ウイルヘルム山登頂記(14):ピュンデ湖畔のベースキャンプ(2)
ピュンデ湖半周
2007年2月10日(土)~17日(日)
第4日目 2007年2月13日(月)(つづき)
■ベースキャンプに落ち着く
泥濘と密林の悪路を登ること約5時間,13時10分に,私達は漸くピュンデ(Piunde)湖畔に建つベースキャンプに到着した。ここは標高3,550メートルの高所である。気のせいか,何となく息苦しいような気がする。小屋に入り,ポーターが運んだ荷物をチェックする。
<ピュンデ湖畔のベースキャンプ小屋>
小屋は高床式になっている。造りは粗末で至って簡素である。太めの木材を並べただけの階段を10段ほど登ると小屋の入口になる。中にはいると,そこは30平方メートルほどの食堂兼台所になっている。その右手には数平方メートルの物置がある。食堂の奥には,食堂よりやや広い大部屋がある。大部屋の右手にはカーテンで仕切られた小さな部屋が2室あるようである。 今日の宿泊客は,私達8人とオーストリア人2人だけである。私達男性陣は,ゆったりと大部屋を独占する。女性群2人と,オーストリア人2人は,それぞれ小さな部屋に落ち着く。少々薄汚いがマットレスもある。よれよれのシーツ付きである。山小屋にしては申し分ない設備である。
荷物をほどいて,シュラフを開く。これで何となくホッとする。
ケイが,見回りに来る。そして,元気な声で,
「・・・寝ないでください・・・高山病になりますよ・・」
と私達を叱咤する。
「食堂でコーヒー,紅茶を飲んで下さい・・・水分を沢山取りましょう・・・」
ご尤もである。
■もの凄いトイレ
暫くの間,私も紅茶を楽しむ。そして,トイレに行くために外へ出る。小屋の前は広場になっている。広場を挟んで100メートルほど先にピュンデ湖がある。三方を山に囲まれた静かな湖である。小屋の裏手の坂道を10数メートル登ったところにトイレ小屋が2ヶ所ある。60センチ四方の小さな床に孔が空いている。この孔に向かって用を足す。孔の廻りには命中しなかった一物が沢山散乱している。孔に入らなかった落とし紙も周囲に散乱している。簡素な屋根が付いているものの大変な所である。
今日明日の2日間は,ここのご厄介にならなければならない。私は意を決し,大を済ます。
■ガイドのスティーブンさんと雑談
その後,小屋の前で,静かな湖面を眺めている。そのときガイドのスティーブンが私に話しかける。
「下の湖がピュンデ湖,上の湖がアウンデ(Aunde)湖だよ・・・・ピュンデ湖は男性,アウンデ湖は女性ですよ・・・」
と説明する。それを聞いた私は,すかさず,
「じゃあ,,,この避難小屋は,ピュンデ湖とアウンデ湖の息子ですか・・・」
と茶々を入れる。これが大受けになった。スティーブンは,
「この小屋は息子か!・・・アハハ,,アハハ・・」
と止めどもなく笑いこける。この軽口以降,彼は私の顔を見る度に,
「あの小屋は息子だ」
と言いながら,右手の指を立てて笑いこける。
小屋の脇に,粗末な掘っ建て小屋がある。小屋の中で焚き火をしているらしい。スティーブンに聞くと,この小屋はポーターが寝る場所だという。
「分かった! この小屋はピュンデ湖のお爺さんだ・・!」
と私が混ぜ返す。
「ワッハハ,,,,,ワハハ・・・・そうだ500年前のグランドグランドパパだよ・・・」
と言いながら,また腹を抱えて笑い出す。これを切っ掛けにして,スティーブンと,すっかりうち解けて色々なことを雑談する。
<ピュンデ湖畔のポーター達の小屋>
