<京都駅「幕の内お弁当」>
趣味三昧;駅弁回顧録:昭和57年京都駅「幕の内おべんとう」
2012年8月31日(金)
※駅弁回顧録のつづき
昭和57年3月28日
この駅弁の包装紙は,横幅がA4より少し大きいので,手持ちのスキャナーから少しはみ出してしまった.したがって一部欠損している.
この包装紙,如何にも京都らしく豪華である.「萩の屋」というところが製造販売したもの.
包装紙の片隅に「祝;新幹線新大阪-岡山開業10周年 国鉄」と印刷されているのが時代を感じさせる.
それにしても美しい包装紙である.包装紙の片隅に印刷されている説明文によると,この写真は平安神宮.3月ということで梅の花が満開である.素晴らしい包装紙で私の宝物である.
今となっては,この日,逍遥で京都にいたのか,それとも行楽で出掛けたのか直ぐには分からない.日記帳を子細に調べれば分かるだろうが面倒なので,分からないままにしておこう.
短い年月だが,私は京都で学生時代を過ごしたことがある.もう50年以上も前のことなので,茫漠の過去の日々が,それこそ色あせたセピア色のように思い出す.
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私は,この駅弁の包装紙を眺めながら,急に昔のことが懐かしくなった.
丁度整理し終えた古いアルバムを取り出してみる.昭和34年(1959年)10月,私は修士論文の取り纏めに多忙を極めていた.丁度そのとき,信州から母が友達と一緒に京都・奈良に観光旅行に来るという.私は忙しかったが,不承不承,2日間ほど母にお付き合いした.
当時,私は母のことを随分なお年寄りだなと思っていたが,今私は,このときの母の年齢を大きく通り越している.このアルバムに写っている母は,今見ると随分と若い.
親孝行をしたいなと思ったときには,もう両親は旅だった後である.
このときの写真は,夜中に,下宿の押し入れの中で,自分で焼き付けたものである.下手な写真だが,往時のことが沸々と思い出される.
冒頭の駅弁の包装紙から,とんでもないところに話題を転じてしまったが,今,思い起こせば,ほとんど親孝行をしたことがなかった私にとって,このとき母と旅行したことが,数少ない親孝行だったと思う.
この写真を見ていると,母への懐かしさで,柄にもなく,感極まって,涙ぐんでしまう.
私が,旅だって母と再会する日も,そう遠くないうちに必ずやってくる.その日が何時になるかは神仏のみ知るだけで,私には分からない.
でも,今の母を慕う気持ちだけは,何時までも大切にしておこうと思う.
たった1枚の駅弁包装紙.
でも,この1枚を眺めている内に,茫漠としたセピア色の過去を懐かしく思い出す.
(つづく)
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