中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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梅雨の合間に神奈美展を楽しむ(2)

2009年06月29日 07時23分38秒 | 閑話休題:日々雑感

                     <I氏作「甘縄/神輿ヶ谷」>

           梅雨の合間に神奈美展を楽しむ(2)
                (単独散策)
           2009年6月27日(土)(つづき)

 会場の神奈川県民ホールに入る.
 広い会場である.天気の良い土曜日だというのに,閑散としている.
 私は,最初に油彩から見ることにする.
 いきなり,素晴らしい絵が,ズラリと並んでいる.その量感に圧倒されてしまう.受付で頂いた出展目録を見ながら,作品を一つひとつ丁寧に見て回る.ただ,陳列順と目録の掲載順が一致していないので,少々苦労する.

 その内に,友人のIさんの絵、2枚の前に立つ.

 まず1枚目.この記事冒頭の絵「甘縄/神輿ヶ崎」である.
 この絵は,先日開催された「絆の会」の展示で拝見したのと同じ絵である.すでに,当ブログでも感想を述べているので,今回はグダグダと感想を述べるのはやめよう.私がこの絵の前に立ったときに連想した物事だけを一言添えることにしたい.
 私がこの絵を拝見したとき,まず目に入ったのが,絵の中央に書かれている明るい市街地の様子である.この絵の左右と下は濃緑の薄暗い所である.その先に明るい市街地がある.その中央に大きな木が立ちはだかるように生えている.この木によって,画面が二分されているので,正直な所,最初にこの絵を拝見したときに,違和感を感じてしまう.この絵は,暗い現在から明るい未来を期待しているかの印象を与えるが,この一本の大きな木が,
 「ちょっと待て! そう安易には明るい未来は描けないぞ」
と暗示しているかのように立ちはだかる.ところが,良く見ると,この木には明るい日差しが当たっている.怖い顔をしながら「お出でお出で」をしているかのような印象を与える.
 この木は,絵の中で少々邪魔な存在のようにも見える.しかし,もしこの絵から,この木を取り除いた絵を想像してみよう.すると,中央の木が画かれていないこの絵からは,何のストーリーも聞こえてこないことに気が付く.つまり,邪魔な存在のように思える木が,この絵の中で重要な存在なのである.
 そう思いながら,この絵を改めて見直す.でも,やっぱり,中央の木が気になる絵である.
 会場で,Iさんに会う.私は,この感想を,Iさんには言いそびれている.
 蛇足だが,この絵は,鎌倉市長谷にある甘縄神明社の社殿前から由比ヶ浜を見下ろして描いた作品である.甘縄神明社は,長谷の鎮守で,祭神は天照大神.710年(和銅3年),行基が草創,由比の長者染谷時忠が建立した鎌倉で一番古い神社である.源頼義が,甘縄神明社に祈願して八幡太郎義家を授かったという.こんなことから,源氏と縁がある神社として信仰されている.

 2枚目は,Iさんの「金沢文庫称名寺」の絵である.Iさんはこの絵で横浜市教育委員会賞を受賞している.

                <Iさんの作品「金沢文庫称名寺」>

 私はこの絵を拝見して,Iさんの作風が少し変わったことに気が付く.正直な所,この絵の中の社殿の描き方に,Iさんもこのような絵を描くんだと,ビックリした次第である.
 この絵から,ふんわかとした長閑な情感が伝わってくるのが心地よい.
 また,Iさんの絵には,決まって濃緑の暗い部分があるのも面白い.この絵では,上部に暗い木の枝が画かれている.その下に日光が当たるさわやかな新緑が光っている.そして,やや暗い建物,さらにその下に鮮やかな赤い橋・・・というようにコントラストの妙がこの絵の神髄のような気がする.そして,画面下の左右に咲く黄色い花と,赤い橋のコントラストが,この絵を一層引き立たせている.
 金沢文庫は,奈良の東大寺,京都の東寺とともに,日本三大古文書の宝庫と言われている.某専門家によると,現在,金沢文庫に残る古文書の解読が進められているが,全部解読するのに,まだ20年も掛かるという.さらには,明治,大正,昭和時代の資料も沢山残されていて,戦時中でさえ,憲兵が金沢文庫に手を出すことはしなかったという.の
 また,徳川家康が金沢文庫から,良い物ばかり,長持20箱分(ダンプカー20台分)も持ち出し,これを江戸城に入れた.そして,自分が隠居後,その一部を徳川御三家に形見分けした.
 その後,尾張の分は,戦争中に信州に疎開していたので残ったが,水戸,和歌山の分は戦火で焼失した.江戸に残った物は宮内庁文庫として保管されているが,一般公開していない.
 金沢文庫としては,明治時代から,家康が収奪した資料を,全部返して欲しいという運動をしてきたが実現しない.ただ副本は金沢文庫に集まっているという.
 あの諸国漫遊伝説の水戸光圀は,金沢文庫印をできるだけ消してしまえと指示したという.やっぱり収奪品だと知っていたので「きがひけたんだろう」と専門家は言う.
 まあ,金沢文庫に係わりのあるゴシップは沢山あるが,真偽のほどは素人の私には分からない.
 私は,I画伯の絵を拝見しながら,聞き覚えのある金沢文庫のゴシップを思い出していた.
                           (つづく)
「神奈美展」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/a877b70ca28379d08b12746435843e7f
「神奈美展」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/fd04e33e184e7166b52f852f199cd834



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