中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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北アルプス:常念岳・蝶ヶ岳縦走:第3日目;雨の中三股へ下山

2013年09月27日 07時32分30秒 | 北アルプス

                               <蝶ヶ岳ヒュッテの朝弁当>        

    北アルプス:常念岳・蝶ヶ岳縦走:第3日目;雨の中三股へ下山
           (アルパインツアーサービス)
      2013年9月13日(金)~15日(日)

第3日目;2013年9月15日(日) 雨時々曇

<ルート地図>

■3日目の行程


3日目の詳細図


<早朝の蝶ヶ岳ヒュッテ>

■黙々と起床
 台風18号が迫っている.
 今日,私たちは,できるだけ早く下山してしまう予定である.
 今朝の早起きに備えて,昨夜は早く寝付くよう努力したつもりだったが,なかなか眠れないまま,イライラする時間を過ごす.
 私の近くに寝ていた方が,夜中に猛烈な鼾をかく.私は,どうも鼾が気になって,なかなか眠れない.その内に,鼾がピタッと止んで静かになる,ヤレ,ヤレ,やっと静かになったかと思うと,また,突然大きな鼾が復活する.
 素人眼で判断してはいけないが,どうやら,この鼾の方は無呼吸症候群のようである.朝になって,ご本人に“無呼吸症候群の疑い有り”と伝えるべきか迷うが,そんなことご本人は百も承知だろう.それに,わざわざ言うなんて,余計なお節介のような気がするので,知らんぷりで過ごす.
 眠れないまま(実際には睡っているかも知れないが…),ジリジリと時間が経過する.
 早朝,4時にどなたかの目覚ましが鳴る.真っ暗な中,一同もそもそと起き出す.周囲の部屋の人達はまだ寝ているようなので,静かに朝の仕度を開始する.
 今日は,終日,雨の中を下山する覚悟ができている.雨具を出し,ザックにザックカバーを被せる.今日の下山では,転ばぬ先の杖として,今までは使わずにいたストックをリュックから取り出して使えるように準備する.
 トイレに行くために1階へ降りる.トイレまでの途中にある談話室では,数名の仲間が,ヘッドランプの明かりの下で,黙々と朝の弁当を食べている.私は,山小屋での朝食はパスし,下山してから,ユックリと食べようと思っている.
 トイレは混雑している.でも
トイレをパスすることもできないので,我慢しながら温和しく順番を待つ.
 
■雨の中下山開始
 今朝は4時50分に,ヒュッテ前に集合せよとグループリーダーから言われている.
 雨具上下の完全装備で,4時40分頃,集合場所で待機する.外はまだ真っ暗.結構風が強い.雨脚はそれほどは強くないが,雨具なしでは居られない程度.雨具に雨が当たってパラパラと音を立てる.
 やがて集合時間になる.リーダーが人数を確認する.
 1人足りない.誰だろう?
 すぐに最年長の方だと分かる.全員が,
 「ああ…あの方か…」
と妙に観念して納得する(念のため,私が最年長ではない).
 正直な所,パンクチュアルでないと,私はどうもイライラする性向がある.これも,幼少期に軍国少年として教育を受けた残滓だろうと思う.でも,お相手が私より年上だと何となく同情して容認したくなる.
 ツアーリーダーのお一人が,現れないお一人を探しに行く.
 5分ほどして,全員が揃う.
 雨の中,ツアーリーダーの音頭でウォームアップのストレッチを行う.こんな日には,特に念入りにウォームアップのストレッチをしないといけないことは,私も十分に承知している.
 「では,これから下山を開始します.まだ暗いので足許に十分注意して下さい.特にヘッドランプの明かりで歩いた経験が少ない人は注意して下さい…できるだけ早め早めに行動して,台風の影響をなるべく受けないようにしましょう…」
 「…下りは,足の裏をピッタリと斜面に付けるように…踵から着地してはダメです.むしろ足の先の方から着地するような気持ちで歩いて下さい,踵から着地する唯一の例外は富士山の砂走りを下りるときだけです…」
とツアーリーダが注意する.
 私は説明を伺いながら,誠に正鵠を得た内容だなと納得する.
 5時10分,予定より10分遅れで,蝶ヶ岳ヒュッテ前を出発する.
 遅参した最年長の方は,先頭のツアーリーダーの直ぐ後に付くように指示される.その他の方々は,何となく,第2日目の順番通りに続く.したがって,私は自然に前から4人目の位置になる.

