<霧がわき出る花立山>
炎暑;ネコと雷鳴の丹沢;塔ノ岳(今年34回目)
(単独山行)
2011年8月13日(土)
■よおしっ! 丹沢へ行くぞ
このところ,連日,猛暑日が続いている.熊谷で39℃なんていうニュースを聞くと,もう39という数字だけで,どこかへ行こうという気分も萎えてくる.
実は水曜日辺りに,丹沢へ行こうかと思っていたが,高温注意報がでていたので,山行は差し控えていた.もともとの気象予報では木曜日ぐらいから少しずつ気温が下がるようなことを言っていたが,本州南方に発生した台風と本州北の台風崩れの低気圧の間に挟まれた本州は南から高温で湿った空気が流れ込むので,当初予報よりもう少し暑い日が続くという.
そうはいっても,前回,塔ノ岳に登ったのが先週土曜日の8月6日.ボヤボヤしていると1週間も間が開いてしまう.
昨日(8月12日)深夜,有料の天気予報を見る.すると,気温は申し訳程度低くなるようである.天気は基本的に曇りだが,ときどき晴れるようである.安全に登山するには,まだ,まだ,気温が高いなと思ったが,熱中症に十分気をつけながら,体調と相談しながら無理のない範囲で大倉尾根を登ることにする.
今はもう8月中旬.夏至からもう約2ヶ月.暦の上では立秋をとっくに過ぎている.残念ながら夜が明けるのが大分遅くなっている.少し前までは4時前に明るくなっていたが,今はもう4時半を過ぎても薄暗いままである.
朝食を済ませて,5時10分に家を出る.この時間になるとすっかり明るくなっているが,昨日の蒸し暑い空気が辺り一帯に淀んでいて,気温は29.5℃と,予想以上に高い.朝からこんなに気温が高いと,どうもやる気が削がれてしまう.
東海道本線の小田原行の電車に乗る.丁度お盆休みが始まった所なので,それぞれの田舎に帰省している人が多いのか,何時もより電車が空いている.小田急線の電車も好き空きである.
渋沢発大倉行1番バスも土曜日にしては随分と空いていて,乗客は10数名だけ.バスの前の方には期せずしてご常連ばかり.韋駄天のTさん,K大Nさん,Y内さん,K井さんなど.大部分の方は,私など遠く及ばない俊足である.
バスは7時に大倉に到着する.7時の大倉の気温は29.5℃.この夏,私が登った塔ノ岳では,今日が一番暑いようである.
7時08分,例によって,私は一番最後に近い時間に歩き出す.
■蒸し暑い登山道
路面は良く乾いている.歩きやすい.ついつい調子に乗って歩行速度が速くなる.7時12分,登山口を通過する.私の前には一見(イチゲン)の登山客・・と言うと語弊があるが,平素,山歩きを余りされていないと思われる方々が何人か居られる.私はいくら足が遅いとはいえ,平素ほとんど登山をしていない方よりは,少しは速く登れるので,追い越させて頂く.逆に後から来た何人もの若い登山者に追い抜かれる.
7時21分,丹沢ベースを通過する.この辺りの登山道は幅員が狭くて,両側から雑草が覆い被さっているので,随分と暑苦しい.しかも全くの無風.気温は28.1℃.ジッとしていても,汗がだらと出てくる.もちろん,呼吸が乱れないように,決して急ぐことはしない.それでも,噴き出る汗を手ぬぐいで拭っていると,たちまちの内に手ぬぐいが汗でベタベタになる.
どうやら,空は晴れているようで,眩しい日光が木の枝の間から登山道に射し込んでる.木々の緑がとても美しい.蒸し暑くさえなければ最高の散策路なのに・・
雑事場ノ平に近付いたとき,一瞬,空気が動く.微風がほんのチョッピリ吹いたようである.それでも汗ばんだ身体にへばり付いているベタベタを幾分でも拭い去ってくれる.
「雑事場ノ平に到着したら,尾根越えの風があるかな・・」
私は,風を期待しながら,7時42分に雑事場ノ平を通過する.私の前を歩いていた男性が,雑事場ノ平のベンチにヘタヘタと座り込む.しかし,期待に反して,ここでも全く無風.がっかり.
