<塔ノ岳山頂からの富士山>
富士山・ヒルと日向ネコの丹沢;塔ノ岳(今年36回目)
(単独山行)
2011年9月8日(木) 晴
■遅い夜明け
朝方の気温が丁度良かったのか,何時もより20分ほど余計に寝過ごして,4時20分頃起床.あと2週間ほどで秋分の日を迎える今日この頃は,日に日に夜明けが遅くなっている.つい1ヶ月ほど前までは,4時ともなれば東の空からギラギラと輝く太陽が顔を出していたが,今は同じ時間でも真っ暗.涼しくなったので気持ちはよいが,だんだんと夜明けが遅くなるのは,やっぱりもの悲しい.
5時10分に自宅から出発する.東の空が明るく燃えている.辺りは明るくなり始めている.朝の冷涼な空気が心地よい.
渋沢発1番バスは,平日だというのに,座席がほぼ埋まるほどの登山客で一杯である.ご常連は韋駄天のTさん,Sさん,N村さん,Xさん(顔なじみだがお名前が分からない)など.
6時59分,バスは大倉に到着する.
ご常連の皆さんと大半の登山客が歩き始めてから,ストレッチをしながら一呼吸置いて,7時10分に,私も歩き出す.
■からだが重いのに・・
前回,塔ノ岳を往復したのが,8月30日.あの日から台風12号の影響で悪天候が続いたり,某散策グループの鎌倉案内や,眼科医受診などが重なり,今日の登山まで,もう9日間も間が空いている.年を取ると,登山を1週間も怠ると,その間にかなり体力が減退してしまう.
歩き始めてすぐに,今日の体調は本調子ではないなと分かる.私は歩き出しの30分程度は,努めてユックリ歩こうと思う・・・が,心地よいそよ風が吹いているので,ついつい歩行速度が速くなってしまう.こんなことしていたら,山頂に到着する頃にはバテてしまう.私は自分のはやる気分を押さえに押さえて登ろうとする.
でも,目の前の登山客の列を見ていると,何だかつっかえるような気がしてきて,ついつい追い抜いてしまう.
「こりゃ~・・こんなに速く歩いていたら,早晩バテるぞ・・」
と思いながらも,7時45分に雑事場ノ平を通過する.このところのラップタイムより3~4分速い.まずいぞ・・
■富士山が良く見える
案の定,駒止茶屋手前の急な登り坂に差し掛かると,急に足が重くなる.
「もっと,しっかりしないか・・・」
と自分の足を叱咤するが,一方では,
「余り無理をするな・・」
と自分の足をかばう.
私の前後に登山者の姿が無かったので,惑わされることなく,途中からユックリと登り続ける.そして,8時27分,駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから実に1時間17分も掛かっている.もともと,季候が良いときには,1時間5分前後で登っていた所なのに10分以上余計に時間が掛かっている.何だかんだ言っても,体力の衰えは歴然としている.
堀山の尾根に差し掛かる.尾根の東側から心地よい海風が吹き抜けている.尾根の途中,見晴らしの良い所を通過する.今日は富士山がとても良く見えている.デジカメを取り出して富士山の写真を撮っていると,ご常連のYさんが,勢いよく山道を下っていく.気温19.6℃.
<堀山の尾根からの富士山>
■またまたヒル談義
8時42分,堀山の家を通過する.気温18.7℃.小草平から富士山が相変わらず良く見えている.小草平のベンチには誰もいない.
萱場平までの長い登り坂に差し掛かる.やっぱり歩き出しの速度調整が悪かったためか,長い坂道になると,何となく登ろうという気力が希薄になる.半ば惰性で何も考えずに・・・じゃなくて,登山とは無関係なことをあれこれと考えたり連想したりしながら,自動運転のロボットのように,ぎこちなく登り続ける.
8時49分,ご常連のKさんが下山してくる.私の顔を見ると,
「やあ・・今日は気持ちが良いね」
と話しかけてくる.
「相変わらず快調ですね・・」
「いやいや,どうも・・・この間,6日,土曜日は凄かったですよ・・・山頂は滝のような雨・・で,登山道はまるで川のようになりましたよ.滝ですよ.歩くのに往生しましたよ・・・」
先週の土曜日は鎌倉や三浦半島では,大した雨は降らなかったが,丹沢など関東地方の山沿いでは激しい雨が降った日である.
「・・・この頃,山ヒルが凄くいますよ.雨の日は気をつけないとダメですね.この間も,右足の脛に4ヶ所も食いつかれちゃいましたよ.ヒルは小いちゃいので,良く見えないんですよ.靴の紐の穴からも潜り込んでくるんです・・引っ張っても長く伸びてなかなか取れないんですよ」
私はついつい,
「血を腹一杯に吸うと,ヒルは自分から離れるって聞いていますが」
と余計なことをいう.
「いや,そうかも知れないけど,自分の血を吸っているヒルをだまって見ているわけにはいかないよ・・・」
「そりゃ,そうですね・・私でもヒルを無理矢理剥がすでしょう・・」
「かまれた所は委託も痒くもないけれど,(歯が残って)何時までも型が残っちゃうんです」
こんな話をしていると,後から登ってきた女性が.ヒル談義に加わる.
「山麓に丹沢ベースがあるでしょ・・あの辺りに沢山ヒルがいるんですよ.駒止茶屋まで登ってしまえばヒルはいないけど,そこまでは要注意ですね・・・うっかり登山道脇のベンチに座り込むと,ヒルがリュックの下に潜り込んでいることがあるんです.不用意に草むらやベンチに座り込むのはダメですね.とくに雨の日にヒルが沢山出ますよ・・・」
とは言っても,私は,大倉尾根で,まだヒルに出会ったことはない.登山道から逸れず,立ち止まらないで歩いていれば,まずヒルに会うことはないと思う.
