中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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東北関東大震災後の鎌倉:中央公園・大船を歩く

2011年03月16日 09時17分38秒 | 鎌倉あれこれ

                           <春の息吹:鎌倉中央公園にて>

        東北関東大震災後の鎌倉:中央公園・大船を歩く
                 (単独歩行)
          2011年3月15日(火).曇・寒い

<歩行地図>

    

     水平歩行距離  3.4km
     累積登攀高度    9m
     累積下降高度   55m

■ついつい戦争中のことを思い出す
 今日もヤボ用があって,自宅から3キロほど離れたところにある大船まで徒歩で出掛けた.鎌倉の西に位置している丘陵の尾根に我が家がある.ここから,近くの鎌倉中央公園を抜けて,薬師堂跡がある山崎へ下る.そして,住宅地を通過して大船へ向かう.
 地元の人でないと,大船が鎌倉市内であることを知らない方も居られるかもしれないが,歴とした鎌倉.その証拠に,立派な建物である鎌倉芸術館は大船にある.
 思わず筆が逸れたが,東北地方太平洋沖地震(東北関東大震災;どちらが正式名称か分からないが)から,もう5日目になっている.その間,まるで悪夢に魘され通しの気分である.
 テレビの映像を見ていると,米軍の焼夷弾で一面焼け野原になった惨状に良く似ている.東京大空襲のとき,10万人の死者が出た.あのとき,私は旧制中学1年生.信州小諸に住んでいた.灯火管制で真っ暗な夜のはずなのに,東の空が炎上する東京の炎でドス赤い色に染まっていた.
 そして,日立への艦砲射撃.ドスン,ドスン,・・と着弾する地響きが150キロメートルも離れた信州まで響いてきた・・・
 沢山の艦載機が信州に住む私達の頭上を越えて北へ飛んでいった.そして長岡が空襲で火の海になった.
 窓ガラスが全部割れてしまった客車が数輛連結された列車が,東京から到着する.超満員.空襲で焼け出された着の身着のままの人たちが,客車の屋根の上にまで乗っていた.窓には板戸が填め込まれていた.
 「・・きっと,神風が吹く・・」
と信じていた単純な子どもだった私達も,これはただ事ではないぞと悟った.
 短剣を腰に付けた海軍兵学校出身の格好良い従兄弟が特攻隊で死んだ.葬儀の時,私は遺骨が入っているはずの真っ白な箱を持たされた.箱だけで遺骨は入っていない.文字通り,従兄弟は“海行かばみずく屍・・”になってしまった.
 折角,中学に入っても,勤労奉仕と教練の毎日.全く授業はない.子どもだから,この状態が不自然だとは思わないし,これが普通だと思っていた.
 それにしても,自宅のある小諸から,中学のある上田までの汽車通学は大変だった.信越本線には列車が1日に4往復しか走っていない.それも遂には客車でなく,貨物車が連結された列車になった.馬糞が一杯残った貨車に乗ったこともあった.
              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 私は,テレビで見た大震災の映像から,戦争中のことを思い出しながら,大船を目指して歩く.
 鎌倉中央公園には,誰も居ない.不気味なほどに静まり返っている.昨日と天候が一変して曇り空で寒い.でも,公園の木々を子細に眺めると,あちこちに新芽が吹き出している.
 「もうすぐ春だな~ぁ・・・!」
 私は何だか嬉しいような,寂しいような気分になる.