いよいよ,見晴山荘から急坂にさしかかる.
全く無風.25.6℃.ユックリ登っているのに.汗が止めどもなく流れ出る.これはいかんなと思いながら,ハイドレーションから,かなり頻繁に給水する.
「オレは絶対に熱中症にはならないぞ・・」
と,何回も,何回も自分に言い聞かせながら,ともすれば早足になりそうな自分を制御する.
8時03分,一本松を通過する.一本松近くのベンチで男性が1人休憩を取っている.軽く会釈をして通過する.
<こぼれ日の登山道>
■全く無風の堀山の尾根
やがて駒止茶屋手前の急階段にさしかかる.思い切りユックリと登って,8時20分に駒止茶屋を通過する.若い男性が,私をすいすいと抜いていく.大倉を歩き出してから丁度1時間12分.この蒸し暑い時期では,まあ,私の実力では,こんなものだろう.
やっと堀山の尾根に入る.残念ながら相変わらず無風.木立の間から,蒸し暑そうな霧に覆われた表尾根が見えている.反対側の富士山は,沸き上がる雲に隠れていて全く見えない.
何時もならば,堀山から堀山の家の手前までの緩やかな下り坂を,かなり速い速度で掛けるようにして下るのだが,今日はその元気はない.ノソノソと下って,堀山の家の手前で登り返して,8時40分に堀山の家を通過する.小草平のベンチには数名の登山客が休憩を取っている.気温24.3℃.
<富士山に雲が巻き付いている>
■蒸し暑い萱場平
堀山の家からの急坂を登り始める.シンドイので速度は出ない.相変わらず蒸し暑いので,閉口する.
8時46分,上から下ってきたご常連のK重さんとすれ違う.
「あれっ!・・・今日は随分とお早いですね・・・」
「いえいえ・・・こう暑いと速くは歩けないので,自動車でうんと早く来て涼しい内に登っているんですよ・・」
何人もの若い登山者に追い越されながら,9時02分,やっと萱場平を通過する.全く人影がない.前方の空に雲が湧き始める.
■霧が美しい鍋割山稜
その後も難行苦行である.9時22分,漸く後7分坂にさしかかる.気温24.3℃.相変わらず蒸し暑い.周りに木立がないので,後ろからジリジリと太陽が照りつける.ここで私より1本後のバスで来られたご常連に追い越される.このご常連と雑談をしている内に,同じバスに乗り合わせていたご常連の女性にも追い越される.意気地のないことだが,追い越されるとたちまちの内に私との距離が開いていく.その距離を詰めようとする気にもならないし,第一,私の体力ではお二方に付いていくのは到底無理.
エッチラ,ホッチラ,マイペースで登って,9時33分に漸く花立山荘に到着する.気温25.4℃,ベンチでは何人かの登山客が休憩を取っている.花立山荘は,もう開店している.氷水を飲みたいなと思ったが我慢して,そのまま登り続ける.
9時42分頃,漸く花立山に到着する.何時の間にか下界から雲が沸き上がり,辺りはかなり深い霧に覆われ始める.そてと同時に,空気が少し動くのか,大分涼しくなり過ごしやすくなる.近くの森でウグイスが鳴いている.
馬の背を歩く.何時も大倉尾根を歩いていて思うのは,この辺りの風景の素晴らしさである.鍋割山稜との間の深い谷は沸き上がる雲で茫洋としてる.ちぎれ雲が鍋割山稜の山裾を這うように昇ってくる.私は時々立ち止まってこの美しい風景をデジカメに納める.
■やっと塔ノ岳山頂へ
9時51分,漸く金冷シを通過する.つい2~3年前,元気な頃ならば,もうとっくに尊仏山荘でお茶を楽しみ,そろそろ下山しようかと思っている時間である.それにしても,ここ2~3年の間に随分と体力が落ちたなと実感する.
とはいえ,ここから先は急いでもユックリでも,山頂までの所用時間は,5分と変わらない.
「何も急ぐことはない・・・」
と改めて自分に言い聞かせる.
