<にわか雪の塔ノ岳山頂>
にわか雪とネコのんびりの丹沢:塔ノ岳(今年16回目)
(単独山行)
2009年3月26日(土)
■今日しかないと思ったのに
この所,春特有の乱れ天気が続く.毎日の天気予報を子細に眺めながら,丹沢に行くなら今日しかないと思った.私が居住する鎌倉では,早朝5時頃,東の空が白みかける頃,雲は多いものの,天気予報通りに,7時を過ぎる頃から次第に晴れてくるだろうと信じて,5時10分に家を出る.
一歩家の外に出ていると.この時期にしては,とても寒く,冬に逆戻りをしたような感じがする.
何時も通り,藤沢,相模大野経由で,渋沢駅に到着する.その頃から冷たい雨が降り出す.私は,登山を中止して家に戻ろうかと迷うが,小田急のフリーキップを購入しているので,とにかくバスで大倉まで行って,天気の様子を見ようと決める.
■たった3人のバス乗客
渋沢発大倉行2番バスに乗車する.乗客は私を含めて登山客3人だけ.その内,お一人は名前は知らないが面識のある年輩のご常連,もう一人は40~50才代と思われる男性である.お互いに「(登山客は)おやこれだけ」というような仕草をして挨拶を交わす.
バスに乗っている間に,雨足がますます強くなる.そして,雨の中,バス停大倉で下車する.
こんな雨の中を,山へ登りたくないなと思いながら待合室で様子を見ている.その内に,雨がミゾレに変わる.この分だと標高の高い所では雪になっているかもしれない.雪ならば登ろうかと思い始める.
若い男性が登山を開始する.その内にご常連が,
「三ノ塔辺りの雲が切れ始めましたよ・・」
と私に教えてくれる.
「では,登りますか?」
■見事な雪景色
ご常連の方は,4時間ぐらい掛けてユックリ登るとのことなので,私は単独で,ミゾレの中を,7時45分に大倉を歩き出す.雨合羽が身体にごわごわと巻き付いて,気分は余り良くないが,これも登山だと割り切る.やがてミゾレは粉雪に変わる.そして,次第に落ちてくる雪が少なくなる.
歩き進むに連れて,私より一足先に出発した男性の姿が見え出す.足許が悪くて,滑りやすい.
8時頃,観音茶屋に到着する.雨具が暑いので,ここのベンチで衣服調整をしようと思う.私の前を歩いていた男性も,ここで衣服調整をしている.私は素早く雨具の上着を脱いでリュックに収める.そして,男性に,
「お先に失礼します・・」
と挨拶をして,一足先に歩き出す.
見晴茶屋を過ぎた辺りから,辺り一面が雪景色になる.足許の石や礫の上には,今し方降った鵜雪が降り積もっていて,とても滑りやすい.こんなときには,所要時間をどうこうするよりも,兎に角,安全第一に登るしかないと自分に言い聞かせる.そして,たまたま持参していたストックを使うことにする.
辺りには誰も居ない.鳥の声を聞こえない.登山道を囲む木の枝には,新雪が降り積もっていて,見事な樹氷になっている.静寂で素晴らしい景色が目の前に広がっている.その内に,ところどころに抜けるような青空見え始める.青空に映える樹氷を見ていると,家に帰らずに登山をして良かったなと思いはじめる.
<にわか雪の見晴山荘>
<静寂の紅葉坂>
■残雪が深まる
8時57分に駒止茶屋を通過する.歩き出してから,1時間12分も経過している.でも今日は雪の特別美だから,長時間掛かっても仕方がない.折角の雪景色だから,写真でも撮りながら,ゆっくりのぼろうと思う.
堀山の尾根,通称富士見平から富士山を眺める.青空にモクモクと沸き上がる白い雲の間から,富士山山頂がほんの一寸顔を出している.富士山にまとわりつくような雲が絶えず形を変えながら動いている.暫くの間,富士山が見えることを期待して,カメラを構えていたが,なかなか姿を表さない.
丁度そのとき,ご常連のYさんが,2本のストックを持って,私の脇を駆け下りていく.
9時17分,堀山ノ家を通過する.富士山は完全に雲の中である.
