<凛とした冬の丹沢>
強風吹き荒れる深雪の丹沢;塔ノ岳(今年7回目)
(単独山行)
2012年2月1日(日)
■何だか億劫
あれよあれよというまに今日から2月である.
それにしても,例年になく寒い日が続いている.本来閑人間の筈の私も,何かと多忙だったり,また,寒さにかこつけてサボったりで,結局,1月の塔ノ岳詣では6回で終わってしまった.そこで挽回の意味も兼ねて,
「今日こそ塔ノ岳へ行くぞ・・・」
と昨夜から,自分に言い聞かせている.
有料サイトの天気予報では,8時頃から12時頃までは曇で,その後は晴れだという.ただし,強風に注意とのご託宣である.
何時ものように5時10分に家を出る.外へ出ると,轟轟と風の音が騒がしい.
「この分だと,塔ノ岳山頂では強風が吹き荒れるな・・・」
私は何回となく,今日の丹沢行きは中止にしようかと思いながら,近くのモノレール駅へ向かう・・・が,結局,惰性でそのままとにかく行こうと決める.
登山の服装でホームに立っていると,私の近くに居るオバサンが話しかけてくる.
「山へ登られるんですか.どこの山なんですか・・?」
「ええ・・まあ,丹沢の塔ノ岳へ行くつもりです・・」
「山は大変ですね.わたしも,時々,鎌倉中央公園まで登るんですが,大変で,大変で・・・」
私はニの句が継げなくなる.
でも,世の中には,いろいろな方が居られるので楽しくなる.
■途中までゲザンシュタインさんにご一緒る
例によって,小田原で乗換の駆けっこをして,ヤットコ,サットコ,小田急電車に滑り込み.これもう後は安心.
2月ともなると,夜が明けるのが大分早くなっているらしい.つい先日までは,電車が新松田辺りを過ぎる頃,漸く辺りが薄明るくなり始めていた.でも2月になると,もう色の見分けが付くほどの明るさになっている.
車窓から丹沢の尾根を見ると山裾まで雲がベッタリとへばり付いている.今日もどうやら眺望は期待できそうもない.
渋沢発大倉行1番バスには10数名の登山客が乗り込む.その中の約半分は顔なじみのご常連である.韋駄天のTさん,ゲザンシュタインさん,N村女史,U村さん,ホッシーさん,SSKさん,N村(弟)さんなど,錚々たる山のベテランが揃っている.
バスは,7時少し前に大倉に到着する.
今日は私もゲザンシュタインさんのご一行と一緒に登る積もりである.そこで,登山前のストレッチも省略して,7時08分に,ご一行さんと一緒に,大倉を出発する.
例によって,出だしの歩行速度が,やけに速い.私も一行の後ろから着いていくが,登山口に到着する頃には,早くも息切れをしてしまう.
「この速度で登り続けたら,途中で轟沈してしまうな・・」
と思った私は,歩行速度を少し落として歩き続ける.
ところが,丹沢ベースを過ぎる頃から,ゲザンシュタインさんの登攀速度がだんだんと遅くなり始める.私はたちまちの内に追い付いてしまう.このまま,後に付いてユックリ登っても良いのだが,実は15時から藤沢の某所で開催される打合会に出席しなければならないので,少々気が揉める.
「スミマセン・・・平らなところでは先に行かせて下さい.急坂では追い付かれると思いますが・・」
とお断りして.マイペースを保ちながら,先に行かせて貰う.
<風が唸る見晴階段>
■富士山は雲の中
7時45分,見晴階段を登り始める.途中で先行していたホッシーさんに追い付く.この辺りで追い付くのが毎度の定番パターンである.
8時14分に駒止茶屋を通過する.大倉から歩き出して1時間06分経過している.遅い!
駒止茶屋辺りから,残雪が顕著になり始める.ただ登山道の路面は踏み固められた雪の上に泥が被さっているので滑る心配はない.
8時22分,堀山に到着する.富士山が良く見える展望台に立つが,今日は山麓から雲が立ち上がっていて,富士山の姿は全く見えない.残念.