<人気がなく静まり返った鎌倉中央公園>

■計画停電
 鎌倉中央公園を抜けて,山崎の受託地に入る.薬師堂跡を通過してから,どの道を通って大船へ行こうかと迷うが,結局は一番近い道を選ぶ.
 湘南モノレール富士見町駅付近を歩いているときに,信号機が消えていることに気がつく.辺りを見回すと停電している.いよいよ東京電力の計画停電が始まったようである.同じ鎌倉市内でも,私が住んでいるところと,この辺りでは停電のグループが違うようである.通路に面したお店を覗くと,勿論,店の中は真っ暗.レジが動かないとやらでコンビニも臨時休業.
 大船駅近くの交通量の多い交差点に到着する.勿論,信号は死んでいる.数人の警察官が交通整理をしている.信号機と違って,臨機応変に整理をするので,渋滞は全くなく,車も人も極めて順調に流れている.
 「機械に較べると,やっぱり人間は凄いな・・・」
と変なところで感心する.

<計画停電で郵便局もお休み>


<手信号の交差点;テキパキとした交通整理>

■威勢の良い仲通
 仲通商店街に入る.ここも停電中.心なしか何時もより人出は少ないようである.
 真っ暗な店内から店員が出て来る.そして仲間に,
 「・・真っ暗じゃしょうがない.ここに屋台でも出そうか・・」
と半ば冗談のようなことを言っている.
 それでも,八百屋が並んでいる付近では,身動きも自由にできないほど沢山の買い物客で大賑わいである.
 八百屋の主人が,
 「うちは,停電なんて関係ないよ・・ラっしゃい!」
と気勢を上げている.
 電気を使う文明の利器に頼れば頼るほど,停電すると困ることに,やっと気がつく.

<相変わらず賑やかな仲通>


<威勢の良い八百屋さん;「停電なんて関係ないよ・・」と心強い>

■軒並み臨時休業
 一寸した買い物がしたかったので,西友へ行く.ところが,ここも停電で臨時休業.では,本屋で立ち読みでもしようかと思ったが,ここも臨時休業.大船ルミネも今日は終日休業.Y電気も.駅前のファストフード店も休業.コーヒーも,皆,ダメ.折角,大船駅まで買い物に来たのに何も買えない.
 この辺りにある銀行はどうやら平常通りに営業しているようである.確かめてはいないが・・

■湘南モノレールは動いている
 電車の運行状況が気になる.
 まずは,湘南モノレール大船駅へ行ってみる.15分間隔で動いている.何時もは7分間隔なので,約半分の運行.

<湘南モノレールの運行状況>

■JR大船駅
 大船駅南口へ行ってみる.
 コンコースからルミネ側は真っ暗だが,駅には電気が通っていて,東海道本線,横須賀線ともに,本数は少ないものの運転されているようである.

<ルミネ側は真っ暗だが,駅側は電気が点いている>


<ビッシリと書かれた案内板>

■駅側の店は開店している
 駅構内側に位置しているファストフード店や売店は何時も通りに営業している.ファストフード店で一寸コーヒーでも飲んで帰ろうかと思ったが,何時もより随分と混雑している.近くのコーヒー店が停電で閉店しているので,この店に客が集中しているのだろう.
 店が混雑しているのが分かった途端に,並ぶのが苦手な私は,即座にコーヒーを諦める.
 折角,大船くんだりまで出てきたのに,時間潰しもできない.

<何時もより随分と混雑している駅のファストフード店>

■やっぱり私も弱い人間だ
 では,もう帰宅することにしよう.
 歩いて帰るつもりだったが,運良く,自宅近くを通るバスが停まっている.ためらいもなくバスに乗車する.
 バスは信号機が動いていない駅前を,警察官の手信号に従って通過する.所が湘南町屋駅前からは信号機が動作している.
 10分ほどで,帰宅する.
 同じ鎌倉市内でも,我が家の周辺は停電していない.何だか妙な気分になる.
 孫達が来ている.家の中には暖房が入っていて温かい.
 「・・お前ら,もう少し,被災地のことを考えて,暖房など入れずに節電に協力しなきゃダメだぞ・・」
とは言うものの,やっぱり寒いな~ぁ・・・
 オレも,いろいろ格好いいこというが,結局はダメ人間だな.情けない!
                                 (おわり)
「鎌倉あれこれ」の前回の記事
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