標高が高くなるにつれて,積雪も多くなる.降って間もない雪なので,踏みつけるたびに「キュッ,キュッ,・・」と軋む音を立てる.これがまたとても気分がよい.
<雲間の富士山:真ん中の白い所が富士山山頂>
■元気なご常連
9時39分,萱場平に到着する.何時もとは様子が一変して,辺り一面の雪景色である.全く人気がない.
長い上り階段を経て,岩稜地帯に入る.相変わらず足場が良くないので,一歩一歩注意をしながら登り続ける.やがて,花立山荘前の上り階段に差し掛かる頃,私が足許に気を取られていると,頭上から,
「・・・やあ,flower-hillさん・・」
と声を掛ける方が居る.ご常連のTさんである.
「今日は一番バスを降りた頃,大変なミゾレでしたよ.山頂にもかなりな積雪がありますよ.この雪,今朝降ったものらしいですよ・・・」
と今朝の状況を説明してくれる.
10時06分,ようやく花立山荘に到着する.何時もならば,とっくに尊仏山荘に入っている時間である.積雪はますます多くなる.富士山は良く見えないが,上空には青空が広がっている.雪と雲と青空が実に見事である.私は絶えずカメラを構えながら,沢山の写真を撮る.
花立場直前の岩稜で,下ってくるご常連のMさんとすれ違う.
「やあ・・元気かね・・?」
とMさんが私に話しかける.暫くの間,雑談を交わす.
<今日の萱場平は真っ白:人気がない>
<花立台から厳しい丹沢山塊が連なっているのが見える>
■塔ノ岳山頂
10時25分に金冷シを通過する.鍋割山稜方面からの登山道の雪には足跡が全くない.まだ,だれも通過していないようである.帰りに鍋割山を廻ってみようかと心が揺れる.積雪が一段と多くなり,場所によっては,階段も雪で埋まっている.そんな場所は,階段とは無関係に登れるので,返って楽に登れるし,気儘なステップが踏めるので楽しい.それに新雪なので,アイゼンを使わなくても楽に登れるのが嬉しい.
10時40分,漸く塔ノ岳山頂に到着する.大倉を歩き出してから,実に2時間55分も掛かっている.ここ2~3年間で,私の最低記録である.
山頂はかなりの積雪で覆われている.登山客の姿はない.
今日の山頂からの風景は素晴らしい.雪に覆われた丹沢の山々が見えている.富士山や南アルプスは,異様にモクモクとした雲に遮られて見えないが,青空と雲,それに雪のコントラストが実に美しい.
私が写真を撮っていると,バスで一緒だった若い登山客が山頂に到着する.暫く雑談.彼が控えがちに,私に,
「・・何時もどのくらいの時間で登っておられるんですか?・・一体,お幾つなんですか?」
と聞く.私が,平素は,2時間25分前後で登る・・年齢は(×10+6)才と答えると,ビックリする.
「先ほど,小柄な方と,サングラスを掛けた方とすれ違ったでしょう・・・あの方々は全員(×10)才台ですよ・・」
この方は,尊仏山荘には立ち寄らないようなので,ここでお別れする.
<怪しげな雲が沸き立つ:塔ノ岳山頂直下から>
<沸き立つ雲:塔ノ岳山頂より>
■ネコがのんびり尊仏山荘
尊仏山荘に入る.先客はカメラマンのMさんお一人だけ.小屋番は営業部長ミー君の忠実な部下,Oさんである.Mさんが私に,
「今日はバカに遅いじゃないですか・・」
と声を掛けてくる.誠に面目ないが,出発時間を遅らせたにしても,雪が降れば,私の登山能力など,こんなていどなのだろう.
今日の山頂の気温はマイナス1.8℃.この時期にしては,少し寒い.
2階から営業部長のミー君が,コトコトと階段を降りてくる.そして,ピョンと番台に飛び乗る.ミー君は,可愛がってくれるOさんにベッタリ寄り添っている.
「こいつ,昼寝ばかりしていて,身体が鈍っちゃうぞ・・」
とミー君の背中をなぜながら,Oさんがミー君に話しかける.
私は,ふと,Oさんとミー君の顔が良く似ていることに気が付く.
「お二人とも良く似ていますね・・」
と茶化しながら,二人(正確には1人と1匹)のツーショットをカメラに収める.
