第三首
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む
かきのもとのひとまろ
柿本人麻呂
(生没年不詳)三十六歌仙の一人。官位は低く任地の島根県で没したという。後世、歌聖と呼ばれた。
部位 恋 出典 拾遺集
主題
長い夜をひとり寝るさびしさの嘆き
歌意
垂れ下がった山鳥の尾羽のような長い長いこの秋の夜を、離ればなれで寝るという山鳥の夫婦のように、私もたった一人で寂しく寝ることになるのかなあ。
「しだり」は「しだる」の連用形。長くたれさがっている尾。
恋しい人とも離れて、たったひとりでさびしく寝ることであろうかな。
キジは、雄は尾が長い。夜は雌雄谷をへだてて寝るという。『新古今』のころは、山鳥といえば、この習性が思いおこされた。
万葉時代最大の歌人で、長歌・短歌ともにすぐれ、『万葉』に長歌に二十首。短歌約七十五首を残す。