
<花立山付近の霧氷>
霧氷の中を逍遙する丹沢:塔ノ岳(今年38回目)
(単独山行)
2010年12月25日(土)
■わが家を孫娘に占領されたクリスマスイブ
昨日はクリスマスイブ.仏教徒の私には余り関係がないが・・・
横浜のミッションスクール鉄栗鼠中学に通う孫娘が,何も思ったのか,クリスマスイブを鎌倉の私の家でやるんだと張り切る.まあ,彼女にしてみれば,私の家は鎌倉にある格好の別荘ぐらいに思っているんだろう.午後,数名の友達を我が家に連れてきて,わが家1階を占有し,母親(つまり私の娘)とバアさんをメード代わりに使って,徹夜で楽しくやっている.
当然,何の役にも立たないポンコツ爺は無用の長物.言外に山へ行ってしまえと圧力が掛かる.私は,まだ,一昨日,塔ノ岳に登ったばかり.でもまあ,家族から背中を押されるようにして,今日も塔ノ岳詣でだ.もっとも心の中のどこかで,
「シメシメ.今日も丹沢へ出掛けられるぞ・・」
と喜んでいる私がいる.
・・で,今朝,4時前に起床.今日は朝からヤケに寒い.
「これは冬支度で登山しないとヤバイな・・」
と直感した私は,何時もよりフリース1枚と冬用の手袋,それに耳を覆う帽子をリュックに入れる.当然のことながら,リュックの重量は,これまでよりも少し重くなる.
真っ暗で冷たい風がビュンビュン吹く中を,電車を乗り継いで,渋沢発大倉行1番バスに乗車する.私がバスに乗り込んでから,1~2分後に下り電車が到着.沢山の登山客がドヤドヤと乗り込んでくる.例によって,韋駄天のTさん,三角髭のTさん,カメラマンのMさんなど,ご常連が顔を揃える.
■FHさんですか?
大倉に到着してから,例によって私はモタモタ.準備をしていると. カメラマンのMさんから,
「なに・・ノートなくしたんだって・・」
と話しかけられる.
韋駄天組の皆さんは,もうとっくに出発している.やっと,出発準備を整えてトイレに向かう.その途中で,若い女性から,
「・・FHさんですか・・?」
と声を掛けられる.私は随分とビックリする.私の娘と孫の間ぐらいの年配の方である.これまで,何回か,このブログにコメントを寄せていただいている.
私のブロブを見に来て下さる方は,年配者だけだろうと端から思い込んでいた私は,うら若い女性から声を掛けられて,本当にビックリしてしまう.でも若い方に私のブログを見ていただけるのは有り難いことである.
「・・(落とした)手帳,見付かりましたか?」
「いえ,まだ,見付かりません・・でも,データは毎回パソコンに記録していますので,実害は軽微です.ご安心下さい」
それにしても,私がノートを落としたことを,何人もの方が知っているのに驚かされる.
■ノートを拾ってくれた女性に追いつく
7時14分に大倉を歩き出す.今日のモタモタ度は特にひどかったので,もう2番バスが大倉に登ってくるのが見える時間である.歩き出しても寒い.少しでも暖かになろうとして,ついつい歩行速度が速くなる.歩き出して12分で丹沢ベースを通過する.これはいくら何でも速すぎる.こんなことをしていたら,後半でバテること必至である.私は意識的に歩行速度を少し落とす・・・が,寒いのでどうしても速歩になってしまう.
一本松手前の坂道で,一昨日,私のノートを拾って,見易い岩の上に置いてくれた女性に追いつく.
「おはようございます.一昨日はお世話になりました」
「いいえ・・で.ノート,見付かりましたか・・?」
「いえ・・まだです.一昨日,下山途中ですれ違った(尊仏山荘の小屋番)W林さんにも,見付かったら宜しく・・とお願いしたんですが・・山荘へ行ってみないと分かりません」
暫く雑談後,ひとまず先に行かせて貰う.
この辺りから,登山道の両側に霜柱が見え始める.