<雨の中,三股を目指して>

■ただ,ひたすら下山し続ける
 下山を開始するとすぐに,やや急でジグザグの下り坂が連続する.歩き出してから暫くの間は,ヘッドランプの光が頼りである.私は白内障の手術を受けて以来,始めてのヘッドランプ下りである.手術前に比較して,足許がとても良く見えるので,あらためて手術を受けて良かったなと実感しながら下り続ける.
 蝶ヶ岳ヒュッテを出発すると,直ぐに谷間の道になる.山頂ではやや強い風が吹いていたが,谷間を下りはじめると,すぐに風は止む.雨もそれほど強くないので,苦にはならない.
 歩き出してから,30分もすると,辺りが明るくなり,ヘッドランプは不要になる.
 5時52分,最初の休憩を取る.雨が降っているので,地図を取り出してまで現在地をフォローする気にはならない.でも,自分たちが一体どの辺りを下山しているかが気になる.また,何もかもツアーリーダー任せになっているのが情けない.
 “こんなことで良いのかな…これでは,登山学校で口酸っぱく言われた『自立した登山者』とはほど遠いな”
と内心では自戒している.一方では私の心の中に潜む怠惰な私が
 “まあ,いいか…”
と言っている.
 6時丁度に休憩を終えて,また,歩き出す.

■雨が止む
 ゴアテックスの雨具を着ているけれども,やっぱり雨具を着ていると蒸し暑い.これには閉口する.相変わらずかなり急なジグザグ道が連続する.その内に雨が小降りになり,何時の間にか止んでいる.私は,雨具の前をはだけて,雨具の中に籠もっている熱気と湿気を外に放出する.
 坂の途中で,これまで先頭にいた最年長の方が,私たちの通過を待っている.
 「どうしたんですか…?」
と伺うと,
 「一番後ろに回って,列の後ろのツアーリーダーと一緒にユックリ下山しなさいって言われました…」
とのこと.
 6時55分,灌木が生え繁場所で休憩を取る.
 リーダーの勧めにより,雨具の上着を脱ぐ.
 7時09分,休憩を終えて下山開始.

<灌木が生え繁る場所で休憩;大分ぼけた写真にだが…>

まめうち平で休憩
 相変わらずの下り坂が続く.やや単調な下りだ.
 雨は止んでいるが,辺りに雲が立ちこめている.景色は殆ど見えない.そんな中,私たちは,まあまあの速度で下山し続ける.
 私のすぐ前を歩いていた女性が,突然立ち止まって,
 「…私,後ろに回ってユックリ下山します…」
と言う.そして,彼女は後ろに回る.その結果,私は,何時の間にか,前から3人目になってしまう.
 私のすぐ後ろの男性も,脹ら脛辺りが痛くなったと言い出す.平素,山道を歩き馴れていない人には,この下り坂は少々厳しいのかも知れない.
 7時35分,まめうち平に到着する.ここで3度目の休憩を取る.
 地図を見ると,水平距離なら,今日の行程のおよそ半分程度は下ったようである.そんな話をしているのを聞きつけた,ツアーリーダーのお一人が,
 「これから,まだ,とても急な下り坂が,標高差で400メートル以上も続きますよ.まだまだですよ」
と楽観顔の私たちの気持ちを引き締める.

<まめうち平で休憩>

三股まで後1キロメートルだ
 7時40分,まめうち平を出発する.
 歩き出して間もなく勾配がかなりきつい下り坂になる.でも,凄いというほどの急勾配でもない.ただ,ジグザグの下り坂が何時までも連続する.私たち先頭グループは,ツアーリーダーのすぐ後ろに付いて,ただひたすら下り続ける.
 台風が迫っていることもあって,先頭のツアーリーダーの下山速度は結構速い.そのためか,列の後ろの方はかなりバラケている.
 8時24分,「蝶ヶ岳5.4km 三股1.0km」と書いてある案内標識の前を通過する.
 “あと1キロメートルか…”
 私たちの間に,何となく安堵したような雰囲気が漂い始める.
 また,雨が降り始める.
 7時50分,先頭のツアーリーダーが雨具を装着するように勧める.そこで雨具装着のために,しばらく休憩を取る.

<「三股まで1km」の案内標識>

ゴジラの頭
 8時24分,何とも奇妙なオブジェに到着する,このオブジェは題して「ゴジラの頭」.近くに「ゴジラに似た木」と書いた立看板まで立っている.何ともおかしなことに,枯木の株がゴジラの頭そっくりである.
 眼の位置の洞には野球のボールがはめ込まれている.また,口に当たる所には,ゴジラの歯を連想させる尖った三角形の石が数個置かれている,口の中には沢山の小石が詰め込まれている.まるで口一杯に沢山の獲物をほお張っているように見える.首の辺りも何ともリアリティがある.
 “こりゃ~…凄い! 実に面白い!”
 一同,ユーモラスな造形に触発されて,何となく和んだ雰囲気になる.
 偶然にできたものとはいえ,自然の造形の妙と,これをゴジラの頭に見立てた遊び心のおもしろさが嬉しい.

