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第七十五章 貪損(たんそん)(貪(そこな)れば 損 う)
民の 飢 するは、其の上の税を食むことの多きを以てなり。
是を以て 飢(いいうえ) す。
民の治め難きは、其の上の為すこと有るを以てなり。是を以
て治め難し。
人の死を軽んずるは、其の生を求むることの厚きを以てな
り。是を以て死を軽んず。
夫れ唯り生を以て為すこと無き者は、是れ生を 貴 ぶに賢れ
り。
上に立っている為政者は、民の租税を以て仕事をなし、生活をしているものである。
もし、上に立つ者が名利の念に駆られて、大きな事業を起こしたり、豪奢な暮しをしたりすれば、必ず重税を取り立てることになり、そのために、民は自分の食料にもこと欠くようになり、飢えに苦しむ者が多く生ずるようになるのである。
地位を得、或は富を得れば、その生活を豊かにし、生を全うすることができると思ってやっていることが、実は、無理なことをしたり、冒険を犯すことになって、常に身を危険にさらすことになり、自らの死を軽んずることになっているのである。
真に生を愛するものは、生を豊にすることに執着をもたず、何も目立ったことをしないのである。このことが、生を豊かにすることよりも勝ることになるのである。