前回の記事で作ったククサ。
ククサ 自作のススメ その1 ~失敗編~
ククサ 自作のススメ その2 ~どうにか完成編~
問題無く使えているのですが、やっぱり容量180mlだと少し物足りない。
もう一回り大きいの作りたいけど、面倒だなぁ、などと考えていたのですが。
庭に積んだ薪を整理していたら、まだ桜の玉切が残っていました。
前回のククサが2019年1月に作ったので、ちょうど二年くらい乾燥させていた事になります。
せっかくなので、再度ククサ作りにチャレンジです。
まずは玉切された丸太を半割にします。
ど真ん中の芯の部分は木割れが発生しやすいので、数センチ削って使用します。
基本の作り方は、前回と変わらず。
木工ドリルで下穴を開け、チゼルでコツコツと掘り進めます。
テクニックもコツもありません。
ここは忍耐と持久力で進めるしかありません。
どうにか広さと深さを確保し、大きなククサにしたいのですが、なかなかうまく行きません。
ある程度の深さになると、フチの部分が邪魔になり工具で底部分を削るのが非常に難しくなります。
こういう作業はやっぱりフックナイフなどあると楽なんでしょうね。
ちなみに今回は2×4を全ネジでつないだ固定器具に材料を挟み込んで作業します。
木工に限らず、切削作業を上手くやるコツは、材料をしっかり固定する事です。
材料がグラグラ動くと、工具から伝わるべき力が分散され、効率が各段に落ちてしまいます。
ボウルの部分がある程度掘れてきたので、周囲の不要部分をノコギリで切り落としていきます。
一気に大きく切ってしまうと、もし割れや欠けが発生した時のリカバリーが効かなくなります。
これも地味ですが、様子を見て何回にも分けて切り出していきます。
その木割れを避けるために芯の部分を外して材料を取ったのに、やはり中心部分に亀裂が出てしまいました。
そこまで深くないので、このまま作業を進めてみます。
木のボウル部分は電動ドリルに研磨工具を付けてちょっとずつ仕上げて行きます。
外側部分も、ディスクグラインダーを使って少しづつ削っていきます。
前回のククサは側面も厚かったので、今回は5㎜程度を目標として削ります。
順調に作業をしていたら・・・
やってしまいました。
取っ手部分がバキっと。
元の木材から使う部分を切り出す事を「木取り」と言います。
基本的に取っ手部分など力が掛かる部分に、今回の様に「木目が横に入る」やり方はNGです。
見ての通り、木は繊維方向には簡単に折れたり剝がれたりします。
・・・今回はククサを横から見た時に年輪がはっきり分かるようにこの木取りをしたんですが・・・見事に失敗でしたね。
しかし、修復すれば問題ない場所でもあるので、タイトボンドⅢで修復して作業を続けます。
でも、これで乾燥時間で丸一日潰すことに・・・
ちなみに今回使った電動ドリルに装着する工具。
左から鬼目ヤスリ、回転カッター、ヤスリ番手違いのフラップホイル、そして硬さ違いの研磨用「アフロ君」。
あとは木工用ドリルがあれば、時間は掛かりますが電動工具だけでもボウル部分は作れます。
ちょっと本題から外れますが・・・
もし、スプーンやククサのような物を作りたいと思っている方には、インパクトドライバーとディスクグラインダーの用意をお勧めします。
電動ドリルやインパクトドライバーに取り付け可能な先端工具は非常に種類が多く、いろいろな掘削作業が出来ます。
ディスクグラインダーも同じく取り付ける砥石ディスクを変えるだけで、金属切断から表面研磨まで様々に使えます。
特に自分が多用しているのは「マジックパッド」という、ベルクロで紙ヤスリを取り付けられるオプションです。
ただ、掘削の粉塵がスゴイので、作業環境が確保できないマンション住まいの方などはお風呂場などでの作業が良いかもしれません。
ベランダなんかでやったら、騒音に加え物凄い量の木粉が飛び散り、ご近所の洗濯物が大変な事になりますので・・・
取っ手部分にドリルで指通しの穴をあけ、持ちやすい形に整えて行きます。
細かい部分はミニリューターがあると便利ですね。
自分はドレメル社のフィーノというエントリーモデルを使っています。
これ1本で木工をするにはパワー不足ですが、トルクやパワーが必要な箇所は電動ドリルで作業するので、細工や表面処理にパワー不足を感じる事はありません。