「・・・このベースキャンプの小屋と,あそこに見える小さな避難小屋は,30年前に同時に建てたんだよ・・・必要な木材などは20人の人達が担いで運んだんだ・・・」
と誇らしげに話す。
■パルスオキシメーターの数値が悪い
食堂に戻る。そして,全員で,ブレッド,アンド,バターの軽食を撮る。
14時頃,ケイさんがパルスオキシメーターを取りだして,全員の酸素飽和度を測定する。私の場合,自覚症状はないものの,酸素飽和度81%,脈拍120と,かなり悪い数値である。他の方も,お1人を除き,私とほぼ大同小異。自覚症状はないものの,正に高山病要注意の段階,薄気味悪い。
雨が降り出す。これからの天候を気にしながら,荷物の整理を進める。その内に,何時の間にか雨が止んでいる。暫くの間,シュラフに潜り込んで,眠らないように気を付けながらジッとしている。ときどき,脈拍を測ってみる。暫くすると,75回/分まで下がり,落ち着いてきた。しかし,平地での朝の安静時脈拍は,私の場合50回/分前後である。それに比較すれば,まだまだ随分と多い。どうやら,私は高山に弱い体質のようである。
■ピュンデ湖半周ハイキング
14時47分,ケイさんの音頭で,高度順応のために,全員強制参加のピュンデ湖半周ハイキングに出掛ける。湖畔のヤブの中の泥道を通り抜けて,1本橋に到着する。橋の下には水量豊かな川が湖に流れ込んでいる。川の流れを見ていると吸い込まれそうな気分になる。ガイドの手を借りて,1人ずつオッカナビックリ渡る。深い水たまりが至るところにある。水たまりの中に無造作に置かれた木の枝や石を伝って先へ進む。もし踏み外すとドボンと水に浸かる。
<ピュンデ湖>
15時19分に,小屋の反対側に到着する。ここから更に登るとアウンデ湖に出るとのことである。私達は,ここから今来た道を引き返す。そして,15時46分,小屋へ戻る。 夕食まで,まだ少し時間がある。
(つづく)
ピュンデ湖半周
2007年2月10日(土)~17日(日)
第4日目 2007年2月13日(月)(つづき)
■ベースキャンプに落ち着く
泥濘と密林の悪路を登ること約5時間,13時10分に,私達は漸くピュンデ(Piunde)湖畔に建つベースキャンプに到着した。ここは標高3,550メートルの高所である。気のせいか,何となく息苦しいような気がする。小屋に入り,ポーターが運んだ荷物をチェックする。
<ピュンデ湖畔のベースキャンプ小屋>
小屋は高床式になっている。造りは粗末で至って簡素である。太めの木材を並べただけの階段を10段ほど登ると小屋の入口になる。中にはいると,そこは30平方メートルほどの食堂兼台所になっている。その右手には数平方メートルの物置がある。食堂の奥には,食堂よりやや広い大部屋がある。大部屋の右手にはカーテンで仕切られた小さな部屋が2室あるようである。 今日の宿泊客は,私達8人とオーストリア人2人だけである。私達男性陣は,ゆったりと大部屋を独占する。女性群2人と,オーストリア人2人は,それぞれ小さな部屋に落ち着く。少々薄汚いがマットレスもある。よれよれのシーツ付きである。山小屋にしては申し分ない設備である。
荷物をほどいて,シュラフを開く。これで何となくホッとする。
ケイが,見回りに来る。そして,元気な声で,
「・・・寝ないでください・・・高山病になりますよ・・」
と私達を叱咤する。
「食堂でコーヒー,紅茶を飲んで下さい・・・水分を沢山取りましょう・・・」
ご尤もである。
■もの凄いトイレ