■萱場平
9時07分,萱場平を通過する.先ほどヒル談義に加わった女性が,私のすぐ先を歩いている.
私がデジカメをしまったり,ノートに記録を取っている間に,この女性の後ろ姿が見えなくなる.
<夏草が繁茂する萱場平>
■花立山荘
その後も,だんだんと歩行速度が遅くなる.エッチラホッチラと登り続け,漸く後7分坂に差し掛かる.この頃,私には,この坂を7分で登るのは無理.8~9分は必要である.
坂の真ん中辺りで,下山してくるN村さんとすれ違う.相変わらずN村さんは凄い.すれ違いざまに一言二言ご挨拶.
9時33分,やっと花立山荘に到着する.大倉からの所要時間は2時間13分.今年春,クラクラ病になる前には,2時間を少し切るぐらいで登っていた所なのに・・
でも,過去のことを言っていても詮無いこと.
ベンチでは数名の登山客が休憩を取っている.少し雲が増えたけれども,相変わらず富士山が良く見えている.
<花立山荘から富士山を望む>
■シンドイ登り坂
花立山荘から花立山までの登り坂が,毎度のことながら,とてもシンドイ.すぐそこに見えているのに青息吐息.まだかいな,まだかいなと思いながら登り続ける.今日のように本調子でないときは,花立山荘から花立山まで10分も掛かってしまう.
登山道は,豪雨に洗われて,角がぎざぎざな石ころがゴロゴロと転がっていて,転倒したら怪我をしそうである.
相変わらず眺望はよいが,富士山の周りには大分雲が湧き始めている.
花立山から馬の背に差し掛かる頃,下山してくる韋駄天のTさんとすれ違う.
「・・・嵐の時は大変でしたよ・・」
とTさんが私に話しかける.
「豪雨で大分登山道が荒れてしまい,Xさんが,また,転倒して,怪我をしたようです・・・」
「そうでしたか・・・注意しなければ・・」
<花立山>
■塔ノ岳山頂
9時52分,漸く金冷シを通過する.いつになく何だか疲れた感じがする.そのまま惰性で歩き続けて,10時09分に,やっと塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温は19.7℃.意外に高い.
大倉からの所要時間は,2時間59分.まあ,こんなところが今の私の体力なのだろう.今年の春に比較すると30分近く余計に時間が掛かるようになっている.
山頂からは,富士山がとても良く見えている.富士山の山麓に雲が棚引いている.早速,デジカメで富士山の写真を撮る.
山頂では数名の登山客が休憩を取っている.
<塔ノ岳山頂からの富士山>
■尊仏山荘
山頂で,暫く風に当たってから尊仏山荘に入る.今日の小屋番はW田さん.
早速,300円也のお茶を所望する.先客は誰もいない.相変わらず窓越しに富士山が良く見えている.
W田さんが,奥の間の日向で昼寝をしているミー君にやさしく声を掛ける.
「ミーや・・・日向ぼっこばかりしていないで,少しは客室に出てきなさい・・」
そして,日当たりで寝ていたミー君を客室に連れて来る.
「寒いんでしょうかね.日向で昼寝ばかりしていますよ・・・少しは動かないと・・」
ミー君は寝ぼけ眼で,私のリュックの臭いを嗅いでいる.そして,しっぽをグルグル回しながら,
「にゃぁ~・・」
と鳴いてから,ノソノソとまた日向に引っ込んでしまう.
「ミーも,もう11歳を越しましたんで,人間で言えばもう80歳近いですね.この俊になれば,日向ぼっこが似合いますね・・」
<客席に一寸顔を出すミー君>
<すぐに日当たりの良い部屋へ引き上げる>
■超ユックリ下山
私は大倉発13時22分のバスに乗りたいなと思う.このバスに乗ると小田急電車の接続も良いし,小田原発14時04分の特別快速高崎行に上手く接続して,15時ちょっと過ぎには帰宅できるからである.その前の12時52分発のバスに乗車しても,小田原からは各駅停車,しかも大船からのバスの接続が悪くて,帰宅する時間に大差がない.それならば,ユックリ下山するに限る.
下山し始めてから花立山荘辺りまでは,何となく疲れた感じが残っていたが,その後は,元気を回復した.途中途中で心地よい風を堪能しながら,十分時間を掛けて下山.13時15分,大倉に下山する.そして予定通り13時22分発のバスに乗車.
<ラップタイム>
7:10 大倉歩き出し
7:31 観音茶屋
7:48 見晴茶屋
8:27 駒止茶屋(19.7℃)
9:33 花立山荘(21.7℃)
9:52 金冷シ(20.1℃)
10:09 塔ノ岳山頂着(19.7℃)
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10:34 塔ノ岳山頂発
10:49 金冷シ
11:08 花立山荘
11:53 堀山の家
12:13 駒止茶屋
12:42 見晴茶屋(26.3℃)
12:56 観音茶屋
13:15 大倉 着(29.0℃)
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:10
塔ノ岳 着 10:09
(所要時間) 2時間59分(2.98h)
水平歩行速度 7.0km/2.98h=2.34km/h
登攀速度 1269m/2.98h=425.8m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:34
大倉 着 13:15
(所要時間) 2時間41分(2.68h)
水平歩行速度 7.0km/2.68h=2.61km/h
下降速度 1269m/2.68h=473.5m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
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