<朝日が眩しい林>
■堀山
8時15分,駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから,1時間01分.現在の私の体力では,少々速過ぎる感があるが,まあ,いいか.とにかく体調は良さそうである.
堀山からの富士山は,殆ど雲の中.雲の切れ目から,真っ白の富士山の山肌が見えている.
8時31分,堀山の家を通過する.まだ時間が早いためか開店してない.小草平からの富士山を楽しみにしていたが,既に厚い雲の中である.小草平で若いグループが休憩を取っている.

■萱場平
堀山の家から先の急坂は何となく気楽に登り続けて,8時50分に萱場平を通過する.手許のカシオの時計の温度計では,萱場平の気温はマイナス1.3℃.萱場平一面に霜柱が立っている.

■花立山荘
やがて,後7分坂にさしかかる.気温はマイナス3.8℃になっている.寒いためか時計の調子が狂い始める.機能の切り替えができなくなり,無反応.「時間」の画面が現れない.これでは時間が全く分からない.仕方がないのでデジカメで写真を撮って時間を記録する.
9時10分,花立山荘を通過する.大倉を歩き出してからの所要時間は1時間56分.久々に2時間を切っている.これは率直に嬉しい.もっともご常連の皆様に比較すれば,“屁”みたいな記録だが・・
ここからも,残念ながら,富士山は全く見えない.
花立山荘を過ぎると,霧氷が見え始める.すばらしい.山一面が満開の白い花で覆われたように見える.ところが,デジカメで写真を撮ろうとすると,今度は,低温のためにデジカメが言うことを利かなっている.電源をonにしても,レンズカバーが凍り付いていて開かない.少し開いたところを指で,無理矢理こじ開けて写真を撮る.
ところが,高度が増して,更に気温が下がると,レンズカバーが全く開かなくなる.これには参った.
辺りには粉雪が舞い始める.そして,登山道はうっすらとした雪に覆われはじめる.
<チャンピョンが下る>
※やっとレンズの蓋がちょっと開いた.後は指でこじ開ける.
■素晴らしい樹氷群
花立山まで登ると,樹氷の景色が,ますます素晴らしくなる.ところがカメラも時計も不調で,一体何時かも分からなくなる.美しい写真を撮りたいが,デジカメがウンともスンとも言わなくなる.仕方なく,デジカメをヤッケの中に仕舞い込んで,暫くの間,体温で暖める.さらに,電池を取り出して,手で擦って暖める.こうすれば電池の起電力が多少回復する.
そんなことをしている内に,2番バスで来られた韋駄天氏に追い抜かれてしまう.
でも,暖めている内に,デジカメも幾分動くようになる.今度は半開きのレンズカバーを手で強引に開く.やっと写るようになったところで,何枚かの写真を連続して撮り続ける.しばらくすると,またカメラが冷えてくる.今度ボデーにハア,ハアと息を吹きかけてみる.これは失敗.レンズが水滴で曇ってしまい,さらに凍り付く.あわてて,また,デジカメを懐に入れて温め直す.
こんな苦労を重ねながら,随分沢山の霧氷の写真を撮る.この努力,自分に努力賞をあげたくなる.