<一本松辺りから雪が見え始める>
<富士山は雲の中>
■萱場平
堀山の家を過ぎると,残雪も増え出すが,アイゼンは全く必要ない.私のすぐ後を常連の女性が付いてくる.私を追い越すわけでもなく,遅くなるわけでもなく,ほぼ並行して登っておられる.正直なところ多少気になる.
8時48分,萱場平を通過する.残雪が一段と多くなる.相変わらず強風が森の梢でヒュウヒュウと音を立てて吹いている.
<残雪の萱場平>
■花立山荘
登るにつれて,登山道の礫や小さな砂利は次第に雪の下に隠れるようになる.その方が返って歩き易いので,楽に足が進む.
突然,
「おはようございます・・・」
という声と一緒に,Y沢さんが,上から駆け下りてくる.鳥のようにアッと言う間に遙か下の方に飛んでいく.
もう少しで後7分坂に到着する頃,上からKシゲさんが下山してくる.
「やあ,やあ,・・・こんな強い風の中,出てきたんですか.山頂で,飛ばされそうになりましたよ・・・」
と陽気に話しかけて頂く.
9時02分,後7分坂に到着する.坂の下の方は日当たりがよいので,雪はすっかり溶けている.振り返ると,少々雲が多いが,相模湾がとても良く見えている.
坂の途中に雪の大きな吹きだまりがあるので,そこだけは特に慎重に登り続けて,9時09分に花立山荘に到着する.大倉からの所要時間は2時間01分.惜しくも2時間を1分オーバーしている.後7分坂の7分の1程度遅いと行くことになる.
「大したことないな・・」
とも思うが,やっぱり悔しい.
ふと人の気配が感じたので振り返ると,ご常連のY内さんが居られる.
花立山荘から受けは,気象条件が激変する.見渡すと残雪も多そうである.私はアイゼンを装着することにする. 強風を避けるように山荘の風下のベンチに腰を下ろして,アイゼンを装着する.私の隣で,Y内さんもアイゼンを装着している.
<花立山荘より大山を望む>
■花立山
花立山荘から先へ進むと,残雪がひときわ多くなる.ただ,日当たりの良いガレ場では雪が融けてしまっている.こんな場所は,アイゼンの始末が悪いが,やむを得ない.
もう少しで花立山に到着する頃,下ってくる韋駄天のN村さんとすれ違う.
「山頂はものすごい風ですよ・・・風が強いので仏様まで辿り着けなかったです・・・どうぞ気をつけて下さい・・」
とのこと.
9時24分,花立山を通過する.強風の中で凛とした山容を写真に撮りたいなと思う.しかし,気温が低いためか,デジカメのレンズ蓋が凍結していて開かなくなっている.極めて残念.
私はカメラを懐の中に入れて暖めはじめる.
強風の中で,そんなことをしていると,ますます体温が失われるので要注意である.ここで写真を撮るのを諦めて先へ進む.
花立山を過ぎると,雪の量が一段と増える.しかも強風で雪が吹き飛ばされているためか,あるいは新雪が降ったのか,踏み跡すら不明瞭なところもある.
私は未練がましく,懐からカメラを取り出して,電源をオンにする.レンズ筒は筐体からチャンと出るが,相変わらずレンズ蓋は開かない.指でこじ開けても,すぐに仕舞ってしまう.私は何回もレンズ蓋を開けようと努力するが上手くいかない.そんなことをしている内に,再びY内さんが私に追い付く.カメラに未練がある私は,Y内さんに追い越して頂き,さらにカメラを弄くり回す.
<雪の金冷シ>
■烈風吹き荒れる塔ノ岳山頂
そんなことを繰り返している内に,9時45分,塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温はマイナス5.4℃.
なるほど強風が吹き荒れている.踏み跡は強風でかき消されていて,山頂はのっぺらぼうな雪原に変わっている.しかし,これまで北アルプスやモンブランなどで経験した強風に比較すれば,まだ,それほどでもないなという印象を受ける.全くの私感だがせいぜい毎秒15メートル程度の風ではないかと思う(当てにならない話だが・・・). ストックで身体を支えれば問題なく歩ける程度の強さである.
私は,なおも山頂からの写真を撮ろうと努力するが,相変わらずカメラが言うことを聞かない.
残念ながら富士山や南アルプスは怪しい雲の中で全く見えないが,近くの丹沢の山々が,いかにも厳冬期らしい凛とした姿を見せている.