カメラマン氏が,
「一寸そこまで行ってきます・・・」
とOさんに声を掛けて出掛ける.赤と黄色が目立つ雨具,ザックカバーの装いである.
出がけにしなに,ミー君の顔を覗き込んで,
「・・大分,目やにがたまっているね・・」
と言う.Oさんが,
「こいつも,もう年ですからね・・」
と答える.
私はこのやり取りを伺いながら,ネコのSさんが暫く来ていないなと想像する.
<尊仏山荘:二人で仲良くお店番>
<似たもの同士:それにしても良く似て居られる>
■冬と春が同居する下山道
カメラマン氏が出掛けると,客は私1人になる.ジャズ好きのOさんのカセットから,陽気なジャズが流れてくる.もう11時を廻っている.そろそろ下山しないと,帰りが遅くなる.窓外を見ると,辺りは濃い霧に覆われている.もう天気が回復する気配もない.
11時12分,私は尊仏山荘から外に出る.寒い! 下山口まで,深い雪をかき分けるように歩く.アイゼンの装着はしないが,ストックを使って,転倒しないように気を付けながら,一歩一歩下山し続ける. 時々,登ってくる登山者とすれ違う.
11時37分,花立場を通過する.ここで,同じバスに乗り合わせたご常連とすれ違う. 雲行きがますます悪くなる.堀山ノ家を通過する辺りから,氷の結晶のような大粒の雪(雹かな)が降り始める.雪が衣服に当たる音が,ボツボツと聞こえる.私は何も考えずに,黙々と下山し続ける.
駒止茶屋に近付くと,登山道は次第に泥道に変わる.靴がドロドロになってしまう. 見晴茶屋付近まで下ると,日が射し始める.どうやら低く垂れ込めていた雲の下に出たようである.観音茶屋を過ぎると,雪など想像もできないほど,暖かで長閑な風景に変わる.
13時43分にバス停大倉に到着する.明るく暖かな日光が降り注いでいる.何時もより,丁度1時間遅いバスと電車を乗り継いで帰宅する.
[ラップタイム]
7:45 大倉歩き出し
8:05 観音茶屋(8:10まで衣服調整)
8:25 見晴茶屋
8:57 駒止茶屋
9:17 堀山ノ家
10:06 花立山荘
10:25 金冷シ
10:40 塔ノ岳山頂 着
=============================================
11:12 塔ノ岳山頂 発(-1.8℃)
11:45 花立山荘
(記録失念) 駒止茶屋
13:07 見晴茶屋
13:22 観音茶屋
13:43 大倉着
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km
■累積登攀下降高度 1201m
■登攀所要時間(休憩時間を含む)
大倉発 7:46
塔ノ岳山頂着 10:40
(所要時間) 2時間55分(2.92h)
登攀速度 1202m/2.92h=411.3m/h
水平速度 7.0km/2.92h=2.39km/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 11:02
大倉着 13:43
(所要時間) 2時間31分(2.52h)
下降速度 1201m/2.52h=476.6m/h
水平速度 7.0km/2.52h=2.78km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/dd4624f90109003a073715a94297c1c4
「丹沢の山旅」塔ノ岳の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c319d7b6f36801c7025bf292414e5bdc
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私も同じ日に塔ノ岳に登っていました。
山頂到着時間は11:15くらいと記憶しています。
眼鏡をかけた男性にシャッターを押していただいた
のですが、ひょっとしてflower-hillさんではない
でしょうか?
間違いでしたら失礼しました。
これからも拝読させていただきます!
コメント,有り難うございました.あの日は,季節外れの雪で,綺麗な景色を堪能することができました.
シャッターを押したのは,正に私です.私の時計で,11時12分でした.
私は,大体,週に2回程度,塔ノ岳に登っています.
また,塔ノ岳でお目にかかれるのを楽しみにしています.
未踏の雪の登山道は気持ちよかったですね。
私は木曜日しか登ることはできませんが、またお会い
できることを楽しみにしています。
私は天気を見計らって、塔ノ岳へ出かけておりますので、出かける曜日はバラバラですが、結果的に水曜日と木曜日が多いようです。
また、塔ノ岳でお目にかかれるのを楽しみにしています。
これからも、当ブログをよろしくお願いいたします。