■韋駄天のTさんに手帳を拾っていただく
大分道草を食ったが,9時29分,金冷シを通過する.通過後長い階段を登り切る頃,韋駄天のTさんが下山してくる.
「FHさん.ノート落としたでしょう.実は何人かの人たちが落ちているノートを見ていたんですが,私が拾っておきました.すぐにFHさんに電話したんですが,電話番号が変わったとかで不通でした.で,尊仏山荘のW林さんに預けておきましたよ・・」
「そうでしたか! 本当に有り難うございました.大助かりです.」
私は心底からホッとする.
続いて,下山してくる三角髭のTさんとすれ違う.
「いや~・・今日は寒くて参りましたね」
■塔ノ岳山頂
9時43分,無事,塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は2時間29分.たった1分に過ぎないが,2時間半を切っている.もし,カメラがちゃんと動いていれば,ニワトリの真似をしてデジカメを抱いて暖める時間が要らなかったはずである.そう考えると,この2時間29分は,2時間20分程度に相当する.まあ,今の私の体力では,この辺りが適当ということだろう.
山頂の気温はマイナス7.4℃まで下がっている.これはもう真冬並の寒さである.
山頂一帯には少し濃い霧が立ちこめている.それほど風が吹いているわけではないが,さすがに寒い.山頂の写真を撮る儀式を手っ取り早く済ませてから,ソソクサと尊仏山荘に向かう.
■ネコ談義
尊仏山荘に入る.先客は,私と同じバスに乗っていたご常連ばかり.300円也のお茶を所望する.たまたま,皆さんは,娘さんが孫を連れて実家に戻って,やたらに冷蔵庫の中をほじくり返して困る・・それに少し滞在が長引くと草臥れると話している.
「なるほど,なるほど・・・」
かなり頷けるところがある.
小屋番のW林さんから,韋駄天のTさんに拾ってもらったノートを返して貰う.これからはノートを絶対に落とさない算段をしないといけないなと心底から思う.
雑談をしていると,どこからともなくネコのミー君が現れる.W林さんに懐いているらしくて,W林さんの側を離れない.
「こいつ,(病気療養中の)Oさんのこと覚えているでしょうか?」
「どうでしょう? 多分,覚えていると思いますよ・・」
暫くの間,ネコの背中を撫でながら,ネコと戯れる.
「何なら,こいつを持っていきませんか・・」
とW林さんが私に言う.
「持って帰ったら,尊仏山荘に来る意味が無くなっちゃいますよ」
と言いそうになったが,あやうく言うのを押さえる.
「こいつ,もう11才ですよね・・私と同じぐらいじいちゃんですよね・・すぐに死んじゃうかも・・」
するともう一人の小屋番が,
「ペットはどうしても死んじゃうからね・・」
としんみりした調子で言う.


■いろいろな方とバッタリ会う
風景をユックリ眺めながら下山して,大倉発12時40分のバスに乗りたいなと思う.そこで,10時10分に尊仏山荘を出発する.寒いので冬装備である.フリースの手袋だけだと,寒くて指先が痛い.早速,手袋を二枚重ねにする.
先ほどまで実に見事だった樹氷が,今はもう少し痩せ始めている.
花立山荘まで下ると,随分と気温が大分上がって,痛いような冷たさはなくなる.これから登ってくる登山客とすれ違いながら,ユックリと下り続ける.
後7分坂を下りきったところで,山旅スクール5期の男性,Iさんとすれ違う.Iさんは相変わらず元気である.
階段道が終わって岩稜を下っていると,私のブログを読んでいただいている女性が,私を追い越していく.
「・・ノート,見付かりましたか?」
「はい,お陰ざまで・・尊仏山荘の小屋番が預かっていてくれました」
「わ~っ・・良かった!」
と可愛い仕草で返事をしてから,快調に下っていく.私との間の距離は見る見るうちに広がっていく.
後ろ姿も見ながら,若さって良いなとつくづく思う.
萱場平を過ぎて,単調な階段道の下り坂を進む.すると,下からT添氏が登ってくる.T添氏は,今年8月にロッキー山脈へご一緒した仲間である.
「(塔ノ岳に登っていれば),その内にFHさんと会えるだろうと思っていましたよ・・」
記念写真を撮りながら,暫く雑談.
「また,同窓会でも開きましょうよ・・」