山頂直下で,降りてくる韋駄天のTさんとすれ違う.何時もよりすれ違う場所が山頂に近い.おかしいなと思っていると,
「あんまり暑いんで,ビール飲んで,ユックリしちゃいました・・・ところで,クシャミが出ませんでしたか?」
「ええっ!・・何ですか」
「皆でFHさんの噂話をしていたんですよ・・」
私が噂話の話題になるとは光栄なことである.
ついでに,Tさんが幹事をしている11月の○○温泉1泊旅行の申し込みをする.塔ノ岳ご常連の年1回の懇親会である.今から本当に楽しみである.
雑談をしたり写真を撮ったりで道草をしたが,10時08分,やっと塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は3時間丁度.不本意ながら,これが現在の私の実力だから仕方がない.とにかく熱中症にもならずに何とか山頂まで辿り着いたことをよしとしなければ・・・
山頂の気温は24.3℃.登山中は,とにかく,蒸し暑かった.
山頂では10名ほどの登山客が休憩している.
今日も,残念ながら,雲が多くて,遠くの山は全く見えない.山頂で暫く立休憩をして汗が引くのを待つ.
■ネコが接客の尊仏山荘
尊仏山荘に入る.私と同じ1番バスに乗り合わせたご常連数名が先客である.
今日の小屋番はW田さんである.同じバスに乗り合わせた大半の方は,もうお茶を済ませて下山している.何時ものように300円也のお茶を所望する.
暫くの間,とりとめもない雑談をした後,
「・・ネコ,元気にしていますか?」
とW田さんに伺う.
「・・ええ,元気ですよ・・今,2階で昼寝をしています.ちょっと待って下さい.連れてきます・・」
このやり取りを聞いていたどなたかが,
「ネコは一番涼しい所を知っているんですね・・」
という.
昼寝をしていたミー君は,いきなり起こされたので,寝ぼけ顔である.大あくびをして,しっぽをぐるりと回す.そして,澄んだ声で,
「にゃあ~ん・・」
と鳴く.ミー君をそっと抱き上げる.体調も良さそうである.
可愛がっていたOさんが退職してから,ミー君は逆に少し愛想が良くなったかもしれない.暫くの間,客席をウロウロしている.
「・・先日,小学生が3日間合宿していたんですよ.皆,ネコを可愛がるんですが,子どもだから遠慮がないでしょう・・その内にネコの方も草臥れたのか,どこかへ隠れてしまいましたよ・・」
とW田さんが逸話を披露する.
ネコと戯れている内に,K大Nさんが尊仏山荘に到着する.
「おや,Nさん.今日はお早いお着きですね・・・」
と誰かが言う.
「今日は,先週より(暑さに慣れたのか)調子が良かったですよ・・」
数年前,K大Nさんと,ネコをあやしながら,
「・・こいつが居ると癒されますね・・・尊仏山荘の営業部長ですよ・・」
と雑談したことがある.この雑談の様子を,このブログで記事にした所,だんだんと「営業部長」という呼称が浸透したと思っている.
■また雷鳴でヒヤヒヤの下山道
ネコと遊んでいる内に,思わず長居をしてしまった.何時もより1時間も遅い11時11分に尊仏山荘から下山を開始する.
山頂は,相変わらず霧の中.何時もの土曜日より少ないとはいえ十数人の登山客が休憩を取っている.相変わらず気温は高いが,それでも,ジッとしているととても涼しい.下山開始直後は,涼しいのでとても気分がよい.結構調子よく下り続ける.
11時21分,花立山を通過する.そして,花立山荘に近付くと,40キログラムの荷物を背負ったチャンピョンとすれ違う.
「ご苦労様です・・」
と挨拶すると,
「暑いのにご苦労さんですね・・・今日はこれが2回目.もう一度登らなければならないんです・・」
お仕事とはいえ,この暑い時期に.本当に大変である.
11時28分,花立山荘に到着.ベンチは登山客で一杯である.ベンチの空きを探して,ここで昼食を摂る.昼食と言っても牛乳とオニギリ1個.数週間前,NHKの「ためしてガッテン」で,汗をかいた後30分から1時間の間に牛乳を飲むのが良いと聞いたので,それからは,毎度登山をするごとに牛乳を飲むようにしている.
