子供の頃を過ごしたのは京都、東寺の北門の近くで、
塀を隔てて隣が踊りの、お師匠さん。
当時は嫁入り前のお稽古事として娘さん達がよく
習いに来ていたものです。
特に、雨の日や、夕方には三味線の音がよく聞こえてきます。
”チンチンテンツツトツンテン” ”ハッ!。
”春は花 いざ見にでんせ 東山、
そこでくるっと回って右足でトン”
とまぁ、こんな感じ。
たまにどこかの大旦那と思われる人が来て、
三味線に合わせて都都逸の練習しています。
門前の小僧習わぬ経を読むで自然に耳に入ってきます。
そこで聞き覚えの都々逸を。
先ずは、差しさわりのないところで
”立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は 百合の花”
とまぁ、女性に憧れているうちがはなで
”君は野に咲く あざみの花よ 見ればやさしや 寄れば棘”
と痛い目に遭いますが、それでも理屈道理に
いかないのが男女の仲
”夢に見るよじゃ 惚れよがうすい 真に惚れたら 眠られぬ”
とそこまで惚れて一緒になっても、男は勝手なもんで
女房に隠れて浮気するが、しかし女性の感は鋭い故
すぐにばれます。
”あんな女が どうしていいの お前に似ている とこがいい”
なんて、うまいこと言うね色男。
しかし色恋沙汰も若いうち、長年連れ添っていれば
”うちの亭主と こたつの柱 なくてならぬが あって邪魔”
お後が宜しいようで。