<山麓は秋>
■大船も寒い
12時27分に大倉に到着する.予定通りである.
12時40分のバスの乗客は,さきほどまで尊仏山荘にいたご常連ばかり.手帳を拾ってくれた女性も乗車してくる.
「手帳,戻りましたか・・?」
「はい,お陰様で・・・韋駄天のTさんが尊仏山荘に届けてくれました・・」
バス,電車を順調に乗り継いで,13時54分に大船に到着する.大船の寒いこと・・湘南は温かいはずなのに,冷たい風がビュンビュンと吹いている.とても家まで歩いて帰る気がしない.沢山の老人に混じって,バスに乗車する.
家に帰ってからも,身体が寒い.早速,少し熱い風呂に浸かる.やっと気分が落ち着く.
<ラップタイム>
7:14 大倉歩き出し
7:33 観音茶屋
7:47 見晴茶屋
8:15 駒止茶屋
8:31 堀山の家
9:10 花立山荘(-3.0℃)
9:20 花立場
9:29 金冷シ
9:43 塔ノ岳山頂 着(-7.4℃)
==============================================
10:10 塔ノ岳山頂 発
10:24 金冷シ
10:37 花立山荘
11:18 堀山の家
11:33 駒止茶屋
11:55 見晴茶屋
12:09 観音茶屋
12:27 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:14
塔ノ岳 着 9:43
(所要時間) 2時間29分(2.48h)
登攀速度 1269m/2.48h=511.7m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:10
大倉 着 12:27
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
下降速度 1269m/2.28h=556.6m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/d4d886ba667e4dcfee4624696e28f6a4
「丹沢の山旅」の次回の記事
(なし)
霧氷の中を逍遙する丹沢:塔ノ岳(今年38回目)
(単独山行)
2010年12月25日(土)
■わが家を孫娘に占領されたクリスマスイブ
昨日はクリスマスイブ.仏教徒の私には余り関係がないが・・・
横浜のミッションスクール鉄栗鼠中学に通う孫娘が,何も思ったのか,クリスマスイブを鎌倉の私の家でやるんだと張り切る.まあ,彼女にしてみれば,私の家は鎌倉にある格好の別荘ぐらいに思っているんだろう.午後,数名の友達を我が家に連れてきて,わが家1階を占有し,母親(つまり私の娘)とバアさんをメード代わりに使って,徹夜で楽しくやっている.
当然,何の役にも立たないポンコツ爺は無用の長物.言外に山へ行ってしまえと圧力が掛かる.私は,まだ,一昨日,塔ノ岳に登ったばかり.でもまあ,家族から背中を押されるようにして,今日も塔ノ岳詣でだ.もっとも心の中のどこかで,
「シメシメ.今日も丹沢へ出掛けられるぞ・・」
と喜んでいる私がいる.
・・で,今朝,4時前に起床.今日は朝からヤケに寒い.
「これは冬支度で登山しないとヤバイな・・」
と直感した私は,何時もよりフリース1枚と冬用の手袋,それに耳を覆う帽子をリュックに入れる.当然のことながら,リュックの重量は,これまでよりも少し重くなる.
真っ暗で冷たい風がビュンビュン吹く中を,電車を乗り継いで,渋沢発大倉行1番バスに乗車する.私がバスに乗り込んでから,1~2分後に下り電車が到着.沢山の登山客がドヤドヤと乗り込んでくる.例によって,韋駄天のTさん,三角髭のTさん,カメラマンのMさんなど,ご常連が顔を揃える.
■FHさんですか?
大倉に到着してから,例によって私はモタモタ.準備をしていると. カメラマンのMさんから,
「なに・・ノートなくしたんだって・・」
と話しかけられる.
韋駄天組の皆さんは,もうとっくに出発している.やっと,出発準備を整えてトイレに向かう.その途中で,若い女性から,
「・・FHさんですか・・?」
と声を掛けられる.私は随分とビックリする.私の娘と孫の間ぐらいの年配の方である.これまで,何回か,このブログにコメントを寄せていただいている.
私のブロブを見に来て下さる方は,年配者だけだろうと端から思い込んでいた私は,うら若い女性から声を掛けられて,本当にビックリしてしまう.でも若い方に私のブログを見ていただけるのは有り難いことである.
「・・(落とした)手帳,見付かりましたか?」
「いえ,まだ,見付かりません・・でも,データは毎回パソコンに記録していますので,実害は軽微です.ご安心下さい」
それにしても,私がノートを落としたことを,何人もの方が知っているのに驚かされる.
■ノートを拾ってくれた女性に追いつく
7時14分に大倉を歩き出す.今日のモタモタ度は特にひどかったので,もう2番バスが大倉に登ってくるのが見える時間である.歩き出しても寒い.少しでも暖かになろうとして,ついつい歩行速度が速くなる.歩き出して12分で丹沢ベースを通過する.これはいくら何でも速すぎる.こんなことをしていたら,後半でバテること必至である.私は意識的に歩行速度を少し落とす・・・が,寒いのでどうしても速歩になってしまう.
一本松手前の坂道で,一昨日,私のノートを拾って,見易い岩の上に置いてくれた女性に追いつく.
「おはようございます.一昨日はお世話になりました」
「いいえ・・で.ノート,見付かりましたか・・?」
「いえ・・まだです.一昨日,下山途中ですれ違った(尊仏山荘の小屋番)W林さんにも,見付かったら宜しく・・とお願いしたんですが・・山荘へ行ってみないと分かりません」
暫く雑談後,ひとまず先に行かせて貰う.
この辺りから,登山道の両側に霜柱が見え始める.