<ゴジラに良く似た木>

■三股登山口に到着
 ゴジラに良く似た木を過ぎる辺りから,周囲が何となく穏やかな雰囲気になる.私は山麓に下りたなと実感する.そして,もうすぐ,下山も終わりになるなとホツとしたような,あっけないような妙な気分になる.
 やがて,小さな吊り橋を渡る.
 吊り橋から暫く歩いて,8時47分,三股登山口(標高1350メートル)に到着する.グループリーダーが,
 「ご苦労様でした…」
と一人ひとりに労(ねぎら)いの挨拶する.そして,
 「後ろの人には(他の)グループリーダーが付いているので,仕度ができたら,駐車場まで先に行きましょう…駐車場までは,ここからもう少し歩きます」
と私たち先頭グループを促す.
 登山口には,事務所の建物と,道を挟んで反対側にトイレの建物がある.トイレの脇には簡易水道がある.蛇口からは大量の水が滔々と流れ出ている.でも,この水は飲めないようである.


<三股登山口>

<温泉で汗を流す>

■駐車場までちょっと遠い
 後ろの人達が到着するまで暫く待つが,なかなか現れない.
 先頭グループは,8時57分,登山口から駐車場に向けて歩き出す.
 駐車場までは,予想していたより結構長い道のりである.ダラダラとゆるやかな砂利道を下り続ける.リーダーが先頭である.かなり速い速度で歩く.私たちは,ふてくされたような気分で,後に続く.でも,私は内心で,何時もの塔ノ岳で歩いている調子で良いなら,もっと速く歩けるなと思う.
 “いっそ気晴らしに,リーダーを追い越してやろうか”
と妙な邪心が湧くが,自制してそんなことはしない.
 9時丁度に駐車場に到着する.
 すでに,大型タクシーが2台が私たちの到着を待っている.ドライバーのお一人は愛想が良くてハキハキした中年女性である.にこにこ顔で私たちを出迎える.どうやらこの女性が取り仕切っているようである.

<三股登山口駐車場>

■温泉「四季の郷」で入浴
 タクシーに乗り込んで,後ろの人達の到着を待つ.
 待てど暮らせどなかなか現れない…が,結局,何とか全員が揃うまでに30分ほど掛かる.
 9時35分,私たちは2台のタクシーに分乗する.そして,三股登山口駐車場を出発する.
 “ああ,これで今回の登山は無事終わったな…”
 予定通りのコースを通ったにもかかわらず,天候が悪化する前に,無事に下山できて,本当に良かったなと思う.
 タクシーが何処をどう通ったのか,土地勘のない私には全く分からないが,10時05分に温泉施設「四季の郷」に到着する.ここで,3日間にわたる汗を流して,新しい衣類に着替えることになっている.
 “…ん! 「四季の
郷!?」 何だかどこかで聞いたような名前だな…?”
私は,何だか妙な気分になって,
 “はて! 何処にあったかな”
と落ち着かない.
 でも,直ぐに思い出す.
 “
そういえば,鎌倉で最近作られた集団墓地で「四季の里」っていうところがあったな.鎌倉の墓地と同じ名前か!!”
 入浴料は400円/人.高いと言えば高いが,安いと言えば安い料金である.
 温泉の案内係が大きな声で,
 「大きい荷物を持っている方は,あちらの大部屋にお回り下さい…」
と私たちを促す.
 早速,物置部屋のような大部屋で旅装を解いて,大浴場へ向かう.浴場は観光客で結構混雑している.年配者,子どもを連れた家族連れが多いようである.
 まずは3日間の汗を洗い流す.そして大きな浴槽にザンブリと入る.気分最高!
 露天風呂もあるので,そちらにも入って見る.外の風呂はちょっとぬるめである.しばらく露天風呂に浸かった後,また,屋内の風呂に戻る.
 風呂から上がって,新しい衣服に着替える.サッパリとして生き返ったような気分になる.

<温泉『四季の里』>

<中央本線経由で無事帰宅>

■松本駅へ
 11時12分,私たちを乗せた2台のタクシーは松本駅に向かう.
 もともとの計画では.ここから最寄りの豊科駅までタクシーで移動し,豊科駅で解散の予定だった.ところが,台風接近にともない,万一何かがあっても松本に出た方が対応しやすいというグループリーダーの判断である.
 松本に出るとなると,当然,タクシー代にそれなりの差額が生じる.その差額は,朝食を食べずに爺ヶ岳ヒュッテを出発したので,浮いた1食分の費用を充当するという.無論,異論はない.ただ,あらかじめ購入していた豊科~松本間の電車代は無駄になるが…でも,松本に出られならば願ってもないことだ.
 またもや東西南北も分からないまま,タクシーに揺られて,11時49分に松本駅に到着する.