10分ほど休憩の後,再び下山を開始する.しかし,下るにつれて猛暑になりはじめる.やがて,下っているのに汗が止めどもなく出始める.私は意識的に歩行速度を遅くする.こんな暑い日でも,登山者が次から次へと登っている.夏休みのためか,若い人のグループや,子ども連れの方が何時もより多いようである.
13時丁度に見晴山荘を通過する.気温25.7℃.大山方面にどす黒い雨雲が見える.ときどき雷が鳴っている.
「これはまずいな・・また今日も雷雨に見舞われるかな・・」
でも,蒸し暑いので,急ぐ気になれない.雑事場ノ平を過ぎると,うるさいアブが,次から次へとやってきて,私の身体の周りを飛び続ける.ムシムシする登山道をひたすら下り続ける.大山方面から雷鳴が絶え間なく轟き始める.ときどき,近くに落雷する,その度に大気が引き裂かれるような衝撃音が轟く.
正直な所,雷は怖い.やだなあと思いながら,下り続ける.杉林の中からカナカナゼミがもの悲しげに鳴く声が響いている.雷鳴とともに少し風が出てくる.途端に涼しくなる.
克董窯を通過する頃,雨が降り始める.霧雨程度の雨なので,雨自体は気にすることはないが,張り裂けるような雷鳴はイヤだ.ノンビリと下って,13時38分にバス停大倉に到着する.そのとき,目の前のバスが発車する.
「しまった! 今日は土日のダイヤだった!」
30分ほどバスの待ち時間があるので,水道の水で上半身の汗を拭き取ってからTシャツを着替える.ただ,ズボンはベタベタのまま,シネシネしていて実に気持ちが悪い.
何時の間にか雷雲は遠ざかって,雨も止んだ.
悔しがるがやむを得ない.バス停脇の青空市場を見て回る.真夏なので陳列されている品数が少ない.
<チャンピョンが登る>
<大山方面に雷雲がかかっている>
■孫達に囲まれて団らんの夕食
何時もより大分遅くなったが,小田急線と東海道本線を乗り継いで,15時33分に大船に到着する.気温33.4℃.やっぱり山よりも暑い.
16時頃帰宅.
ほぼ同時に長女と孫が来る.私のリュック姿を見て,
「出掛けるの? 返ってきたの?」
と遠慮のない質問をする.
とにかくシャワーを浴びて,ドロドロ汗を流す.衣類を着替えると,サッパリとした気分になる.
そうこうしている内に,次女一家が我が家を訪れる.夫婦と孫3人が加わる.私たち老夫婦を交えて,総勢10人の大夕食会が始まる.今夜は全員が我が家に宿泊する.
まあ,いろいろと面白い1日であった.
<ラップタイム>
7:08 大倉歩きだし(29.5℃)
7:28 観音茶屋(26.7℃)
7:44 見晴茶屋(24.6℃)
8:20 駒止茶屋(24.5℃)
8:40 堀山の家(24.3℃)
9:33 花立山荘(25.4℃)
9:51 金冷シ(24.9℃)
10:08 塔ノ岳山頂着(24.3℃)
=============================
11:11 塔ノ岳山頂発
11:28 花立山荘(11:35まで昼食)
12:12 堀山の家(23.7℃)
12:31 駒止茶屋(24.0℃)
13:00 見晴山荘(25.5℃)
13:17 観音茶屋
13:41 大倉着(27.0℃)
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登り所用時間(雑談時間込み)
大倉 発 7:08
塔ノ岳 着 10:08
(所要時間) 3時間00分(3.0h)
水平歩行速度 7.0km/3.0h=2.33km/h
登攀速度 1269m/3.0h=423m/h
■下り所要時間(休憩時間込み)
塔ノ岳 発 11:11
大倉 着 13:38
(所用時間) 2時間27分(2.45h)
水平歩行速度 7.0km/2.45h=2.86km/h
登攀速度 1269m/2.45h=518.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
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