<朝日が眩しい林>
■堀山
8時15分,駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから,1時間01分.現在の私の体力では,少々速過ぎる感があるが,まあ,いいか.とにかく体調は良さそうである.
堀山からの富士山は,殆ど雲の中.雲の切れ目から,真っ白の富士山の山肌が見えている.
8時31分,堀山の家を通過する.まだ時間が早いためか開店してない.小草平からの富士山を楽しみにしていたが,既に厚い雲の中である.小草平で若いグループが休憩を取っている.

■萱場平
堀山の家から先の急坂は何となく気楽に登り続けて,8時50分に萱場平を通過する.手許のカシオの時計の温度計では,萱場平の気温はマイナス1.3℃.萱場平一面に霜柱が立っている.

■花立山荘
やがて,後7分坂にさしかかる.気温はマイナス3.8℃になっている.寒いためか時計の調子が狂い始める.機能の切り替えができなくなり,無反応.「時間」の画面が現れない.これでは時間が全く分からない.仕方がないのでデジカメで写真を撮って時間を記録する.
9時10分,花立山荘を通過する.大倉を歩き出してからの所要時間は1時間56分.久々に2時間を切っている.これは率直に嬉しい.もっともご常連の皆様に比較すれば,“屁”みたいな記録だが・・
ここからも,残念ながら,富士山は全く見えない.
花立山荘を過ぎると,霧氷が見え始める.すばらしい.山一面が満開の白い花で覆われたように見える.ところが,デジカメで写真を撮ろうとすると,今度は,低温のためにデジカメが言うことを利かなっている.電源をonにしても,レンズカバーが凍り付いていて開かない.少し開いたところを指で,無理矢理こじ開けて写真を撮る.
ところが,高度が増して,更に気温が下がると,レンズカバーが全く開かなくなる.これには参った.
辺りには粉雪が舞い始める.そして,登山道はうっすらとした雪に覆われはじめる.