<松本駅に到着>

特急あずさ16号に飛び乗る
 松本駅で流れ解散である.
 私は,まずは列車の運行状況を確かめようと思って,一目散に改札口へ急ぐ.列車の時刻表を見ると,12時00分発の特急あずさ16号がある.同行の皆さんにまだろくな挨拶をしていないが,私は,この列車に跳び乗ることにする.
 勿論,自由席.でも,この特急列車は松本始発なので,自由席もガラガラである.帰りの電車では車窓から八ヶ岳でも見ようかと思って,進行方向左側の窓側の席に落ち着く.
 そして,まだ,昼食を食べていないので,早速,蝶ヶ岳ヒュッテで貰った弁当を開く.中にはオニギリ2個,ソーセージ2本,鶏の唐揚げ1個,ブロッコリーが入っている.結構美味しく戴く.

<蝶ヶ岳ヒュッテの弁当>

■特別快速小田原行
 特急列車は,上諏訪駅を過ぎる頃から,だんだんと混雑してくる.私の隣の席にもかなり年配のおばあさんが座る.甲府からは立ち席も出始める.
 私は,八王子で下車して浜線を経由して返ろうかとも思ったが,東神奈川と浜で乗り換えるのが面倒だ.それに隣の席でグッスリと眠っているオバサンを起こさないと下車できない.グズグズしている内に,結果的に,そのまま新宿まで行くことになる.
 14時45分に新宿に到着する.
 新宿駅構内はややこしいし,セカセカと混雑している.田舎者の私は混雑が苦手でイライラする.でも,そこは辛抱.何とか迷わずに,15時00分発特別快速小田原行電車に乗り換える.
 まだ,まだ台風18号の影響は少なくて,電車のダイヤは正常である.
 大船駅からバスに乗り継いで,16時少し過ぎに無事帰宅する.
 台風の影響を受ける前に無事家に帰れたので,ホッとする.
 今回,予定通りのコースを歩きながら,何の問題もなく帰宅できた最大の要因は,グループリーダーの的確な判断と,早め早めの対応だったように思える.そのため,台風情報に翻弄されながらも,大満足の山旅だった.
 翌,9月16日,台風は関東地方でも大暴れした.台風が大暴れする前日に恙なく帰宅できたのは幸いだった.

<ラップタイム>

 5:10  蝶ヶ岳ヒュッテ発
 5:52  急坂の林の中(6:00まで休憩)
 6:52  林の中(7:04まで休憩)
 7:35  まめうち平(7:40まで休憩)
 7:50  雨合羽装着
 8:47  三股着(8:51発)
 9:00  三股駐車場着
==========================
 9:25  三股駐車場発(タクシー相乗り)
 9:45  「四季の里」着(11:10まで入浴・休憩)(タクシー相乗り)
11:45  松本駅着(解散) 

[登山記録]

■水平歩行距離       5.00km

■累積登攀高度        22m

■累積下降高度       1,384m

■所要時間
  蝶ヶ岳ヒュッテ発     5:10
  三股駐車場 着      9:00
  (所要時間)  3 時間50分(3.83h)
 水平歩行速度     5.00km/3.83h=1.31km/h
 下降速度     1,384m/3.83h=361.4m/h

[総合記録]
 
 3日間の記録を纏めると,下の表の通りである.
 水平歩行距離の合計は15.4キロメートル,累計の登攀高度は1,978メートル,下降高度は2,028メートル.歩行時間(表の所要時間)の合計は15.23時間(15時間14分)であった.
 平均水平歩行速度は1.01km/hであった.これはグループ山行の平均値といえよう.
 登攀速度は263,4m/h.下降速度は361.4m/h. 何れも球形時間を含めているので,普通の速度だったといえる.

                    第1日目      第2日目    第3日目     合計

■水平歩行距離(km)            4.7             5.7             5.0            15.4

■累積登攀高度(m)           1,138             818             22          1.978

■累積下降高度(m)                10             634          1,384         2,028

■所要時間(h)                     4.32            
7.08           3.83         15.23

■水平歩行速度(km/h)         1.09            0.81           1.31          1.01

■登攀速度(m/h)                263.4              …             …            …

■下降速度(m/h)                 …              …        361.4          …

                                      (おわり) 

「北アルプスの山旅」の前の記事
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