだけでなく,山旅スクールにも大きな影響が出てしまう・・・
それは兎に角,ガイドの判断だと,この橋の床板が人の重さに耐えられそうもないほど腐っていて,危険極まりないという。そこで,私達は,大きな石がゴロゴロと転がる川を1人ずつ順番に渡る。
一足先に対岸に渡った私は,早速,登山道を探す。堆積した草ぼうぼうの河岸は一寸した広場になっているが,その先には高さ1~2メートルの崖が連なっている。良く見ると崖の南端から,枯葉が厚く降り積もった踏み跡らしいものが見える。
<渡れない橋:橋桁やワイヤーが欠損している>
<川を渡る> <素晴らしい紅葉を登る>
ガイドの承認を得て,皆より一足先に,この踏み跡を辿ると,少し登って直ぐに折り返し,目の前の崖の上をトラバースする。そこから先は,踏み跡はほとんど見えなくなっている。
目の前には,やや急傾斜だが,幅の広い尾根が南東の方向に続いている。この尾根の形は地形図で想像していた尾根の形と同じである。私は,この尾根が鍋嵐に繋がる尾根に違いないと確信する。
尾根は広葉樹林に覆われていて,すばらしい雰囲気を醸し出している。尾根を登りながら,辺りの特徴を地形図と照らし合わせながら,照合する。そして,尾根の向きがどちらへ伸びているかを絶え間なくチェックする。
この辺りからは,踏み跡が殆どないので,尾根筋を直登し続ける。直登するにつれて,尾根の方向は,次第に東から東北東に変わっていく。
<落ち葉が厚い斜面を登る> <ヤセ尾根のトラバース>
<ヤセ尾根を行く>
■最初の小ピーク
途中,10時24分,標高555メートル付近の勾配が緩やかな斜面で休憩を取る。
休憩を取っている地点は,地形図の等高線の間隔が広がっているところなので,自分たちの位置を正確に確認することが容易である。ここから先は,尾根がやや北の方向に曲がって,北東に向かう。そして,等高線の間隔が狭まっていく。つまり,上り勾配が次第に急になることが予想される。
11時06分,休憩を終えて,再び歩き出す。歩いている尾根は,予測した通り,次第に北東に向きが変わる。やがて,左手から南東に伸びている大きな尾根が接近してくるのが見える。地形図を見ると,私達が登っている尾根と,この尾根が合流する地点は小ピークになっていて,このピークから合流した尾根は,ほんの少し下って鞍部を形成した後,ほぼ東に向かって延びている。
このまま登っていくと,多分,この鞍部に突き当たるだろうと予測できるが,本当に予測した通りになるか,それともどの程度,どちらに振れるか,大変興味深い。
ユックリとした足取りに焦れったくなった私は,鞍部と予想される場所から標高差20メートルほど手前から,ガイドの承認を得て,自前の速い速度で,一気に登ってみる。そして,10時53分に鞍部(665m)に到着する。到着した場所は,予想とピッタリ一致している。予想が当たるのも快感である。
辺りは草に覆われた凹地になっている。登った位置から左側,つまり,北西にほんの数十メートル離れたところに,尾根の合流点の小ピーク(675m)がある。小ピーク周辺は広葉樹林で覆われている。反対側の右手前方,つまりほぼ東側には,これから登る次の小ピークが見えている。
私達は,この小さな広場で再び休憩を取る。
<急坂を登る> <ヤセ尾根から宮ヶ瀬湖が見下ろせる>
■ヤセ尾根が続く
11時06分に鞍部から歩き出す。小さなピーク(730m)を目指して,尾根に沿って東へ進む。やがて,進行方向左手(つまり北東)から,大きな尾根が合流する。この合流点が,2番目の小ピークである。
この小ピークから,尾根は東北東に方向を変える。小ピークから,標高差でほんの10数メートル下ると尾根は次第にヤセてくる。小さな上り下りを繰り返しながら,11時28分頃から,長いヤセ尾根を慎重に歩き続ける。
ヤセ尾根からの見通しはとても良い。北側の眼下に,宮ヶ瀬湖の素晴らしい風景が広がっている。途中で足を止めて,眼下に見える宮ヶ瀬ダムの絶景をデジカメに収める。歩き進むにつれて,至る所から素晴らしい紅葉を堪能することができる。
12時12分,西南西の方向から尾根が合流する(800m)。この合流点から100メートルほどの間,尾根は水平になる。ここで小休止する。
<鍋嵐山頂に到着>
■分かりにくい尾根筋
12時14分,水平な尾根を出発する。直ぐに尾根は二つに分かれる。一方は北北東に,他方は南に続く。道なりに進むと,つい北北東の方向に進みたくなるが,実際は坂を下って南の尾根に入らなければならない。
このトリッキーな地形を地形図から正確に読みとるのが,地図読みの醍醐味になる。
Nガイドが,懇切丁寧に地形図の見方を指導する。
<鍋嵐山頂手前の急坂> <ナベワラシ山頂>
■鍋嵐山頂で昼食
尾根に沿って,標高765メートルまで下って,そこからかなり急な登り坂を,標高差で100メートルほどを,喘ぎながら登り続ける。そして,12時38分に,待望の鍋嵐山頂(835m)に到着する。
山頂には3方向からの尾根が集まっている。それ程広くない山頂近くの木に「ナベワラシ」と書いた木片が打ち付けてある。
私達は山頂付近に適当に座りこんで昼食を摂る。座ってジッとしていると,途端に寒くなる。
(つづく)
「鍋嵐・辺室山縦走」の前回の記事
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「鍋嵐・辺室山縦走」の次回の記事
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