<チャンピョンが下る>
※やっとレンズの蓋がちょっと開いた.後は指でこじ開ける.
■素晴らしい樹氷群
花立山まで登ると,樹氷の景色が,ますます素晴らしくなる.ところがカメラも時計も不調で,一体何時かも分からなくなる.美しい写真を撮りたいが,デジカメがウンともスンとも言わなくなる.仕方なく,デジカメをヤッケの中に仕舞い込んで,暫くの間,体温で暖める.さらに,電池を取り出して,手で擦って暖める.こうすれば電池の起電力が多少回復する.
そんなことをしている内に,2番バスで来られた韋駄天氏に追い抜かれてしまう.
でも,暖めている内に,デジカメも幾分動くようになる.今度は半開きのレンズカバーを手で強引に開く.やっと写るようになったところで,何枚かの写真を連続して撮り続ける.しばらくすると,またカメラが冷えてくる.今度ボデーにハア,ハアと息を吹きかけてみる.これは失敗.レンズが水滴で曇ってしまい,さらに凍り付く.あわてて,また,デジカメを懐に入れて温め直す.
こんな苦労を重ねながら,随分沢山の霧氷の写真を撮る.この努力,自分に努力賞をあげたくなる.



■韋駄天のTさんに手帳を拾っていただく
大分道草を食ったが,9時29分,金冷シを通過する.通過後長い階段を登り切る頃,韋駄天のTさんが下山してくる.
「FHさん.ノート落としたでしょう.実は何人かの人たちが落ちているノートを見ていたんですが,私が拾っておきました.すぐにFHさんに電話したんですが,電話番号が変わったとかで不通でした.で,尊仏山荘のW林さんに預けておきましたよ・・」
「そうでしたか! 本当に有り難うございました.大助かりです.」
私は心底からホッとする.
続いて,下山してくる三角髭のTさんとすれ違う.
「いや~・・今日は寒くて参りましたね」
■塔ノ岳山頂
9時43分,無事,塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は2時間29分.たった1分に過ぎないが,2時間半を切っている.もし,カメラがちゃんと動いていれば,ニワトリの真似をしてデジカメを抱いて暖める時間が要らなかったはずである.そう考えると,この2時間29分は,2時間20分程度に相当する.まあ,今の私の体力では,この辺りが適当ということだろう.
山頂の気温はマイナス7.4℃まで下がっている.これはもう真冬並の寒さである.
山頂一帯には少し濃い霧が立ちこめている.それほど風が吹いているわけではないが,さすがに寒い.山頂の写真を撮る儀式を手っ取り早く済ませてから,ソソクサと尊仏山荘に向かう.
■ネコ談義
尊仏山荘に入る.先客は,私と同じバスに乗っていたご常連ばかり.300円也のお茶を所望する.たまたま,皆さんは,娘さんが孫を連れて実家に戻って,やたらに冷蔵庫の中をほじくり返して困る・・それに少し滞在が長引くと草臥れると話している.
「なるほど,なるほど・・・」
かなり頷けるところがある.
小屋番のW林さんから,韋駄天のTさんに拾ってもらったノートを返して貰う.これからはノートを絶対に落とさない算段をしないといけないなと心底から思う.
雑談をしていると,どこからともなくネコのミー君が現れる.W林さんに懐いているらしくて,W林さんの側を離れない.
「こいつ,(病気療養中の)Oさんのこと覚えているでしょうか?」
「どうでしょう? 多分,覚えていると思いますよ・・」
暫くの間,ネコの背中を撫でながら,ネコと戯れる.
「何なら,こいつを持っていきませんか・・」
とW林さんが私に言う.
「持って帰ったら,尊仏山荘に来る意味が無くなっちゃいますよ」
と言いそうになったが,あやうく言うのを押さえる.
「こいつ,もう11才ですよね・・私と同じぐらいじいちゃんですよね・・すぐに死んじゃうかも・・」
するともう一人の小屋番が,
「ペットはどうしても死んじゃうからね・・」
としんみりした調子で言う.


