第六十一首
いにしへの 奈良の都の 八重桜
けふ九重に にほひぬるかな
伊勢大輔
(生没年不詳) 大中臣能宣の孫。一条天皇の中宮彰子に仕えた。晩年は白河天皇の養育係を務めた。
部位 四季(春) 出典 詞花集
主題
旧都平城京の八重桜が、平安京の宮中に咲く美しさ
歌意
昔、奈良の都で咲き誇っていた八重桜が、今日は平安京のこの宮中でいちだんと美しく咲き誇っていることであるよ。
この歌のよまれた場も、即座の詠で、その当意即妙の才気がたたえられた歌である。
「にほひぬるかな」 色美しく咲いていることよ。
長元五年(1032)上東門院彰子菊合以下天喜四年(1056)頭中将顕房歌合までたびたびの歌合に出詠。康永三年(1060)以後、七十数歳で没。
中古三十六歌仙の一。『後拾遺集』以下に五十一首入集。