暫くの間,私も紅茶を楽しむ。そして,トイレに行くために外へ出る。小屋の前は広場になっている。広場を挟んで100メートルほど先にピュンデ湖がある。三方を山に囲まれた静かな湖である。小屋の裏手の坂道を10数メートル登ったところにトイレ小屋が2ヶ所ある。60センチ四方の小さな床に孔が空いている。この孔に向かって用を足す。孔の廻りには命中しなかった一物が沢山散乱している。孔に入らなかった落とし紙も周囲に散乱している。簡素な屋根が付いているものの大変な所である。
今日明日の2日間は,ここのご厄介にならなければならない。私は意を決し,大を済ます。
■ガイドのスティーブンさんと雑談
その後,小屋の前で,静かな湖面を眺めている。そのときガイドのスティーブンが私に話しかける。
「下の湖がピュンデ湖,上の湖がアウンデ(Aunde)湖だよ・・・・ピュンデ湖は男性,アウンデ湖は女性ですよ・・・」
と説明する。それを聞いた私は,すかさず,
「じゃあ,,,この避難小屋は,ピュンデ湖とアウンデ湖の息子ですか・・・」
と茶々を入れる。これが大受けになった。スティーブンは,
「この小屋は息子か!・・・アハハ,,アハハ・・」
と止めどもなく笑いこける。この軽口以降,彼は私の顔を見る度に,
「あの小屋は息子だ」
と言いながら,右手の指を立てて笑いこける。
小屋の脇に,粗末な掘っ建て小屋がある。小屋の中で焚き火をしているらしい。スティーブンに聞くと,この小屋はポーターが寝る場所だという。
「分かった! この小屋はピュンデ湖のお爺さんだ・・!」
と私が混ぜ返す。
「ワッハハ,,,,,ワハハ・・・・そうだ500年前のグランドグランドパパだよ・・・」
と言いながら,また腹を抱えて笑い出す。これを切っ掛けにして,スティーブンと,すっかりうち解けて色々なことを雑談する。
<ピュンデ湖畔のポーター達の小屋>
「・・・このベースキャンプの小屋と,あそこに見える小さな避難小屋は,30年前に同時に建てたんだよ・・・必要な木材などは20人の人達が担いで運んだんだ・・・」
と誇らしげに話す。
■パルスオキシメーターの数値が悪い
食堂に戻る。そして,全員で,ブレッド,アンド,バターの軽食を撮る。
14時頃,ケイさんがパルスオキシメーターを取りだして,全員の酸素飽和度を測定する。私の場合,自覚症状はないものの,酸素飽和度81%,脈拍120と,かなり悪い数値である。他の方も,お1人を除き,私とほぼ大同小異。自覚症状はないものの,正に高山病要注意の段階,薄気味悪い。
雨が降り出す。これからの天候を気にしながら,荷物の整理を進める。その内に,何時の間にか雨が止んでいる。暫くの間,シュラフに潜り込んで,眠らないように気を付けながらジッとしている。ときどき,脈拍を測ってみる。暫くすると,75回/分まで下がり,落ち着いてきた。しかし,平地での朝の安静時脈拍は,私の場合50回/分前後である。それに比較すれば,まだまだ随分と多い。どうやら,私は高山に弱い体質のようである。
■ピュンデ湖半周ハイキング
14時47分,ケイさんの音頭で,高度順応のために,全員強制参加のピュンデ湖半周ハイキングに出掛ける。湖畔のヤブの中の泥道を通り抜けて,1本橋に到着する。橋の下には水量豊かな川が湖に流れ込んでいる。川の流れを見ていると吸い込まれそうな気分になる。ガイドの手を借りて,1人ずつオッカナビックリ渡る。深い水たまりが至るところにある。水たまりの中に無造作に置かれた木の枝や石を伝って先へ進む。もし踏み外すとドボンと水に浸かる。
<ピュンデ湖>
15時19分に,小屋の反対側に到着する。ここから更に登るとアウンデ湖に出るとのことである。私達は,ここから今来た道を引き返す。そして,15時46分,小屋へ戻る。 夕食まで,まだ少し時間がある。
(つづく)