■いろいろな方とバッタリ会う
風景をユックリ眺めながら下山して,大倉発12時40分のバスに乗りたいなと思う.そこで,10時10分に尊仏山荘を出発する.寒いので冬装備である.フリースの手袋だけだと,寒くて指先が痛い.早速,手袋を二枚重ねにする.
先ほどまで実に見事だった樹氷が,今はもう少し痩せ始めている.
花立山荘まで下ると,随分と気温が大分上がって,痛いような冷たさはなくなる.これから登ってくる登山客とすれ違いながら,ユックリと下り続ける.
後7分坂を下りきったところで,山旅スクール5期の男性,Iさんとすれ違う.Iさんは相変わらず元気である.
階段道が終わって岩稜を下っていると,私のブログを読んでいただいている女性が,私を追い越していく.
「・・ノート,見付かりましたか?」
「はい,お陰ざまで・・尊仏山荘の小屋番が預かっていてくれました」
「わ~っ・・良かった!」
と可愛い仕草で返事をしてから,快調に下っていく.私との間の距離は見る見るうちに広がっていく.
後ろ姿も見ながら,若さって良いなとつくづく思う.
萱場平を過ぎて,単調な階段道の下り坂を進む.すると,下からT添氏が登ってくる.T添氏は,今年8月にロッキー山脈へご一緒した仲間である.
「(塔ノ岳に登っていれば),その内にFHさんと会えるだろうと思っていましたよ・・」
記念写真を撮りながら,暫く雑談.
「また,同窓会でも開きましょうよ・・」

<山麓は秋>
■大船も寒い
12時27分に大倉に到着する.予定通りである.
12時40分のバスの乗客は,さきほどまで尊仏山荘にいたご常連ばかり.手帳を拾ってくれた女性も乗車してくる.
「手帳,戻りましたか・・?」
「はい,お陰様で・・・韋駄天のTさんが尊仏山荘に届けてくれました・・」
バス,電車を順調に乗り継いで,13時54分に大船に到着する.大船の寒いこと・・湘南は温かいはずなのに,冷たい風がビュンビュンと吹いている.とても家まで歩いて帰る気がしない.沢山の老人に混じって,バスに乗車する.
家に帰ってからも,身体が寒い.早速,少し熱い風呂に浸かる.やっと気分が落ち着く.
<ラップタイム>
7:14 大倉歩き出し
7:33 観音茶屋
7:47 見晴茶屋
8:15 駒止茶屋
8:31 堀山の家
9:10 花立山荘(-3.0℃)
9:20 花立場
9:29 金冷シ
9:43 塔ノ岳山頂 着(-7.4℃)
==============================================
10:10 塔ノ岳山頂 発
10:24 金冷シ
10:37 花立山荘
11:18 堀山の家
11:33 駒止茶屋
11:55 見晴茶屋
12:09 観音茶屋
12:27 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:14
塔ノ岳 着 9:43
(所要時間) 2時間29分(2.48h)
登攀速度 1269m/2.48h=511.7m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:10
大倉 着 12:27
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
下降速度 1269m/2.28h=556.6m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/d4d886ba667e4dcfee4624696e28f6a4
「丹沢の山旅」の次回の記事
(なし)
本当に寒くて私のカメラも途中動かなくてびっくりしました。
それにしてもF.Hさんの登りの速さに比べるとまだまだ私は修行が足りないなと改めて思います。
でも今回嬉しいことに登りのタイム更新できましたっ!
今年最後の山行でF.Hさんに初めてご挨拶できたし、ミーくんにも会えたしで大満足の塔ノ岳でした。
コメント有り難うございました.
お声を掛けていただき有り難うございました.
25日,カメラが動かなくなったのは私だけかと思っていましたが,ヤッパリ・・
実は,今日,某量販店に行って,
「寒い所でも,ちゃんと動くカメラはどれですか」
と質問して怪訝な顔をされました.
私の登りが速いなんて・・とんでもない!
常連の大半は,大倉尾根を2時間前後で登っています.私など,まだまだトホホ・・です.
でも,まあ,山頂まで登れるだけで,良しとしようかというのが本音です.
また,大倉尾根でお会いしましょう.
コメント有り難うございました.