むしろこれも電動ドリルなどと同じで、効果的な先端工具をチョイスする事の方が大切な気がします。
こればかりは買って試すしかないのですが、結構高額なのでポンポン買って気軽に試せないのがネックですね。
電動工具での削り込みもほぼ終わり、形になってきました。
ここからは紙ヤスリによる手作業に変えます。
写真を見ると、ディスクグラインダーを使った後が面で残っており、ククサの表面が亀甲状になっているのが分かると思います。
もちろん、カクカクしたデザインでも良いのですが、今回は年輪が綺麗に見えるよう、なめらかな表面を目指します。
手作業で修正した後です。
紙ヤスリは♯120で成形、♯240で表面のキズを消し、♯400から艶出しと細かい部分の研磨をします。
特に♯400は全体を磨き終わった後、一度流水で削りカスの微粉を落とし表面をケバ立たせてから再度♯400で研磨します。
この「水洗い⇒研ぎ直し」をすると、表面が綺麗に仕上がります。
気になってた芯の部分の木割れも、深く進行していませんし、表面を綺麗に整えたのでそのままにしています。
ここを割れの無い位置まで削ってしまうとフチ全体が低くなり、容量が減ってしまいます。
仕上げはオイルフィニッシュにします。
使うのは乾性油の荏胡麻油です。
よく、木工のオイルフィニッシュについて、「乾性油」と「非乾性油」の説明をしているサイトを見ます。
例えばオリーブオイルは非乾性油だから木工には向いていないというのが通説の様ですが、乾性油も酸化反応で完全に乾く(加熱などでも液状に変化しない状態)には数年かかるらしいのです。
つまり、何年も使い続けていれば差が出るかも知れないが、完成してしばらくは非乾性油だろうと状態は同じじゃないかと思うんですよね。
実際、今までの木工で非乾性油で仕上げた作品もありますが、しっかり木に染み込んでいる状態で表面が乾いているものは、使っていても全く不具合はありません。
だから、乾性油か非乾性油かは、素人木工レベルなら実はあまりこだわる必要は無いのではないか?と思うわけです。
今回、取っ手の上側部分は不格好に大きく角ばっています。
本場の北欧のククサを見ていると、この取っ手部分のエンドに鹿角の飾りがついたモデルがあります。
それを真似て飾りを作ろうと思っていたのですが、作業に時間が掛かるとモチベーションが低下するので、一旦後から加工できる余地を残して完成させる事にしました。
また、今までは仕上げ前に水で煮てアク抜きを行っていましたが、今回はそれも省きました。
前回、煮込んだ後の乾燥作業で木割れが発生した事と、元の木材自体、2年近く風雨に晒して乾燥させたので、ある程度はアクも抜けているんじゃないかと思ったからです。
暫くは入れた飲み物が木の味になってしまうかも知れませんが、まあ、割れて使い物にならなくなるよりは良いと思ってます。
更に最後の一押し!
オイルを浸透させた後、♯1000の紙ヤスリで磨きます。
そして、フエルトバフに、蜜蝋と荏胡麻油をMIXしたワックスを塗り、ポリッシングして完成です。
蜜蝋ワックスが、極僅かな傷を埋める事で、より手触りの良い仕上がりになります。
今回、指通し穴も一つだけにしたのは、この横からのアングルで年輪をハッキリ見せたかったからです。
まあまあ成功したんじゃないでしょうか?
同じ桜の木から作った作品を並べてみました。
他にも人に贈ったり、すぐに取り出せなかった細かい作品があるのですが・・・
特にククサは前回の作成と今回で、作る条件の違いで見た目の違いもはっきりしています。
そして、肝心のククサの容量ですが・・・
実用200ml
あれだけ苦労して削ったのに、なかなか容量が増えません!
開口部の直径はこれ以上開けてしまうとマグカップとしては飲み難くなってしまうし、何よりコーヒーが冷めるのが早くなってしまいます。
やっぱり、深さか・・・
またいい材料があったらククサ作りにはチャレンジしてみたいです。
最近「グリーンウッドワーク」という物も気になっています。
掘りやすい生木なら、もっと深さのあるククサが作れるかなぁ?
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