大倉から山頂までの所要時間は2時間37分.この風,この雪,アイゼン装着などを勘案すれば,まあ,まあのラップタイムだろう.
■尊仏山荘
山頂からの風景をユックリと楽しみたいところだが,とにかく強風がどうにもならないので,すぐに尊仏山荘に入り込むことにする.
強風で寒い,山荘入口でアイゼンを外すのも,もどかしく感じる.
山荘に入る.山荘は先客で結構混雑している.お名前は分からないが,最近よくお会いする男性や,私より一足先に到着されたY内さんも居られる.
今日の小屋番はオーナーのH立さん.
私が小屋に入るとすぐに,H立さんが,私に小さな箱を差し出す.
「FHさん・・なかに手帳が入って居るから名前を書いて寄付して下さい・・・」
もちろん快諾.
錚々たる方々のお名前の後ろにカナ釘流で自分の名前を書いて,皆様と同じ額を箱に入れる.
何時ものように300円也のお茶を所望する.
やがて,書策ルートを登ってきたU村さんも山荘に到着する.
■下山開始
10時10分頃,ゲザンシュタインさんご一行が尊仏山荘に到着する.
ほぼ入れ替わりに,私は下山を開始する.本当はゲザンシュタインさん達と一緒に,ノンビリと下山したかった.でも,私は午後15時から藤沢の某所で開催される打合せに間に合うように下山しなければならない.
山荘の外に出る.
冷たい風が吹き荒れている.ウインドウブレーカーを着用しているが,それでも寒い.強風の中でアイゼンを装着するのがもどかしい.
相変わらずデジカメのレンズ蓋が開かないので,折角の風景が撮れない.私は仕方なく写真を諦めて下山を開始する.
山頂直下の急坂は,4本爪の軽アイゼンでは一寸辛いが,そこさえ過ぎれば,後は4本爪が快適である.
坂道を下りながら,
「あっ,そうだ! 携帯電話のカメラで撮ればいいじゃないか・・」
と気がつく.でも,山頂からの景色は後の祭り.
気がついたときには随分と下ってしまったが,花立山荘辺りから大倉までの間で数枚の写真を撮る.
花立山荘でモタモタしている内に,後発のU村さん,ホッシーさんに追い抜かれる.
後7分坂の途中で,アイゼンを脱着する.
後は,大倉12時52分発のバスの時間に合わせて,淡々と下り続ける.12時43分,バス停大倉に無事ご到着.
<道路の雪が溶け始める>
<溶け始めた無数の足跡>
■無事帰宅
渋沢から小田原経由で,14時18分に藤沢に到着する.
15時30分からの打合せに出席する.議題は五十三次洛遊会中山道六十九宿巡りの件.打合せは16時半頃終わる.
17時過ぎに無事帰宅する.
塔ノ岳へ出掛ける前は,随分と迷ったが,無事,山登りを終えて帰宅すると,やっぱり出掛けて良かったなと思う.
<ラップタイム>
7:08 歩き出し
7:22 丹沢ベース
7:30 観音茶屋
7:45 見晴茶屋
8:14 駒止茶屋
8:30 堀山の家
9:09 花立山荘(9:15までアイゼン装着)
9:28 金冷シ
9:45 塔ノ岳山頂着(-5.4℃)
10:20 〃 発
10:36 金冷シ
10:51 花立山荘(後7分坂の途中でアイゼン脱却)
11:30 堀山の家
11:46 駒止茶屋
12:09 見晴茶屋
12:22 観音茶屋
12:43 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:08
塔ノ岳 着 9:45
(所要時間) 2時間37分(2.62h)
水平歩行速度 7.0km/2.62h=2.67km/h
登攀速度 1269m/2.62h=522.5m/h
■下降所要時間(雑談時間を含む)
塔ノ岳 発 10:20
大倉 着 12:43
(所要時間) 2時間23分(2.38h)
水平歩行速度 7.0km/2.38h=2.94km/h
下降速度 1269m/2.38h=533.2m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/86578d75eb808872d7d943b2fe5759e1
「塔ノ岳」の前回記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/44d56a94d9748a62a8b747ae483682fe
「丹沢の山旅」の次の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/e724df4788bd5044a8e492fa9e524061
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